フェノール樹脂(読み)フェノールジュシ(英語表記)phenol resin

デジタル大辞泉 「フェノール樹脂」の意味・読み・例文・類語

フェノール‐じゅし【フェノール樹脂】

フェノール類とアルデヒド類との縮重合により合成される熱硬化性樹脂絶縁性・耐水性・耐薬品性などにすぐれ、電気部品・接着剤などに使用。初めて作られた合成樹脂で、ベークライトと称した。石炭酸樹脂

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精選版 日本国語大辞典 「フェノール樹脂」の意味・読み・例文・類語

フェノール‐じゅし【フェノール樹脂】

  1. 〘 名詞 〙 フェノール類とアルデヒド類の重縮合により得られる樹脂。フェノールホルムアルデヒド樹脂が代表的。難燃性で、機械強度が高く、電気および熱の絶縁性、耐水・耐化学薬品性などにすぐれ、成型品、電気部品、接着剤に広く用いられている。石炭酸樹脂。〔現代日本技術史概説(1956)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「フェノール樹脂」の意味・わかりやすい解説

フェノール樹脂 (フェノールじゅし)
phenol resin

フェノール類(フェノール,クレゾールキシレノールなど)とホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られる熱硬化性樹脂。フェノール・ホルマリン樹脂,石炭酸樹脂ともいう。1907年アメリカのL.H.ベークランドによって発明された最も古い合成樹脂で,09年にベークライトbakeliteの名で商品化された。

 フェノール樹脂はその製法によって次の2種類にわかれる。(1)フェノールを酸触媒のもとでホルムアルデヒドと反応させ,フェノールが若干個縮合した熱可塑性,溶剤可溶の樹脂(ノボラックnovolacという)をまずつくる。次いでこの樹脂に,パルプ,木粉などの充てん(塡)剤,ヘキサメチレンテトラミン(加熱によりホルムアルデヒドを発生する)などの縮合剤,その他触媒,着色剤,変性剤などを加え,混合,加熱硬化させて成形品とする(図)。(2)フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ触媒のもとで反応させると縮合反応がどんどん進み,最終的に不溶不融の樹脂となるが,その初期段階の,アルコールに可溶の状態でまず反応を止める。このときに得られる水あめ状の樹脂(レゾールresolという)をアルコールに溶かし,紙,布などに含浸させ,加熱して硬化させる。

 フェノール樹脂は非常に古い樹脂であるが,耐絶縁性,難燃性,機械強度にすぐれ,かつ安価であるので,現在でも電気用途(ソケットコネクター,基板,ハウジングなど)を中心に広く用いられている。そのほか,接着性が高いため,合板用接着剤あるいは鋳物砂バインダーに用いられる。とくに鋳物砂のバインダーとされるものはシェルモールド用と呼ばれ,鋳物砂に3~4%ノボラックとヘキサメチレンテトラミンを混合し,加熱した金型上に振りかけると砂がかたまり,容易に鋳型をつくることができる。フェノール樹脂の性質は,製法,充てん剤などによって大幅に変化するが,標準成形品の特性は表に示すとおりである。成形は,粉末の場合には圧縮成形(160~180℃,圧力200kgf/cm2,1~3分)あるいはトランスファー成形(シリンダー100℃,金型160~190℃,圧力400~500kgf/cm2)による。最近では射出成形も行われるようになった。溶液の場合には,紙,布,ガラス繊維布,アスベスト布に含浸させて乾燥し,これを必要数重ねて加熱圧縮(140~160℃,圧力100~150kgf/cm2)して積層品とする。棒状,パイプ状にも加工できる。
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百科事典マイペディア 「フェノール樹脂」の意味・わかりやすい解説

フェノール樹脂【フェノールじゅし】

フェノール類とホルムアルデヒドの縮合によってつくられる熱硬化性樹脂。石炭酸樹脂とも。1907年L.H.ベークランドが発明(商品名ベークライトbakelite)。一般に,電気絶縁性,耐酸性,耐水性,機械的強度にすぐれるが,アルカリに比較的弱く,黄褐色に着色しているため着色性に制限がある。成形品は電気器具部品,機械部品,事務用品等に,積層品は配電盤メラミン化粧板の下地材等に用い,その他塗料,合板用接着剤,砥石(といし)やブレーキライニングの結合剤,シェルモールドレジン(精密鋳造の鋳型結合剤)等に使用。
→関連項目合成樹脂合成樹脂塗料合板接着剤デコラ熱硬化性樹脂プラスチック工業プラスチック版ベークライト

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化学辞典 第2版 「フェノール樹脂」の解説

フェノール樹脂
フェノールジュシ
phenol resin

フェノール類とアルデヒドの縮合反応で得られる熱硬化性樹脂クレゾールキシレノールを主原料としたものを,とくにクレゾール樹脂,キシレノール樹脂ということもある.酸性触媒下の縮合反応では,初期からメチレンでフェノールが連結した生成物が得られ,この初期生成物をノボラックとよび,いろいろな成形品に用いる.アルカリ触媒の存在下による反応では,初期にメチロール基に富むレゾールを生成し,積層剤として用いられる.レゾールも加熱により脱水してメチレンあるいはジメチレンエーテル結合をつくり,架橋硬化する.フェノール樹脂のアルコール溶液または水溶液は,フェノール樹脂接着剤として知られており,加熱により硬化,接着する.木材用としてとくに屋外や水中で用いられる材料の接着に用いられる.また,油溶性フェノール樹脂ときり油とを加熱混合したワニスは,フェノール樹脂塗料とよばれる.速乾性で塗膜の耐薬品性,耐水性がすぐれている.

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栄養・生化学辞典 「フェノール樹脂」の解説

フェノール樹脂

 フェノール類とアルデヒドを酸もしくはアルカリの存在下で縮合させて製造する樹脂.諸種の優れた特性をもち,電気器具,機械部品,事務用品,食器などに汎用されている.

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