翻訳|Vancouver
カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州南部のカナダ第三の都市。人口54万5671、大都市圏人口198万6965(2001)。ジョージア湾のバラード入り江に臨み、世界有数の天然の良港をもつ、カナダでもっとも重要な海港である。対岸にバンクーバー島がある。市のすぐ北には1500メートル級の山々がそびえ、風光明媚(めいび)なことでも知られる。月平均気温は1月で2.5℃、7月で17.3℃、年降水量は1113ミリメートルで、大部分は10月から3月までの冬季に降り、温和な海洋性気候を示す。市の名称は、1792年にバラード入り江を探検したジョージ・バンクーバーに由来する。州都の機能がビクトリアにあるほかは、同州の商工業の中心地である。製材、パルプ、鉄鋼、化学、食品などの工業が発達し、小麦、菜種、銅鉱石、石炭、木材、魚類などの輸出が活発である。しかし、近年州内の資源産業が発達するにつれて、管理・金融・サービス業、レクリエーション関係などの第三次産業従事者の割合が増大し、職業人口の3分の2を占めるほどになっている。
1865年にインディアンの地に製材工場を建設したのが始まりで、85年に大陸横断鉄道が西岸まで建設され、その終点となって以来急速に発展した。1901年に人口が3万人に増加し、14年のパナマ運河の開通により港の重要性が増し、商工業の中心となった。さらに、70年代日本との貿易が活発になると、モントリオール港を抜いてカナダ最大の港湾に発達した。19世紀末、大規模な直交状街路が完成し、中に多くの公園が配置された。市の北西の半島上にあるスタンリー公園は市街地と港を一望でき、原生林が繁茂し、動物園と庭園で有名である。背後には清流とその林相で知られるカピラノ峡谷があり、港口にかかるライオン・ゲート橋、1200メートルの高地にある郊外のシャウネシーハイツなど、国内外の観光客でにぎわっている。市の南部に流入するフレーザー川は、サケの漁獲で知られる。第二次世界大戦前に日本人が多数移民し、港付近に日本人街がある。ブリティッシュ・コロンビア大学やサイモン・フレーザー大学の所在地である。
[山下脩二]
イギリスの探検航海者。13歳で海軍入隊、1770年代に行われたキャプテン・クックの第2回と最後の航海に参加。91年ヌートカ入り江(バンクーバー島近く)のスペインからの回収、北緯30度以北の太平洋岸精密探査、太平洋―ハドソン湾間北西航路の発見を目的に、喜望峰回りで出発。オーストラリア南西部とニュージーランドを探査し、ハワイを経て目的地に至り、北西航路以外は所期の目的を果たした。とくに92年から3回の夏をかけた探査航海(ハワイで越冬)は精密を極め、北はアラスカ南部のクック入り江から南はサンフランシスコ北方にまで及んだ。94年ホーン岬回りで帰国、大佐艦長に昇格、98年に航海記を刊行した。
[越智道雄]
カナダ,ブリティッシュ・コロンビア州の最大都市。大都市域人口221万(2005,カナダ第3位)。アメリカ国境から北方40kmに位置するカナダ太平洋岸の最大都市。林立する近代的な高層ビル群の背後に,海岸山脈の山並みが間近にそびえる雄大な景観美を誇り,カナダの太平洋側の玄関口といわれる港湾都市である。周辺には,洪積世の大陸氷河で削られたフィヨルドなどの氷河地形が展開し,ジョージア水道をへだててバンクーバー島に面する。温和な西岸海洋性気候で,冬は雨が多く,雪は少ない。市域は北側のバラード湾と南のフレーザー川河口にはさまれている。バラード湾にある港は1960年代の対日貿易の発展とともに活況を呈してきた。おもな輸出品は小麦,木材,石炭,水産物で日本向けが多い。日本からは自動車,機械類を大量に陸揚げしている。港周辺には穀物エレベーターやパルプ,水産加工物などの倉庫が建ち並ぶ。カナダ太平洋岸地域最大の商業・金融中心地であり,市内外には,製紙・パルプをはじめ,機械,繊維,製糖,サケなどの缶詰,造船などの工場が多い。フレーザー川の海岸三角州に国際空港がある。バラード湾に面するスタンリー公園など観光地にも恵まれている。ブリティッシュ・コロンビア大学やサイモン・フレーザー大学の所在地。
1865年に製材所がつくられたが,84年にカナダ初の大陸横断鉄道であるカナダ・パシフィック鉄道の太平洋側ターミナルとなったことが今日の発展の端緒となった。1900年から10年にかけて,サケの缶詰と製材業などの急速な成長が中国,イギリス,インド,アメリカ,日本などから多くの移民を呼び寄せた。第2次世界大戦は造船業を発達させた。戦後,都市再開発によって急速に変貌をとげつつある。
執筆者:正井 泰夫
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