ビスマス

精選版 日本国語大辞典 「ビスマス」の意味・読み・例文・類語

ビスマス

〘名〙 (bismuth) 元素一つ元素記号 Bi 原子番号八三、原子量二〇八・九八。古くから知られていたが、他の元素と混同されていたこともある。単体赤みを帯びた銀白色金属で、金属としては電気・熱を伝えにくい。低融点合金として用途が広く、医薬品としても用いられている。蒼鉛。ビスミュート。ビスミット

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デジタル大辞泉 「ビスマス」の意味・読み・例文・類語

ビスマス(bismuth)

窒素族元素の一。単体は赤みを帯びた銀白色のもろい金属。電気・熱の伝導性は小さい。塩酸硝酸に溶ける。融点が低いので易融合金に用いる。元素記号Bi 原子番号83。原子量209.0。蒼鉛そうえん

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化学辞典 第2版 「ビスマス」の解説

ビスマス
ビスマス
bismuth

Bi.原子番号83の元素.電子配置[Xe]4f 145d106s26p3の周期表15族非金属元素.原子量208.98040(1).もっとも高い原子番号の非放射性元素.安定核種が質量数209の同位体のみの単核種元素.質量数184~218の放射性同位体がある.千年以上前から鉛,スズの混合物の一つとみなされて使われていたが,16世紀には純金属であることがわかっていた.Paracelsus Wismuthとよんでいるが,語源は酸化物が白いところから,ドイツ語の“白い塊”,weiße Masseにちなむとされる.ドイツ語の元素名はBismut,英語・フランス語名はbismuthである.アラビア語の“融けやすい”が語源という説のほか,諸説がある.1773年,フランスのC. Geoffroyにより新元素であることが示された.宇田川榕菴は天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で,亜比斯繆母(ピスシュテュム)蒼鉛としている.
輝蒼鉛鉱Bi2S3,蒼鉛華Bi2O3,ビスマタイト(BiO)2CO3などが主要鉱石である.地殻中の存在度0.06 ppm.可採埋蔵量320百万t の75% が中国,以下ペルー,ボリビアメキシコが各約3%.親銅元素の一つ.おもに鉛精錬の電解スライムから副産物として得られる.単体は赤味を帯びた銀白色.三方晶系.金属はもろい.密度9.747 g cm-3(20 ℃),液体10.05 g cm-3(融点).融点271.3 ℃,沸点1610 ℃.気相では Bi2 分子となる.第一イオン化エネルギー7.289 eV.イオン半径は,Bi3+(六配位)0.117 nm,Bi5+(六配位)0.090 nm.Bi3+/Biの標準電極電位は+0.32 V で,イオン化傾向は小さい.すべての元素のなかでもっとも反磁性が強く熱伝導率は水銀についで金属中最少である.またビスマスはガリウム同様液体から固化すると,体積が増加(3.5%)する数少ない金属の一つである.酸化力のない酸には溶けないが,硝酸,王水などに溶解し,ビスマス(Ⅲ)塩を生じる.空気中では,高温では燃焼しBi2O3となる.ハロゲンと反応し,BiCl3(白色),BiBr3(黄金色),BiI3(緑黒色),BiF5を生じる.化合物は,酸化数3が通常であるが,酸化数5の化合物は強酸化剤である(例:MBiO3).
無鉛はんだ,スプリンクラー用温度ヒューズなどに用いられる易融金属.おもな用途は,冶金添加剤,鉄鋼の機械加工性改良用添加剤,磁石・メモリー用フェライト,低融点合金用など.抗菌剤,医薬品(制酸剤など),石油化学用触媒などにも用いられる.新しい用途には,光記録(CD-R,CD-RW)媒体,光磁気記録(MD,MO)用保護膜用材料がある.高温超伝導体(ビスマス系)の成分としても知られている.[CAS 7440-69-9][別用語参照]ビスマス化合物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビスマス」の意味・わかりやすい解説

