フェライト(英語表記)ferrite

翻訳|ferrite

デジタル大辞泉 「フェライト」の意味・読み・例文・類語

フェライト(ferrite)

酸化鉄(Ⅲ)と金属との複合酸化物。一般式MO・Fe2O3(Mは二価の金属)で表される。磁鉄鉱などがあり、磁性材料として広く利用。
常温で強磁性をもつ体心立方構造のαアルファ鉄、およびそれに微量の炭素などが溶解した固溶体

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精選版 日本国語大辞典 「フェライト」の意味・読み・例文・類語

フェライト

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] ferrite )
  2. 酸化鉄(III )と他の金属との複合酸化物。化学式では一般に MO・Fe2O3 と書かれる。M は二価の金属イオンで、それが鉄自身ならば FeO・Fe2O3 で、Fe3O4 の磁鉄鉱となる。
  3. 体心立方結晶の鉄に炭素など他の元素がとけこんで固溶体になったもの。磁性材料として、電気・通信機器などに広く用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「フェライト」の意味・わかりやすい解説

フェライト
ferrite

(1)原子配列が体心立方格子をなす鉄鋼の相(組織)の名称。鉄,ニッケルクロムなどの原子は格子点および中心に,炭素や窒素のような原子半径の小さい原子は格子間に入る。純鉄の場合はおよそ910℃以下(α鉄)および1390~1540℃の範囲(δ鉄)でフェライトとなる。炭素鋼や低合金鋼をオーステナイト状態からゆっくり冷却するとセメンタイトと共存するフェライト,すなわちパーライトが得られる。ケイ素,クロム,モリブデンなどの元素を多く添加するとフェライト領域が広がる。フェライト中にこれらの元素のほかに,チタン,ニッケル,タングステンベリリウムなどが固溶すると強さが増す。フェライト相だけから成る鉄鋼材料には,直流磁化条件下の磁心材料として用いられる純鉄や電磁軟鉄,渦電流によるエネルギー損失が少ないため交流磁化条件下の磁心に用いられる電磁鋼板ケイ素鋼板),鉄-クロム合金のフェライト系ステンレス鋼などがある。フェライト系ステンレス鋼は,耐食性はオーステナイト系ステンレス鋼より劣るが,強度が比較的高く,安価なため,それほど腐食環境が強くない食品工業や台所用品などで多用されている。
(はがね)
執筆者:(2)化学式MO・Fe2O3で表される焼結して作られる磁性材料の総称。ここでMは2価の金属で,マンガン,ニッケル,亜鉛などである。この材料の磁性はフェリ磁性と呼ばれる。保磁力が小さく磁心材料として使用されるソフトフェライトと,保磁力が大きく永久磁石として使用されるものがある。一般に原料が安価であり,焼結によって製造されることから複雑な形の製造も容易であるなどの利点がある。磁心材料としてのフェライトの特徴は,透磁率や磁束密度の点からは金属磁心材料よりもすぐれているわけではないが,酸化物であることから電気抵抗がきわめて高く,そのために高周波に使用したときに電磁誘導で発生する渦電流による損失が良導体である金属と比較してきわめて小さいことである。用途としては,テレビあるいは通信機器などに使用される高周波用のコイルあるいはトランスの磁心が主である。組成としては,上記のMがマンガンと亜鉛のものが周波数1MHz程度までの高周波のうちの低周波域に,ニッケルと亜鉛のものがより高い周波数用に実用されている。永久磁石に使用されるものは,1932年に加藤与五郎武井武によって発明されたOP磁石が最初のものである。この磁石は現在では使用されていないが,フェライト利用の端緒となった。現在はバリウムを含むバリウムフェライトが用いられ,アルニコ磁石と比較して最大磁気エネルギー(BHmaxは高くはないが,安価で安定な化合物であることから大量に使用されている。また,ニッケルとの複合フェライトは磁歪(じわい)材料とされる。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェライト」の意味・わかりやすい解説

フェライト
ふぇらいと
ferrite

(1)3価の鉄の酸化物(Fe2O3)と二価金属の酸化物(FeO, CoO, ZnO, BaOなど)との複合酸化物で、磁性材料に使用されている。砂鉄の主成分のマグネタイト(Fe3O4)はFe2O3とFeOよりなるフェライトである。

 フェライトの代表的な結晶構造はスピネル型であって、酸素イオンが面心立方晶の結晶格子を構成し、金属イオンは4個の酸素イオンに囲まれた四面体位置か、または6個の酸素イオンに囲まれた八面体位置に配列する。これらの金属イオンの種類と組成を調整することによって、フェライトは多種多様な磁気特性を示す。しかも安価であるために、マグネットや磁気テープなどに大量に利用されている。

