翻訳|badminton
ラケットを使って,シャトルコック(シャトルともいう)と呼ばれる羽根をネットで二分したコートで打ち合うスポーツ。シングルスまたはダブルスでプレーする。シャトルは最強打のスマッシュで打ち出された場合時速310kmに達し,力を失うと時速ゼロとなる。この急激なシャトルのスピードの変化にいかに即応するかがバドミントンのおもしろさであり,むずかしさである。
1873年ごろ,イギリスのグロスターシャーのボーフォート公爵の所領バドミントンで確立したといわれ,93年にバドミントン協会が結成された。16世紀以前からあった羽根つきbattledore and shuttlecockの発展したもので,軍人によってインドに伝えられ,ボンベイに近いプネー地方で1870年代中ごろ最初の規則がつくられたため,プネーを起源とする説もある。草創期は大きな館や大広間のある裕福な貴族や上流階級の人々に愛好され,フェアプレー精神が尊重されるスポーツとなっている。1920年代にはイギリス全域に普及し,34年には国際バドミントン連盟International Badminton Federation(IBF)が結成された。その初代会長G.トマスの寄贈によるトマス杯を争う男子世界選手権大会が48年から,イギリスの女流選手H.S.ユーバーの寄贈によるユーバー杯を争う女子世界選手権大会が56年から,いずれも3年ごと(84年以降は隔年開催)の国別団体戦として開催されている。個人タイトル戦は1899年以来の全英選手権が有名であるが,1977年から個人選手権の世界選手権が始まり,2005年からオリンピックの年を除いて毎年開催されている。1979年からはマスターズの大会も毎年の開催となった。
日本では1787年(天明7)の《紅毛雑話》に〈西洋館にて閑暇なる時は,遣羽子をつきて遊ぶとなり〉とあり,ウーラング(羽子)とラケット(羽子板)として紹介されている図がバドミントンに類似するが,本格的には1902年に東京や神戸に在住する外国人から伝えられたとされる。37年に横浜YMCAに国内第1号のクラブが誕生し,東京や神戸のYMCAに普及していった。42年には慶応義塾大学にクラブが結成され,第2次大戦後各大学に普及した。46年日本バドミントン協会が設立され,翌年から天皇,皇后杯を争う全日本選手権が開催された。66年の第4回ユーバー杯大会で日本女子が初出場,初優勝の快挙を演じ,以後学生,社会人の間で競技人口が増大し,現在では社会体育の一環として公営体育館や学校施設などで手軽な屋内スポーツとして人気種目となっている。
現在バドミントンの盛んな国としては,ヨーロッパではイギリス,デンマーク,スウェーデン,西ドイツ,スイスなど,アジアでは中国,インドネシア,マレーシア,韓国,そして日本などがある。とくに中国は毛沢東主席時代,バレーボールや卓球とともに強化種目として全土から逸材を集めた。一時,親中国諸国が結束して世界バドミントン連盟を設立したこともあったが,1981年IBFに加盟し,82年の第12回トマス杯大会に初出場,初優勝した。日本は女子が強く,堅守反撃を得意とし,1966,69,72年と3連覇,さらに78,81年にも2連覇を達成した。アメリカ大陸ではアメリカが1956年の第1回大会から第3回大会まで連続ユーバー杯を保持したが,その後衰退し,代わってカナダが女子を中心に力をつけつつある。
1980年にIBFによってアマチュアでも賞金をもらってかまわない,というライセンスプレーヤー制度が認められたため,日本をはじめアジア圏は従来のアマチュア中心だが,ヨーロッパの一流選手はほぼ全員といえるくらいライセンスプレーヤーとなった。また,92年のバルセロナ大会よりオリンピック正式種目となり,男女単複,混合複の5種目が実施された。
室内コートで行い,コートはシングルスは縦13.40m,横5.18m,ダブルスは横6.10m,縦はシングルスと同じで,中間に両端の高さ1.55m,幅0.76mのネットを張る。一般には図のようにダブルス用のラインも引いたコートを使用する。ラケットのフレームは,全長で680mm以内,幅230mm以内とする。シャトルはコルクをキッド皮でくるんだ直径2.5~2.8cmの台に,14~16本の羽根を6.4~7.0cmの長さに植えたもので,重さは4.74~5.50gとする。シャトルは,温度,湿度,気圧の影響を受けて微妙に飛び方が変わる。ニワトリの羽根も使われるが,現在では中国を主産地とするガチョウの羽根が主力となっている。ただ痛みやすいため,ナイロン製など合成シャトルもつくられている。
試合に先立ちトスでサービス側(インサイドという)を決め,腰よりも低い位置からアンダーハンドのサーブを行う。サービスはいかなる場合も,ネットを隔てて対角線上の相手サービスコート内に行う。以後はノーバウンドでラリーを続ける。シングルスは内側のサイドラインを,ダブルスは外側のサイドラインを使用する。試合はシングルス,ダブルスとも以前は1ゲーム15点(女子シングルスは11点)で,サービス権をもっている側がラリーに勝ったときだけ1点が与えられたが,2006年からラリーポイント方式の新ルールとなった。新ルールでは,サーブ権に関わらずラリーに勝った方にポイントが与えられる。1ゲームは21点先取で,20対20の場合はデュースとなり,どちらかが2点差をつけるか,あるいは30点に達するまで行われる。サービスはサーバーから見て対角線側のコートに打つ。シングルスでは,自分の得点が偶数のときはコートの右側から,奇数のときは左側からサービスを行う。ダブルスでは,サービス側がラリーに勝った場合,サーバーが左右を変えてサービスを行う。レシーバーが勝った場合は,得点が偶数なら右側から,奇数なら左側から,直前にサービスを受けたプレーヤーが行う。種目としては男女各シングルス,男女各ダブルス,混合ダブルスがあり,団体戦はトマス杯,ユーバー杯ともシングルス3試合,ダブルス2試合で争われる。試合には主審,サービスジャッジ,線審を置く。
ストロークには,高い打点から急角度で打ち下ろすスマッシュ,空中高く打ち上げ遠くへ飛ばすクリア(ロブともいう),ネットすれすれに弾丸のように飛ばすドライブ,途中で急落下させるドロップショットなどがあり,高度の戦法が可能である。試合では技術の正確さだけではなく,いかにフェアに戦うか,心技体のバランス,パートナーとのチームワーク,コートのどの地点をねらうかの地域攻防(ゾーンプレー),選手間同士のマン・ツー・マン攻防の巧拙,チェンジ・オブ・ペースとチェンジ・オブ・ディレクション(方向転換)の配分のうまさなどが問われる。
執筆者:竹市 行男
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(中西康己 筑波大学人間総合科学系 / 2007年)
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