バラード
〘名〙 (ballade)
※明六雑誌‐二五号(1874)知説・五〈
西周〉「バルラッド(
俚曲)は田畯紅女の情を吟する者(
端唄の類なるべし)なり」
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デジタル大辞泉
「バラード」の意味・読み・例文・類語
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バラード
古くは舞踏歌曲のことで,プロバンス語ballada(踊り)からきた言葉。フランス中世の吟遊詩人によって洗練され,3詩節と1反歌をもつ定型小叙事詩をさすようになった。これは各詩節,反歌の最終行の同一詩句のリフレインを特徴とし,15―16世紀に盛んに作られた。英国のバラッドballadと関連して,近代以降は物語詩(譚詩)一般をもいう。 18―19世紀のドイツでは中世の口承文学への憧憬から叙事詩的内容の詩,およびそれらにもとづく歌曲,声楽曲がつくられ,バラーデballadeと呼ばれる。歌曲としてはレーウェとシューベルトによって完成の域に達した。音楽ではまた自由な形式の器楽曲をバラード(バラーデ)といい,ショパンやブラームスのピアノ曲が広く知られる。劇的な主部と抒情的な中間部の対比により一種物語的な感興を紡ぎ出す。フォーレのピアノと管弦楽のための作品やデュカースの管弦楽曲もある。 日本のポピュラー音楽界では,スロー・テンポのラブ・ソングをさすことが多い。
→関連項目ウーラント|シャルル・ドルレアン|デシャン|マショー|ロンド
バラード
英国の作家。1960年代英国の〈ニュー・ウェーブ〉SFの旗手として内的空間を実験的技法やシュールレアリスム的イメージで描く作品で著名になる。《沈んだ世界》(1962年)は初期の傑作。現代の終末的心象風景としてのエロスとカタストロフ追求から生まれた作品《残虐行為展覧会》(1970年),《クラッシュ》(1973年),《ハイライズ》(1975年)を経て,自伝的要素の強い小説《太陽の帝国》(1984年),《女たちのやさしさ》(1991年)により広い読者層に知られる。
→関連項目クローネンバーグ
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バラード
Ballard, J.G.
[生]1930.11.15. 中国,上海
[没]2009.4.19. イギリス,ロンドン
イギリスの小説家。フルネーム James Graham Ballard。行き過ぎた科学技術が引き起こす生態学的にアンバランスな世界を背景とする SF小説で根強い人気を誇る一方,自伝的な『太陽の帝国』Empire of the Sun(1984,1987映画化)や,車の衝突事故で感じる異常なエロティシズムを探求した『クラッシュ』Crash(1973,1996映画化)でより広い読者層に知られた。第2次世界大戦中,少年時代の数年間を上海にあった日本軍の捕虜収容所で過ごす。戦後イギリスに帰国し,ケンブリッジ大学のキングズ・カレッジに入学するが中退。1950年代に短編小説を書き始め,1960年代からは長編小説も発表した。おもな作品に,短編集『時の声』The Voice of Time(1960),『燃える世界』The Burning World(1964),『結晶世界』The Crystal World(1966),『コンクリートの島』Concrete Island(1974),『コカイン・ナイト』Cocaine Nights(1996),『スーパー・カンヌ』Super-Cannes(2000)など。2008年に自伝 "Miracles of Life"を出版。
バラード
Ballade
ドイツの詩の形式。「譚詩」と訳される。短い,叙事的あるいは抒情的な詩をいい,圧縮された詩のなかに劇的で効果的な筋書を含んでいる。それはときに恐怖に満ちた暗い内容をもっているが,民謡風に仕立てられるのが常である。ロマンチックな内容で,ときには「ロマンツェ」と呼ばれるが,その境界は明確でない。バラードは中世末期から 16世紀にかけての民謡に多くみられ,18世紀のヘルダーによる収集を経て,実作も試みられた。近代バラードはビュルガー,ゲーテ,シラーによって完成され,19世紀のウィーラント,ドロステ=ヒュルスホフ,C.F.マイアー,フォンターネ,リリエンクローンに受継がれた。
バラード
ballad; Ballade
