パルプ(英語表記)pulp

翻訳|pulp

デジタル大辞泉 「パルプ」の意味・読み・例文・類語

パルプ(pulp)

木材などの植物原料を機械的または化学的に処理してセルロースを取り出した状態のもの。製法により、砕木パルプ亜硫酸パルプクラフトパルプソーダパルプなどがある。主に製紙原料。

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精選版 日本国語大辞典 「パルプ」の意味・読み・例文・類語

パルプ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] pulp )
  2. 植物体の繊維を機械的、化学的処理によりばらばらにしたもの。紙、繊維などをつくるのに用いられる。〔稿本化学語彙(1900)〕
  3. 鉱石を粉砕し水とまぜあわせたもの。選鉱やパイプ輸送に用いられる。鉱液。

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改訂新版 世界大百科事典 「パルプ」の意味・わかりやすい解説

パルプ
pulp

細かい固体粒子と液体とが混合した流動性のある,どろどろした物質で,最もよく知られているのは紙や人造繊維の製造に用いる中間体の植物体繊維が水に懸濁したものである。

パルプの分類は原料,用途,製造法によって行う。最も重要な原料は木材であり,世界のパルプ生産高の90%以上は木材パルプである。針葉樹Nadelholz(ドイツ語)から作ったパルプが針葉樹パルプ,広葉樹Laubholz(ドイツ語)からのものが広葉樹パルプで,日本ではそれぞれNパルプ,Lパルプと呼んでいる。そのほか原料によってリンターパルプ,ぼろパルプ,竹パルプ,エスパルトパルプ,バガス(サトウキビかす)パルプ,麻パルプ,わらパルプなどに分けられる。和紙の原料としてコウゾ,ミツマタ,ガンピなどの靱皮(じんぴ)繊維パルプも作っているが,量はきわめて少ない。用途による分類では二つに分けられ,紙やノンウーブンのように繊維形態をとったまま利用して使う製紙パルプpaper pulpと,ビスコースレーヨン,セロハン,酢酸セルロースのように再生セルロースやセルロース誘導体を作るために使用する,セルロースの純度の高い溶解パルプdissolving pulpの二つに分けられる。溶解パルプはおもに木材や綿リンターから作られるが,竹やバガスからも作ることができる。木材から作るパルプはふつう製造法によって表に示すように分類される。

18世紀後半に起きた産業革命は西欧諸国およびアメリカの経済活動を活発化し紙の需要を増した。19世紀に入ると連続式抄紙機が発明され紙の大量生産,大量消費が始まり,当時の紙の原料であった綿や麻のぼろはたちまち不足しだした。綿や麻は高価でもあったので,それに代わる原料が求められた。機械パルプを代表する砕木パルプの発明された年代は明らかでないが,1801年にクープスMatthias Koopsはわらと木材から紙を作ったといわれており,一種の砕木パルプが用いられていた。カナダのフェナティCharles Fenertyは39年に初めて砕木パルプを実験的に作ったと思われるが,発表は44年であった。一方1840年にケラーFrederik G.Kellerは砕木機(グラインダー)のドイツ特許を得ている。46年にベルターH.Voelterが初めて商業ベースにのせて砕木パルプを製造した。それに対して化学パルプの発明は遅れ,アメリカのティルグマンBenjamin C.Tilghmanが67年に酸性亜硫酸塩溶液中で植物を加圧下に加熱して,繊維間結合物質を除去する方法で特許を得ており,これが亜硫酸パルプの発明とされている。ソーダパルプについては,バージェスH.BurgessとワットC.Wattが苛性ソーダ溶液を使ってパルプ化を試み,1853年に特許を得た。アルカリに硫化ナトリウムを加えてパルプ化する方法に70年アメリカで特許が与えられたが,ドイツのダールC.F.Dahlが79年にクラフト法を完成し,84年に特許を得た。最初のクラフト紙は翌85年にスウェーデンで製造された。このように木材からパルプが作られるようになったのは,化学パルプで100年程度以前からであり,発明後間もなく日本にも技術が伝えられている。日本のパルプ工業については〈〉〈紙・パルプ工業〉の項を参照されたい。

