スイス名物のチーズ料理。名称は〈溶けた〉という意味のフランス語で,なべにチーズを溶かし,パンにつけて食べる。地方によって材料その他に多少の変化もあるが,主材料のチーズは,脂肪分が多くて粘りや味の強いグリュエールチーズと,溶けやすく味のやや淡泊なエメンタールチーズを混ぜて使うことが多い。なべは,フォンデュ専用のものがあるが,土なべなど厚手のものであれば代用できる。専用のなべは銅,陶器,ホウロウ引き,耐熱ガラスなどの厚手のもので,やや口の狭まった形をしている。ほかに食卓用のアルコールランプと,専用の柄の長いフォークを用意する。
まず,なべの内側にニンニクをこすりつけて香りをつけ,火にかける。これに辛口の白ブドウ酒500㏄を入れて温め,おろしたチーズ600gを少しずつ入れて溶かし,コショウ,ナツメグ,キルシュなどで好みに味をととのえ,2cm角程度に切ってフォークに刺したパン(バゲットがよい)にからませて食べる。
また前記のフォンデュと同様の形式で,チーズの代りに油を用いるフォンデュ・ブルギニョンヌfondue bourguignonne(ブルゴーニュ風フォンデュ)がある。これはなべにサラダ油とバターを入れて熱し,フォークに刺した牛のヒレ肉の角切りをこの中に入れて適宜に火を通し,ソース・オランデーズやソース・ムータルド(マスタード,油,酢で作る)など好みのソースをつけて食べる。
執筆者:辻 静雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
溶かしたチーズと白ワインを主材料としたスイスの名物料理。フォンデュ用の調理セット(フォンデュ鍋(なべ)、アルコールランプ付きの台、金串(かなぐし)など)もできていて、風雅な料理である。代表的な作り方を次にあげる。まずフォンデュ鍋の内側にニンニクの断面をこすりつけて香りをつける。グリュイエールチーズのおろしたものを鍋に入れ、白ワインを加え、アルコールランプ台にのせる。絶えずかき混ぜながら加熱してチーズを溶かし、とろりとしたクリーム状にする。キルシュワッサー、ナツメグ、こしょうなどで調味する。別にパンを3センチメートル角に切ってトーストし、別皿に用意する。フォンデュ用の串にパンを刺し、用意してある溶けたチーズを全面につけてからませ、熱いところを食べる。また、ブルゴーニュ地方独特のフォンデュ・ブルギニョン(ミートフォンデュ)は、牛肉を串に刺して油の鍋に差し込み、揚げながら食べる。このフォンデュは、好みのソースや薬味などを添えて味を楽しむ。
[小林文子]
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…(5)スイス料理,ベネルックス諸国の料理 ドイツ系,フランス系,イタリア系などの住民からなる多民族国家スイスでは,これら3ヵ国の料理がそれぞれスイス風にアレンジされている。そのため,スイス独特の料理をさがすのは難しいが,ワインを加えて溶かしたチーズをパンにからませて食べるフォンデュや,ゆでたジャガイモに溶かしたチーズを添えたラクレットracletteのように,特産のチーズを生かした料理が多いのが特色といえる。ベルギー,オランダ,ルクセンブルクの料理には,隣接するフランスやドイツの影響が見られる。…
…【吉野 梅夫】
[料理]
チーズはそのまま食べるだけでなく,各種料理の材料としても重要で,利用範囲はきわめて広い。スイスの名物料理フォンデュはおろしたチーズを白ブドウ酒で煮溶かし,パンの小片を浸して食べるもので,エメンタールとグリュエールを使う。グラタンにはおろしチーズが欠かせないが,スパゲッティ,マカロニなども熱いところへミートソースやトマトソースをかけ,その上へ山のようにパルメザンをかけて食べる。…
※「フォンデュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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