日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビタミン依存症」の意味・わかりやすい解説
ビタミン依存症
びたみんいぞんしょう
通常のビタミン投与方法や投与量では健康を維持できず、非経口的あるいは経口的に通常の数倍ないし数百倍に達する大量のビタミン投与によって初めて健康を保持することができる疾患をいう。遺伝的に、ビタミンを補酵素とする酵素、あるいはその酵素作用に影響をもつ代謝系の酵素の欠損または活性低下のためと考えられている。臨床症状の現れ方は多種多様であるが、おもな依存症と治療上有効とされる1日量を示すと、次のようになる。(1)ビタミンB1依存症 ビタミンB1依存性乳酸アシドーシス(ビタミンB15~20ミリグラム)、ビタミンB1依存性カエデシロップ症(チアミン10ミリグラム)、(2)ビタミンB6依存症 ビタミンB6依存性けいれん(ビタミンB66~10ミリグラム)、ビタミンB6依存性貧血(ビタミンB6100~1000ミリグラム)、ビタミンB6依存性キサンツレン酸尿症(ピリドキシン20~30ミリグラム)、ビタミンB6依存性シスタチオニン尿症(ピリドキシン90ミリグラム)、(3)ビタミンB12依存性メチルコロン酸血症(ビタミンB121ミリグラム)、(4)ビタミンD依存症(1日所要量400IU)、(5)ビオチン依存性β‐メチルクロトニルグリシン尿症(ビオチン10ミリグラム)、ビオチン依存性プロピオン酸血症(ビオチン5~10ミリグラム)などがある。
[橋詰直孝]