植物は繊維細胞が集合してできているが,木材繊維は幅が20~50μm,長さが針葉樹で3~4mm,広葉樹で1mm前後の中空の細胞である。木材繊維の成分はほぼ半分がセルロースで,残りのさらに半分前後が繊維どうしを接着し木材の硬さを作り出しているリグニン,残りは分子構造がセルロースに似ているヘミセルロース,樹脂などである。パルプは植物繊維をほぐしたものであるが,日本のパルプ製造はほとんどが木材を原料とするので,木材パルプの製造法について述べる。パルプの製造は前述のように,大別すると機械的方法と化学的方法に分けられる。

機械的力で繊維を引き離して作るので,パルプの成分は木材とほとんど同じである。したがって原料には着色のない白い木が好まれ,密度の大きい硬い木や樹脂分・着色成分の多い熱帯産材は通常は機械パルプに適さない。

(1)砕木パルプ 回転する大きなといし(砥石)に木材を回転面に平行に押しつけてすりおろして作るのでグランドパルプとも呼ばれる。といしは直径1mくらいの円筒形の天然石または人造石で,表面に溝が刻んである。多量に発生する摩擦熱で木材が焦げるのを防ぐためと,削り取られたパルプが溝の目をつまらせないようにするため,といしに水をかけて冷却と洗浄をする。硬い木材から無理に繊維を引きはがすため繊維は切断し,ファイン(微細繊維)と呼ばれる粉末状の繊維破片が30%以上にもなる。したがって,このパルプで作った代表的な紙である新聞用紙は,強度を増すために繊維の長い化学パルプが混合されている。砕木パルプを作る機械はグラインダー(砕木機)といい,手で木材をつめるポケット型,キャタピラを使って自動化したキャタピラ型などがあるが,生産性が低いことや,グラインダーの機構上良質の丸太を必要とするなどの欠点があるため,他の方法におきかわりつつある。

(2)リファイナーグランドパルプ グラインダーの代りにリファイナーを用いて,丸太ではなくチップから作った機械パルプ。リファイナーは1948年ころから実用化し,日本では64年から生産が始められた。リファイナーは刃のついた直径140cmくらいの2枚の円盤が狭い間隔で平行に向き合っていて,高速で互いに逆向きに回転する。チップを円盤の中心から円盤の間に送り込むと,まず粗い刃でチップは粗砕され,外側にいくにつれ細かい刃で精砕されて木材は繊維化される。このパルプは砕木パルプより繊維の切断が少ないのでシート強度は高くなり,連続生産も可能で生産性が向上した。しかし,さらに新しいパルプ化法の発明により生産量はそれほど増えなかった。

(3)サーモメカニカルパルプ 木材繊維を固めているリグニンは,三次元構造をした無定形高分子であり,温度が高くなると軟化する。このパルプは120℃くらいの水蒸気でチップを加熱して,軟らかくなったチップをその温度でリファイナーによって繊維化するものである。原理的には建築用繊維板を作るのに1930年ころから用いられていたアスプルンド法を改良し,製紙用パルプとして70年代に実用化され,日本でも75年から生産が始まった。機械パルプは薬品を使用しない代りに,パルプ化に大量の電力を必要とする。砕木パルプ1t作るのに約1300kWhの電力を消費する。サーモメカニカルパルプは軟化したチップを用いるので容易にパルプ化でき,電力も少なくてすむと思われたが,逆に30%も多く消費する結果となった。しかし,繊維の切断はリファイナーグランドパルプよりさらに少なく,新聞用紙に適した性質があるため,急速に生産量が増加した。

 機械パルプは木材をそのまま繊維化するので,原料の木材に対して得られるパルプの重量比は砕木パルプで95%以上,サーモメカニカルパルプで91~95%にも達する。しかし繊維は著しく破壊されて短いので紙の強度は低い。着色した硬いリグニンを多量に含有しているので,弱い漂白しかできず,したがって紙の白さの度合は低く,紙の表面も粗いので新聞や週刊誌に用いられる。吸水性のよい性質を利用して紙タオルなどにも使用される。

