日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハレ(ドイツ)」の意味・わかりやすい解説
ハレ(ドイツ)
はれ
Halle an der Saale
ドイツ中東部、ザクセン・アンハルト州の都市。1949~90年は旧東ドイツに属し、52~90年は同名県の県都であった。ザーレ川の右岸、標高110メートルの地にある。人口24万7700(2000)。ハレの語源は「製塩所」で、岩塩の採掘では古い歴史をもち、塩の加工精製業のほかに化学、金属、繊維、車両などの工業が発達し、ドイツ有数の工業都市である。ザーレ川左岸には、同市南方16キロメートルにあり旧東ドイツ最大であったシュコパウ・ロイナ化学工場などの労働者が多く住む、住宅都市ハレ・ノイシュタットHalle-Neustadtが1964年に建設された。ハレは9世紀から知られる古都で、981年都市権を得、当時から塩の採掘で知られた。13~15世紀にはハンザ同盟に加盟、中央ドイツの商業・交通の中心地として発展した。第二次世界大戦中も戦災を受けず、古い建築物が残っている。ハレ・ウィッテンベルク(マルチン・ルター)大学、教育大学、工業造形大学がある。作曲家ヘンデル誕生の地であり、毎年ヘンデル記念音楽祭が開かれる。歴史的建築物としては、10世紀のギービヘンシュタイン城、15世紀のモーリッツブルク城、16世紀のマルクト教会などがある。
ハレ県は3市20郡からなり、面積8771平方キロメートル、人口179万5600(1985当時)で、カール・マルクス・シュタット県に次いで人口の多い工業県であった。工業の基盤は西エルベ褐炭田とカリ塩であり、化学工業が中核をなした。また肥沃(ひよく)なレス(風化土壌)地帯にあって農業も発達し、小麦、サトウダイコンの栽培や肉牛の飼育が盛んであった。
[佐々木博]