ビスマス
びすます
bismuth

周期表第15族に属し、窒素族元素の一つ。古く蒼鉛(そうえん)とよばれた。中世のヨーロッパではすでにその存在が知られていたが、スズ、鉛、アンチモンなどとの区別がつかないでいた。しかし、そのころから区別がつき始め、酸化ビスマス(Ⅲ)その他が顔料(がんりょう)などとして用いられていて、17世紀ごろには一般に英語でbismuth、ドイツ語でWismuthとよばれるようになっていた。18世紀になってドイツのポットJohann Heinrich Pott(1692―1777)と、スウェーデンのT・O・ベリマンの研究によって金属元素であることが確定された。自然ビスマスもまれに産出するが、輝ビスマス鉱Bi2S3やビスマス華Bi2O3として産出。普通、鉛製錬に際し、粗鉛の精製過程の副産物として得られる。精錬残渣(ざんさ)を炭素で還元してから、アルカリ融解で空気酸化し、他の金属を除き、電解精錬する。やや赤みを帯びた銀白色の金属。電気的性質は半金属で、温度が高くなると導電率が減少するが、260℃以上で増大する。空気中では安定。酸素、硫黄(いおう)、ハロゲンと直接反応して三価化合物をつくる。水では徐々に水酸化物を生じる。酸化力のない酸には侵されないが、硝酸や熱濃硫酸に溶けてビスマス(Ⅲ)塩を生じる。凝固の際体積が3~3.5%膨張する。融点が低く、鉛、スズなどと易融合金の形で、ヒューズ、火災報知機など非常に広い用途に使われる。生化学的作用をもつ化合物が多く、医薬品製造に多くが使われる。化合物はアクリロニトリル製造の触媒としても利用される。熱中性子吸収断面積が小さいため原子炉冷却剤として用いられる。

[守永健一・中原勝儼]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビスマス」の意味・わかりやすい解説

ビスマス
bismuth

元素記号 Bi ,原子番号 83,原子量 208.98038。周期表 15族,窒素族元素の1つ。蒼鉛ともいう。主要鉱石は輝ビスマス鉱,蒼鉛赭がある。遊離状態で産出することもある。量的には,銅および鉛鉱石から副産物として回収されるものが圧倒的に多い。単体はやや赤みのある銀白色の金属。融点 271℃,比重 9.8,硬度 2.5。凝固するとき体積が3~3.5%膨張する。電気伝導度は低く,半金属的。希硝酸,熱硫酸,濃塩酸に可溶。一般に酸化数3と5の化合物をつくり,前者のほうが安定である。融点が低いので,鉛,スズとともにローゼ合金,ニュートン合金,カドミウムの入ったウッド合金 (ヒューズ用) などの易融合金の主要材料や低融点ハンダ,高温高圧プラグ,火災報知機,消火用スプリンクラ,防火扉の高温感知部などに用いられる。中性子吸収断面積が低く,原子炉冷却材として重要。化合物は医薬品や化粧品などにも用いられる。

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百科事典マイペディア 「ビスマス」の意味・わかりやすい解説

ビスマス

元素記号はBi。原子番号83,原子量208.98040。融点271.4℃,沸点1561℃。蒼鉛(そうえん)とも。元素の一つ。15世紀ごろすでにその存在は知られていたが,元素として確認されたのは18世紀。赤みを帯びた銀白色の金属。常温ではもろく,電気および熱の伝導性は金属中最小のものの一つ。空気中で熱すると炎をあげて燃え,酸に溶ける。各種合金をつくりやすく,固化するとき膨張するため,易融合金,活字合金などに利用され,化合物は医薬品となる。硫化鉱物中に含まれるが,遊離状態でも産する。工業的には銅・鉛製錬の副産物として得る。
→関連項目α崩壊

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世界大百科事典 第2版 「ビスマス」の意味・わかりやすい解説

ビスマス【bismuth】

周期表元素記号=Bi 原子番号=83原子量=208.9804地殻中の存在度=0.17ppm(64位)安定核種存在比 209Bi=100%融点=271.44℃ 沸点=1560℃比重=9.80(20℃)電子配置=[Xe]4f145d106s26p3おもな酸化数=III,IV周期表第VB族,窒素族に属する金属元素。蒼鉛(そうえん)ともいう。15世紀ころから文献に記載されているが,しばしば鉛,スズ,アンチモン,亜鉛,銀などと混同されており,18世紀になってようやく一つの金属元素であることが明らかにされた。

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栄養・生化学辞典 「ビスマス」の解説

ビスマス

 原子番号83,原子量208.98037,元素記号Bi,15族(旧Va族)の元素.窒素の同族体.

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世界大百科事典内のビスマスの言及

【鉛】より

…また鉛蓄電池をはじめ,スクラップを原料とした鉛の再生も盛んに行われている。鉛精鉱には一般に鉛以外に金,銀,ビスマス,亜鉛,スズ,ヒ素,アンチモンなどが含有されるので,鉛製錬の際にはこれらも回収される。現在鉛製錬は主として溶鉱炉法で行われ,鉛精鉱を焙焼(ばいしよう)・焼結して酸化鉛鉱塊とする工程,この鉱塊をコークスで還元して粗鉛とする溶鉱炉工程,粗鉛の純度を高める精製工程の3工程から成る。…

※「ビスマス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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