 フェライトを製造するには、まず、酸化物または炭酸塩の混合物を高温で焼成し、細かに粉砕してフェライト粉末をつくる。これを結合剤と混ぜて、ビニル・テープに塗布したものが磁気テープである。また、粉末をプレスで圧縮成型して高温で焼結し、磁化するとマグネットが得られる。

 フェライトの開発は1932年(昭和7、特許公告)東京工業大学の加藤与五郎と武井武がOP磁石(Fe2O3とCoOとのフェライト)を発明したことが端緒となり、それ以後、各国において組成制御による特性向上が行われて、各種のフェライトに発展した。

(2)体心立方晶の鉄をα(アルファ)鉄、またはフェライトという。これを910℃以上の温度に加熱すると、結晶構造が面心立方晶に変化して、γ(ガンマ)鉄(オーステナイト)となる。鉄鋼材料は鉄を基本素材として、これに炭素、クロム、ニッケルなどを合金させて、目的に応じた性能を示すように調製されている。添加元素があまり多量でない鉄鋼材料は、α鉄すなわちフェライトを基質(マトリックス)として、その中に粒状または板状の炭化物が分布したような組織に調整される。この種の鋼をフェライト鋼と総称する。これに対して、ニッケルやクロムを多量添加して、面心立方晶のオーステナイトが主体となるように調整した鋼をオーステナイト鋼という。

[西沢泰二]


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百科事典マイペディア 「フェライト」の意味・わかりやすい解説

フェライト

(1)α鉄の金属組織学上の名。結晶構造は体心立方格子。910℃以下では安定。やわらかく展延性大。炭素を微量固溶する。磁心用の電磁鋼板(ケイ素鋼板),フェライト系ステンレス鋼板などがある。(2)一般にMO・Fe2O3(Mは2価の金属。Mn,Ni,Co,Cu,Znなど)で示される亜鉄酸塩。成分金属酸化物の混合粉末を成形,焼結してつくる。各種通信機器の磁心などに広く使われる重要な磁性材料
→関連項目健康ブレスレットセメンタイト耐熱鋼TDK[株]ニッケル・クロム鋼パーライト変圧器

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェライト」の意味・わかりやすい解説

フェライト
ferrite

この語には次の両様の意味がある。 (1) 低温で安定な鉄の同素体α鉄およびその固溶体。純粋のα鉄は軟らかく靭性があるが,固溶体では硬化する。体心立方晶で純鉄では 911℃以上で面心立方のγ鉄 (オーステナイト ) に同素変態する。鋼の合金元素にはフェライト領域を拡大するものとオーステナイト領域を拡大するものがあり,前者をフェライト生成元素といってタングステン,クロム,ケイ素が代表的な例である。炭素鋼では地鉄フェライトは最大 0.02%しか炭素を固溶しない。

(2) 金属Mの亜鉄酸塩 MO・γFe2O3 。 γFe2O3 は鉄錆や赤鉄鉱の αFe2O3 の強磁性同素体で,上記のMが Feであれば磁鉄鉱 Fe3O4 となる。Mは人工的にマンガン,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,マグネシウム,バリウム,カドミウムなどまたはその混合物で置換したものがつくられ,マンガンフェライト,コバルトフェライトなどと呼ばれる。強力な永久磁石や高透磁率合金として,高周波用磁心,コンピュータの記憶素子用材料など,電子工業に非常に多く用いられる (→酸化物磁石 ) 。

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岩石学辞典 「フェライト」の解説

フェライト

この語は研究分野によって様々に使われる.(1) 赤褐色の非晶質の変質形成物でおそらく鉄化合物と思われるが,一般の光学的方法では同定ができない物質を記述する語である[Vogelsang : 1872, Johannsen : 1931].しかし実際には使用されなかった.(2) よく膠結し鉄を含む砂岩をいう[Tieje : 1921].(3) 鉄(III)酸塩のことをいい,普通はM2+O・Fe2O3の型の二価金属の塩をさす.(4) α鉄およびこれに他元素が固溶した組織名をいう.(5) 近年はフェライトといえば磁性材料を指すことが普通である.ラテン語でferrumは鉄の意味である.

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知恵蔵 「フェライト」の解説

フェライト

酸化第二鉄とMO(Mは、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛など)が1対1でスピネル型の結晶を組み、磁性を備える化合物の総称。永久磁石として使われるハードフェライトと弱い磁場にも容易に反応し、トランスの磁心や磁気ヘッド材に用いられるソフトフェライトがある。

(徳田昌則 東北大学名誉教授 / 2007年)

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栄養・生化学辞典 「フェライト」の解説

フェライト

 二価の遷移金属の鉄 (III) 酸塩.また,α鉄,δ鉄をいうこともある.

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