繊維間を結合しているリグニンを薬品で溶解させてパルプとするので,カラマツのように溶解しやすい成分の多い木はパルプの収率が低く,不適当である。

(1)クラフトパルプ(硫酸塩パルプサルフェートパルプ) 以前は未漂白のまま使う濃茶色のパルプをクラフトパルプ,漂白して使用するようなクラフトパルプを硫酸塩パルプと使い分けていたが,今日ではほとんど区別していない。クラフトパルプは苛性ソーダと硫化ナトリウムを主成分とする薬液をチップに加え,約170℃に加熱してリグニンおよび一部のヘミセルロースを溶出して作る。これを蒸解または蒸煮という。原料の種類やパルプの用途により薬液濃度および加熱時間が異なり,2時間以内でパルプ化できるものもある。かつてクラフト法の前身であるソーダ法でわらなどを煮てパルプ化していた時代に,ソーダ分の補給に硫酸ナトリウムNa2SO4(ボウ硝)を用いたところ,反応が促進したことからクラフト法が発明されたといわれる。このため硫酸塩パルプともいわれる。蒸解排液を燃焼してソーダ分を回収するとき,ボウ硝が還元雰囲気で硫化ナトリウムNa2Sに還元される。

 Na2SO4+4CO─→Na2S+4CO2

この結果,クラフト蒸解液として再び使用できる。このことがクラフト法の製造工程を確立することになり,排液から薬品を回収する合理的なパルプ化法となった。蒸解する木がまにチップと薬液(白液という)を入れて加熱し,一定時間後に蒸解廃液とともにパルプを取り出し,洗浄する。未さらしパルプはそのまま使用するが,大部分のパルプは漂白工程へ送られる。排液は次のように処理される。パルプと分離した排液は色が黒いので黒液と呼ばれ,洗浄液とともに蒸発缶で固形分が50%以上になるまで減圧濃縮する。その濃縮黒液に不足のボウ硝を補給したのち,回収炉で燃焼する。黒液の主成分はベンゼン核をもったリグニンであるので高い熱量を有し,この燃焼熱でパルプ工場を賄うに十分なエネルギーが電気または水蒸気として回収される。同時に炉内で

 Na2SO4─→Na2S+2O2

の反応が起こり,硫化ナトリウムが炭酸ナトリウムとともに融解して流れ出す。これをスメルトといい,冷却しつつ水に溶解すると緑液ができる。石灰を混合すると次の反応が起こり,

 Na2CO3+Ca(OH)2+Na2S─→CaCO3↓+2NaOH+Na2S

元の蒸解液である白液が得られる。沈殿した炭酸カルシウムCaCO3は,ロータリーキルンで焼いて生石灰CaOとして再び緑液の苛性化に使用する。理論的にはこの製造工程では工場外に排出する廃棄物はなくなるが,実際には燃焼時の灰や,排水処理池から泥などが生じる。しかし,後で述べる亜硫酸法より回収工程が容易であること,生産性が高いこと,未利用だった広葉樹など,どの樹種でもパルプ化できることが大きな利点となり,急速に日本の化学パルプの大半を占めるようになった。

(2)亜硫酸パルプ(サルファイトパルプ) 日本の最初の木材パルプ製造はこの方法によったもので,生産量は1957年までクラフトパルプを超えていた。しかし,前述したような理由とともに,新しい漂白法の開発がクラフトパルプからも高い白色度のパルプを作ることを可能にしたため,クラフト法にとって代わられた。亜硫酸パルプは広義には亜硫酸および亜硫酸塩を含有した蒸解液で作ったパルプであるが,亜硫酸の割合により,酸性亜硫酸法,バイサルファイト法,中性亜硫酸法に分けられる。化学パルプは酸性亜硫酸法で作り,クラフト法の蒸解液がpH14に近いのに対し酸性亜硫酸法では1~1.5である。蒸解液は,硫黄を燃焼して生じた二酸化硫黄ガスを石灰石をつめた反応塔に導き,上から散水して,生じた亜硫酸が石灰石と反応して生ずる酸性亜硫酸カルシウム液である。最近はカルシウムの代りに可溶性ベースと呼ばれるナトリウム,マグネシウム,アンモニアを用いて作られるものが多い。酸性亜硫酸法は蒸解液を徐々に加温して反応させるが,最高温度が135℃とクラフト法より低く薬品の浸透速度が小さいので蒸解に8時間から10時間も要し,生産性の点でクラフト法に劣る。しかし軟らかい良い肌合いの紙を作ること,セルロースの純度の高い溶解パルプには適していることなどから,世界的にはまだかなり大量に製造されている。日本の溶解パルプは,現在ではサルファイト法だけで生産されている。

