翻訳|burlesque
からかうことを意味するイタリア語〈ブルラburla〉から生まれた言葉で,既存のジャンルの約束事や既存の作品の特徴を茶化した文学作品を指す。イギリスでとくに盛んで,S.バトラーの《ヒューディブラス》(1662,63,78)やA.ポープの《髪の毛の略奪》(1712)のような詩,H.フィールディングの《シャミラ》(1741)や《ジョゼフ・アンドルーズ》(1742)のような小説など,あらゆるジャンルにわたるが,とりわけ劇に多い。たとえば,F.ボーモントの《輝けるすりこぎの騎士》(1607ころ初演。以下初演年)はジェームズ朝の大衆劇や観客の趣味についての,バッキンガム公爵などによる《舞台稽古》(1671)やR.B.シェリダンの《批評家》(1779)は英雄悲劇についての,またJ.ゲイの《乞食オペラ》(1728)はイタリア・オペラについての,それぞれバーレスクである。しかしバーレスクは単なるパロディにとどまらず,俳優が他者を演じるという演劇芸術の大前提を意識化する。すなわち,演技があまりに現実離れしているとその虚構性が,またあまりに現実に密着しているとその非演劇性が批判されるのである。19世紀のイギリスでは,バーレスクはそれまでのものほど鋭い風刺性をもたず,平易な笑いに依存する大衆的で文学性の乏しい特定のジャンルを指すようになった。その代表作家はバイロンHenry James Byron(1834-84)で,彼の劇には当時流行していたメロドラマのパロディという面もある。同じことはW.S.ギルバートの戯曲やA.S.サリバンとともに作った一連の〈サボイ・オペラ〉にも指摘できる。
他方,アメリカでは,バーレスクは19世紀後半から盛んになった性的な素材によって笑いを誘う寸劇,女性の肉体美を売りものにする踊り,奇術,歌などからなる,大衆芸能を主として指す。これはやがて女性の裸体に中心をおくようになり,ストリップティーズstriptease(ストリップショー)と呼ばれるに至るが,このジャンルで芸を磨き,のちにせりふ劇,ミュージカル,映画などに進出した芸人は非常に多い。
執筆者:喜志 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
本来は文学、演劇、音楽などにおいて、正統的な作品を改作、戯画化したもので、もじり詩、風刺文、戯作、茶番狂言などをいうが、今日一般には各種のショーの間に挿入されるコントや物真似(まね)など大衆的な演芸を称していう。興行全体をさすこともあり、この場合はバラエティ、ボードビルなどと区別しがたい。「悪ふざけ」「冗談」の意のイタリア語ブルラburlaから発したブルレスコburlescoがフランス語ビュルレスクburlesqueとなり、さらに英語化したもので、ドイツではブルレスケBurleskeという。
その起源は古代ギリシアのホメロスの作品にもみられるが、16世紀のイタリアにこの種の傾向が生まれ、ベルニ、カポラーリらの作家が活躍した。1630年ごろからフランスへ入って流行、スカロン、ダスシらビュルレスク派とよばれる作家たちが登場、いわゆるパロディー形式を生み出した。イギリスでもジョン・ゲイ、フィールディング、シェリダンらが現れ、一時正統演劇をしのぐほどの勢いをみせたが、その後しだいに本来の風刺精神を失い、19世紀に入ると単なる大衆向けの娯楽劇と化し、今日のような形式へと変容した。アメリカでは裸ショーと同義で、わが国でもストリップショーの代替語としてしばしば使われている。
[向井爽也]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新