日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒジキ」の意味・わかりやすい解説
ヒジキ
ひじき / 鹿尾菜
[学] Hizikia fusiforme Okam.
褐藻植物、ホンダワラ科の海藻。黄褐色を呈し、やや硬い樹枝状の体枝は長く伸び、全面を細長い筒状葉に覆われる。体長は50~100センチメートルが多いが、まれに2メートル近くになるものもある。ヒジキは晩秋に新芽が伸び、冬から春にかけて繁茂期となり、晩春以後は衰退していく一年生藻である。しかし、岩面に固着している匍匐(ほふく)根部は夏季も生き残って、そこから新芽を出すことから、宿根草的多年生藻ともいえる。おもに外海の岩礁上の潮間帯下層に生育する。温海性の海藻のため、日本では北海道南部から九州南端まで広域に分布するが、本州沿岸部でよく繁茂する。また、太平洋沿岸産と日本海沿岸産とでは形状が多少違い、日本海沿岸のものはやや伸長が悪く、筒状葉も押しつぶしたように幅が広くなっている。
[新崎盛敏]
食品
平安時代にも比須岐毛(ひずきも)、比支岐毛(ひじきも)とよばれ、食用とされていた。産地では春になま物が入手できるが、一般には採取したヒジキを淡水で煮て素干ししたものが市販されている。加工中に自然に主枝から離れた小枝だけを集めたものを芽ひじき、茎状の長いものが混入したものを長ひじきなどと区別もしているが、いずれも光沢のある黒いものが良質である。多量のヨードを含み、他の海藻よりもビタミンA、鉄、カルシウムの含有量の多いことで副食品として重視されている。よく水洗いして水に20~30分浸して柔らかくもどし、水けをきって調理する。堅い場合には、さらに熱湯でゆがいて水けをきって用いる。とくに油と相性がよく、大豆をはじめ、油揚げ、蓮根(れんこん)、ニンジン、こんにゃく、干ししいたけ、鶏肉、なまり節などとともに、砂糖やしょうゆの味つけでうま味が出る。前記の材料との組合せで炊き合わせたり、白和(しらあ)え、酢みそ和えなどにする。
[新崎盛敏]