(3)その他の化学パルプ クラフトパルプは硫黄化合物による特有の臭気があるので,硫黄分を含まないアルカリ性蒸解を目ざして酸素-アルカリ蒸解も一部では行われている。日本ではみられないが,硝酸法,有機溶剤を用いたパルプ化法も研究されている。

化学パルプは白色度の高い上級のパルプであり値段も高い。一方,機械パルプは値段は安いが品質が劣っているので,値段は低く品質の高いパルプを目ざして作ったのがこのパルプである。蒸解液は中性亜硫酸ナトリウムと少量の炭酸ナトリウムとから成り,蒸解はパルプの収率が約65~70%になるように条件を設定する。この程度の化学的処理ではチップの形状はそのままに保たれているので,リファイナーによって繊維に離解する。元のチップに比べればはるかに軟らかくなっているので,容易に繊維化してパルプが得られる。普通の化学パルプが元の木材の50%前後しかパルプにならないのに比べ収率は著しく高く,しかもパルプの性質も化学パルプと機械パルプの中間であり,理想的と思われたが,蒸解排液の濃度が低いために回収が難しく,その点で生産量はそれほど増加しなかった。苛性ソーダ溶液を用い,チップの処理温度が80℃くらいで短時間処理した後にリファイナーを用いてパルプ化するのがケミメカニカルパルプである。パルプの量は元の木材に対し90%近くなり,新聞紙,雑誌に用いられる。手法的には両者に差はなく,薬品の種類と化学処理の程度でセミケミカルパルプと区別されることが多い。

機械的または化学的処理によってできたパルプは,パルプ化されていない木片や繊維の大きな塊を除くため精選工程を経る。ここで種々のスクリーンによって砂,結束繊維などを除き漂白工程へ送る。パルプの漂白には,機械パルプのように収率が高いパルプはリグニンを多く含有しているので,リグニンを残してそれ自身を淡色化するような漂白法を用いる。化学パルプではリグニンを分解除去する漂白法をとる。前者の漂白薬品は亜ジチオン酸亜鉛ZnS2O4溶液,過酸化ナトリウムまたは過酸化水素溶液を単独または組み合わせたものである。リグニン中の発色基を変化させるだけの漂白であるので,一時的なものであり,光により再び反応が戻ったり,空気中の酸素による酸化で変化して発色構造に戻りやすい。新聞紙が変色しやすいのはこのためである。一方,化学パルプは炭水化物以外の成分をできるだけ除去するように漂白する。しかしパルプ中の不純物は簡単には除去できず,亜硫酸パルプではまずぬれたパルプに塩素水を作用させ,リグニンを塩素化してアルカリに溶解しやすくしてから苛性ソーダ溶液で抽出し,さらに次亜塩素酸塩溶液で酸化して不純物を除く。クラフトパルプ中のリグニンはこの方法では完全に分解されない。非常に漂白効果が高い二酸化塩素は爆発性をもつことから用いられなかったが,1950年代後半から安全に処理できるようになり,クラフトパルプも高度漂白が可能となった。このように何種類もの漂白剤で処理する方法を多段漂白といい,サルファイトパルプは3段,クラフトパルプは塩素,アルカリ抽出,次亜塩素酸塩,二酸化塩素,アルカリ,二酸化塩素と6段漂白を用いたり,またはその変法による5ないし7段漂白を行っている。最近は塩素の代りに酸素やオゾンを使用する漂白法も開発された。

 漂白が終わったパルプは製紙工場が隣接している場合はスラリー(かゆ)状のまま,またはパルプマシンによってシートにして水を絞り,ぬれたままのシートで輸送する。市販のパルプはドライヤーで乾燥する。また一般的ではないが,減圧噴霧乾燥して綿状のフラッシュドライパルプにすることもある。

