改訂新版 世界大百科事典 「フェリ」の意味・わかりやすい解説
フェリ
Enrico Ferri
生没年:1856-1929
イタリアの刑法学者,刑事学者,政治家。サン・ベネデット・ポー生れ。ボローニャ大学で法律学を研究,パリに留学し,フランス犯罪統計学派の影響を受けた。帰国後,C.ロンブローゾに学び,のちボローニャ大学,ローマ大学の刑法教授となる。ロンブローゾ,R.ガローファロとともにイタリア実証学派を形成した。犯罪に関する抽象的・非現実的な研究を行ってきた古典派刑法学を批判し,犯罪人に対する実証的・科学的研究に基づいた犯罪理論の必要性を説いた。彼は,犯罪の原因を,(1)人類学的原因,(2)物理的原因,(3)社会的原因に区別し,その結論として,これらの原因が一定量存する社会には一定量の犯罪が発生するとして犯罪飽和の原則を主張した。さらに,彼は,刑罰は犯罪との闘争手段としては無力であるとして否定し,犯罪原因に基づく犯罪人分類に対応した犯罪対策として,刑罰以外の,刑罰を補充する方策の必要性を指摘した。
執筆者:堀内 捷三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報