楽曲の名称。古くは単声の舞踏歌のことを意味していたが,14世紀にはリフレインをもつ定形詩とそれに基づく楽曲形式を意味するようになり,多声部の作品も作られた。他方イギリスでは,語り物的な内容をもつ歌曲がバラッドと呼ばれ,これが 19世紀のドイツに受継がれてシューベルトや J.レーベのバラードになった。ロマン派のバラードは,中世の物語や伝説を題材とするものが多い。ショパンやブラームスはピアノ曲にバラードの名をつけたが,それらの曲では劇的な部分と抒情的な部分の起伏に富んだ交替が特徴である。
バラード
ballade
フランス詩の詩型。3つの詩節と結句 envoiから成り,各節と結句の最終行が同一 (繰返し句 refrain) となるもの。 14世紀のギヨーム・ド・マショーを先駆に,15~16世紀に栄え,A.シャルチエ,シャルル・ドルレアン,F.ビヨン,J.モリネらが傑作を残した。ビヨンの作品中で最もよく知られているものは,「さあれ,去年 (こぞ) の雪はいまいずこ」の繰返し句をもつバラードである。
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バラード【ballade[フランス]】
中世ラテン語のバラーレballare(踊る)に由来することが示すように,元来は南仏プロバンスに起源をもちロマンス語圏に広まった舞踏歌,すなわち輪舞の際に踊り手自身によって歌われたリフレインつきの有節歌謡をさした(プロバンス語ballada,イタリア語ballata)。これが吟遊詩人トルバドゥールによって芸術的に洗練され,14世紀に北フランスで厳格な形式をそなえた抒情詩の一形態となった。それは典型的には,8音綴詩句8行または10音綴詩句10行から成る同じ構造の3詩節(couplets)にその半分の行数の1反歌(envoi)がついたもので,各詩節および反歌の最終行は同一詩句のくりかえし(リフレイン)であり,各詩節の脚韻の踏み方は同一(8行では3種,10行では4種)で,反歌の脚韻は詩節後半のそれと同じである。
バラード【James Graham Ballard】
1930‐
イギリスのSF作家。テクノロジー社会に生きる人間の意識の問題を扱った新しい作風によって,〈新しい波〉(ニュー・ウェーブ)と呼ばれるSFの改革運動を起こし,その中心的役割を果たした。《結晶世界》(1966)は,無意識が直接現実世界と対話していくような独特の手法で地球終末をとらえた初期の傑作であり,《残虐行為展覧会》(1970)は現実的因果律を無視して過去から未来までを同時制に扱った前衛的作品。《コンクリートの島》(1974)は現実世界の中の無意識のブラックホールにとらえられた人間の物語。
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バラード〔アルバム〕
サックス奏者、ジョン・コルトレーンの1961~1962年録音のジャズ・アルバム。インパルス・レーベル。バラード・ナンバーをストレートに演奏したヒット作。原題《Ballads》。
バラード〔曲名:369〕
日本のポピュラー音楽。歌は男性シンガーソングライター、369(ミロク)。作曲:369、tasuku。テレビ朝日系で放送のドラマ「853 刑事・加茂伸之介」の主題歌。
バラード〔自動車〕
ホンダ(本田技研工業)が1980年から1986年まで製造、販売していた乗用車。4ドアセダン。シビックの姉妹車。
バラード〔曲名:ケツメイシ〕
日本のポピュラー音楽。作詞作曲と歌はJ-POPグループ、ケツメイシ。2011年発売。
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世界大百科事典内のバラードの言及
【中世音楽】より
… 14世紀には,フランスとイタリアを中心に,2~3声の世俗歌が数多く生み出された。フランスでは,トルベールによって確立されたバラード,ビルレー,ロンドーrondeauの,詩と音楽の形式が継承発展させられた。代表的な詩人兼作曲家としてマショーが挙げられる。…
【デンマーク】より
…これは伝説時代から1185年までのデンマーク王朝史で,ラテン語による男性的な民族文学と特徴づけられるが,その中には古代デンマークの英雄詩作(〈ビャルケのうた〉等)がかなりラテン語で再現されている。発生上中世に属する文学ジャンルに,上層階級に始まって民衆間に普及したバラードがあり,その作品数は500以上とヨーロッパ随一を誇り,中世デンマーク人の諸相を伝えて貴重である。サクソ・グラマティクスの著作とバラードは,とくに19世紀の文学や美術に無数の題材を提供している。…
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