精選版 日本国語大辞典 「フェミニズム」の意味・読み・例文・類語
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ラテン語のfemina(女性)から発生したことばであり、一般に女権拡張主義、女性尊重主義と訳される。フェミニズムは、フランス革命の理念となった人権思想の影響を色濃く受け、フランス、イギリス、アメリカなどの諸国において発達した。フェミニズムを主張する最初のまとまった著作としては、イギリスの思想家M・ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』(1792)があげられる。J・J・ルソーの女性観に疑問を投げかけつつ、中産階級の女性の精神的自立と経済的自立を主張したその展開には、教育・職業の機会均等、参政権獲得要求など、以後のフェミニズムが掲げた主張の萌芽(ほうが)が集約されている。
フェミニズムには単一の理論体系があるわけでなく、基本的には、それぞれの国の歴史的特徴、情勢の影響を受け、系譜も多様に分かれる。たとえば、女性尊重主義という訳語よりも、母性尊重、母性擁護という訳語が妥当な系譜がある。それは、スウェーデンの思想家E・ケイに代表される女性解放思想である。ケイは、進化論の立場から母性の擁護を訴え、母性を破壊する資本主義社会を鋭く批判、教育、経済、政治における機会均等の実現を強く主張し、スカンジナビア諸国やドイツのフェミニズムに強い影響を及ぼした。日本でも平塚らいてうに代表される第二次世界大戦前のフェミニズムの展開にその影響がみられる。一方、19世紀中葉から20世紀初頭のアメリカやイギリスを中心とするフェミニズムは、参政権獲得に代表される法的平等を中心に展開された。一般に第一次フェミニズム(または旧フェミニズム)とよばれる。
これに対し、第二次世界大戦後、とくに1960年代後半以降の第二次フェミニズム(または新フェミニズム)は、アメリカを中心とするウーマン・リブの影響を色濃く受けており、マルクス主義の立場にたつ「婦人論」への批判、あるいはフェミニズムとマルクス主義の統一という発想を底流に、「女性による人間解放主義」と規定され、性差に起因する政治的、経済的、社会的、文化的、心理的など、あらゆる形態の差別や不平等に反対し、その撤廃を目ざす。とりわけ、意識やライフ・スタイルに深く組み込まれた性抑圧、性差別の告発という点に特徴をもつ。
しかし、第二次フェミニズムは、なにが女性にとってもっとも根源的な抑圧であるかという論点をめぐって、いくつかの潮流に分かれている。代表的な流れとしては、男性による女性の支配を家父長制ととらえ、これを経済体制の違いを超えて存在すると押さえるラディカル・フェミニズム、無償の家事労働を不可欠の前提として成立する資本主義的生産様式に焦点をあてるマルクス主義フェミニズム、女性の従属を多数の小さな剥奪(はくだつ)deprivationの総和とみるリベラル・フェミニズム(自由主義フェミニズム)、ラディカル・フェミニズムとマルクス主義フェミニズムの結合を目ざし、家父長制と資本主義のいずれかに焦点をあてるのではなく、家父長制は管理や法・秩序などのシステムを用意し、資本主義は経済・利潤追求のシステムを用意するとみることにより、両者の存在が今日の両性(ジェンダー)関係の形成に重要な意味をもつと押さえる社会主義フェミニズム(統合理論)などがある。フェミニズムということばは、思想と運動の双方が含まれて用いられる場合が多い。
[布施晶子]
『メアリ・ウルストンクラーフト著、白井尭子訳『女性の権利の擁護』(1980・未来社)』▽『エレン・ケイ著、原田実訳『婦人運動』(1924・聚英閣)』▽『エレン・ケイ著、小野寺信・小野寺百合子訳『恋愛と結婚』(岩波文庫)』▽『平塚雷鳥著『元始、女性は太陽であった――平塚らいてう自伝』全4冊(1971~72・大月書店)』▽『一番ケ瀬康子編『入門女性解放論』(1975・亜紀書房)』▽『ケート・ミレット著、藤枝澪子訳『性の政治学』(1985・ドメス出版)』▽『Juliet Mitchell, Ann OakleyWhat is Feminism?(1986, Pantheon Books)』▽『ナタリー・J・ソコロフ著、江原由美子他訳『お金と愛情の間――マルクス主義フェミニズムの展開』(1987・勁草書房)』▽『落合恵美子著『近代家族とフェミニズム』(1989・勁草書房)』▽『Sylvia WalbyTheorizing Patriarchy(1990, Blackwell Pub.)』▽『スーザン・バスネット著、進藤久美子訳『世紀末のフェミニズム――四つの国の女たち』(1993・田畑書店)』▽『井上輝子他編『日本のフェミニズム』全7巻・別冊(1994~95・岩波書店)』▽『江原由美子・金井淑子編『フェミニズム』(1997・新曜社)』
女が女であることを根拠に強いられてきた差別や従属,拘束を問題にし,そこから離脱するために構築された思想とその思想にもとづく社会運動の総称。男女間の権利や機会の不均等,地位の格差や女を劣ったものとみなす思想は古くから存在したが,それらが改善されるべきものだと認識され始めるのは「法の前での万人の平等」を説く人権思想が生まれ,にもかかわらず近代の「市民」には成人男性しか含まれていなかったという矛盾が明瞭になってからのことである。大きなうねりとしては,まずはO.ド・グージュ(『女の権利宣言』1791年)やM.ウルストンクラフト(『女性の権利の擁護』92年)らの女の市民権確立要求があり,その延長上で19世紀中葉から20世紀初頭に盛んになった女性参政権運動(第1波フェミニズム)がある。第二次世界大戦後は多くの国で選挙権や被選挙権が認められるようになるが,制度的な平等が得られても性別役割分担や「女のあるべき姿」による拘束はなくならず,結婚や家族・子育てという日常性の内部に組み込まれてきた不平等が問題にされ,性と生殖の自己決定の必要性が求められた(第2波フェミニズム)。フェミニズムという言葉が日本で定着したのは1980年代以降のことである。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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…政治的に正確な表現を要求する,アメリカ合衆国における運動で,PCと略して使われることが多い。その主張は広い範囲に及んでおり,性差別に関してはフェミニズムの立場に立ち,民族問題に関しては黒人や先住民など少数派の権利を擁護して文化的多元主義を主張しているほか,環境保護を優先させ,第三世界への軍事介入に反対している。かつてラディカリズムと呼ばれていた政治的立場に近い。…
※「フェミニズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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