改訂新版 世界大百科事典 「ハナゴンドウ」の意味・わかりやすい解説
ハナゴンドウ (花巨頭)
Risso's dolphin
Grampus griseus
ハクジラ亜目マイルカ科の哺乳類。世界中の温帯,熱帯の外洋に分布するゴンドウクジラ型のイルカ。前頭部はほぼ垂直に立ち,前面には,縦のくぼみがある。くちばしはなく,歯は下あごにのみ数対ある。背びれは高く,体のほぼ中央にある。胸びれも比較的長い。幼体は,ほぼ全身黒褐色であるが,しだいに淡色となり,成体では淡灰色ないし白色となる。体表に仲間どうしの歯でできた引っかき傷が無数にあり松葉に似るので,マツバイルカの別名がある。体長1.5mで生まれ,成体では3.6~4.0mに達する。ふつう20~100頭の群れをなし,ハンドウイルカとも混群をつくる。船首波に乗ることはほとんどない。日本近海では,黒潮と対馬暖流域に生息し,おもにイカを食べる。このため,イカ釣漁業の妨害をするとしてきらわれることがある。また,沿岸の大目流し網などで相当数が混獲されている恐れがある。
執筆者:粕谷 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報