パルプの大部分は製紙用パルプで,紙の製造に向けられる。高級印刷用紙には広葉樹さらしクラフトパルプ,新聞用紙・週刊誌などには機械パルプ,セメント・米・肥料など重量物の包装袋用には針葉樹の未さらしクラフトパルプ,また高級段ボール紙の表面にも未さらしクラフトパルプが用いられる。段ボール紙の波形の紙にはセミケミカルパルプが最も適している。これらの高級な,または高い強度を必要とする紙製品には新しいパルプが使用されるが,パルプの再利用として古紙を水に分散させ,脱インキ処理をした古紙パルプが作られている。日本では生産量の50%近くの紙を回収し,再び新聞紙,印刷用紙,板紙の製造に利用している。量的にははるかに少ないが,もう一つのパルプの利用はセルロース誘導体の製造である。そのなかで最も多いのがビスコースレーヨンである。パルプを水酸化ナトリウム溶液に浸してアルカリセルロースとし,それに二硫化炭素を反応させるとセルロースキサントゲン酸ナトリウムになる。そのアルカリ溶液を細い口金から押し出して,酸の中で元のセルロースに再生したのがビスコースレーヨンであり,フィルムにしたのがセロハンである。合成繊維が出現する前に化学繊維としてビスコースレーヨンと競ったのが酢酸セルロースであり,これはパルプに酢酸と無水酢酸を加え,触媒を用いて作られる。このほかカルボキシルメチルセルロース,メチルセルロースなどが製造されている。木材パルプのほかにさらに純度の高いリンターパルプは,ニトロセルロース,銅アンモニアレーヨンの製造に利用されている。
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選鉱過程においては,微粉砕された鉱石類の水中懸濁物をさす。選鉱工場においてはふつう,原鉱石を湿式粉砕することによってパルプが調製され,その中から目的とする鉱物の選別が行われる。浮遊選鉱法によって選別が行われる場合,パルプ中の鉱石粒子の粒度は74μm以下が70~95%程度,パルプ中の固体濃度(パルプ濃度pulp densityともいい,パルプ中の粒子が占める重量割合)は20~45%程度である。
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化学辞典 第2版 「パルプ」の解説

パルプ
パルプ
pulp

植物原料に機械的,化学的処理または両者の組合せ処理によって得られるセルロース繊維集合体で,おもに紙の製造に用いられる.木材,ワラ,竹,リンターなど,多様な原料から製造されるが,その中心は木材から得られる木材パルプであり,それ以外の原料から製造される非木材パルプと区別する.漂白の有無によって,さらしパルプと未さらしパルプがある.また,用途によって製紙用パルプと溶解パルプに大別される.後者はおもにビスコースレーヨン酢酸セルロースなどのセルロース誘導体の製造に用いられる.パルプ化工程における脱リグニンの程度によって,メカニカルパルプ(機械パルプ,MP),ケミカルパルプ(化学パルプ,CP),セミケミカルパルプ(SCP)に分けられる.メカニカルパルプは,原料の機械的処理によって製造されるパルプで,砕木パルプ,サーモメカニカルパルプ(TMP)などがこれに含まれる.セミケミカルパルプは化学的処理と機械的処理を併用して製造されるもので,化学的処理としては中性サルファイト蒸解,ソーダ蒸解などが用いられる.[別用語参照]蒸解

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百科事典マイペディア 「パルプ」の意味・わかりやすい解説

パルプ

植物原料を機械的または化学的に処理し,セルロース繊維をばらばらにして取り出したものの集まり。紙や人造繊維の製造に使う中間製品。原料により,木材パルプ,わらパルプ,竹パルプ,エスパルトパルプ,バガスパルプ,ぼろ(破布)パルプ,リンターパルプなどに分類。現在工業的に生産するパルプの90%以上が木材を原料としている。また用途により,製紙用パルプと溶解パルプに大別される。パルプの製造は,原料をパルプ化に適した形態に加工する準備工程(木材の場合は調木工程という),原料から繊維を取り出すパルプ化工程,パルプの精製工程からなる。このパルプ化の方法により,グランドパルプなど機械処理で作った機械パルプ(メカニカルパルプ),化学処理で作った化学パルプ(ケミカルパルプ),両処理を併用して作ったセミケミカルパルプやケミグランドパルプなどに分類。精製工程における漂白の有無により,さらしパルプと未さらしパルプの別がある。→紙・パルプ工業
→関連項目バガスリファイナー

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栄養・生化学辞典 「パルプ」の解説

パルプ

 果実野菜の加工ででる不溶性の固形物.製紙業では,紙の原料になるように木材片を処理したものをいう.

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