精選版 日本国語大辞典 「ブランデー」の意味・読み・例文・類語
ブランデー
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ブランデーの語源はオランダ語のブランデウェインbrandewijnに由来しており、これはワインを焼くという意味である。フランスではオー・ド・ビィeau-de-vie(生命の水)とよんでいる。ドイツ語でブラントバインBranntwein、日本では火酒と訳している。
[原 昌道]
一般的には果実酒を蒸留した酒であるが、わが国の酒税法上の定義では次の三つに分類される。
(1)果実または果実と水を原料として発酵させ、ついで蒸留したもの。
(2)できあがった果実酒(果実酒粕(かす)でもよい)を蒸留したもの。(1)、(2)ともに蒸留時に留出物のアルコールは95%未満である必要がある。
(3)前記の(1)、(2)にスピリッツ、香味料などを加えたもの。
なお酒税法上は、ブランデーは果実酒を蒸留したものとなっているが、一般にブランデーという場合はワインを原料としたもののみに使われ、ほかの果実酒、たとえばりんご酒を原料としたものなどは、その上に原料の名称をつけてアップルブランデーなどとよばれる。
[原 昌道]
ブランデーは、ワインが有史以前の酒であるのに対して比較的新しい酒である。だれが最初にワインを蒸留したかは明らかでないが、ヨーロッパで12~13世紀ごろ、医師や錬金術師がワインの蒸留を行ったとの記録がある。とくにスペインの錬金術師のアルノーの名が高く、ブランデーの祖とされている。しかし実際にブランデーがつくられたのは16~17世紀になってからで、一説によると、オランダ人の薬剤師がたまたまフランスのシャラント県のコニャック地方を通りかかった際、ワインが生産過剰になり困っている農民を救うために、ワインを蒸留し、貯蔵の問題を解決したのが始まりといわれている。その後ルイ14世の保護政策、ナポレオン家の援助などによって、コニャック産のブランデーは、高級ブランデーの品質表示に付けられる「ナポレオン」の名とともに全世界に広まった。日本に初めて渡来したのは、ワインよりもやや遅い1651年(慶安4)で、オランダ人によって江戸にもたらされたとの記録がある。
[原 昌道]
ブランデー用には、香りに特徴の少ないビニフェラ種のブドウが使われる。ワイン用と異なり酸が多く、糖分は18~19%と低い原料ブドウのほうがよい。ブランデー用には亜硫酸を使用しないから、生成ワインの変敗がおこらないように酸味の強いブドウが適当とされる。仕込み方法は白ワインと同様で、酵母による発酵終了後、できるだけ早く蒸留する。ワインを蒸留しないで長く放置すると、アルコール度数が7~8%と低く、かつ亜硫酸が含まれていないから、変敗するおそれがある。蒸留は単式蒸留機(ポットスチル)を使い、通常2回行う。1回目は粗留といい、アルコール分24~30%程度の留液を得る。ついでこれをふたたび蒸留し、初留と後留を適当に除いて、良質部のみを集める。アルコール分は60~70%である。この留液を400~600リットルの容量の樫樽(かしたる)に詰め、長期間貯蔵し熟成させる。樽の材質は非常に重要で、通常コニャックにはリムーザン地方のカシ、アルマニャックにはガスコン地方のカシが用いられる。貯蔵中、新酒の荒さは消え、まるくなり、ブランデー特有の香りが増し、甘味もついて、琥珀(こはく)色に変わる。貯蔵酒は最後にブレンドして風味を調整し、製品とする。
[原 昌道]
ブランデーは原料別、産地別によっていろいろな種類がある。
(1)ブドウブランデー 普通のブランデーで、一般にもっとも良質である。
(2)コニャック フランス南西部にあるコニャック地方でつくられるブランデー。
(3)アルマニャック フランス南西部、アルマニャック地方に産するブランデーで、一定の規格にあったもののみがアルマニャックという名をつけて売られる。ブドウの品種はフォルブランシュ種、サンテミリオン種がおもに使われる。蒸留はコニャックと違って普通連続式蒸留機を用いて1回だけ行われる。したがって原料ワインの風味と香りが留液に多く移行し、こくのある強い香りのブランデーが得られる。留液のアルコール分はコニャックよりも低く55~60%である。なお、現在はコニャックと同じ蒸留法も許可されている。
(4)粕(かす)ブランデー 赤ワインを製造するときの絞り粕を蒸留したもの。絞り粕を直接蒸気で蒸留するか、絞り粕に水を加えてアルコールをはじめ揮発成分を抽出し、これを蒸留する方法、あるいは絞り粕に水を加え、さらに糖を加えて発酵した液を蒸留する方法などがとられる。フランス語でオー・ド・ビィ・ド・マールとよばれる。
(5)おりブランデー ワインの澱(おり)に加水して蒸留したもの。
(6)干しぶどうブランデー 干しぶどうからつくった酒を蒸留したもの。
(7)アップルブランデー りんご果汁の発酵液を蒸留してつくる。イギリスではハードサイダーを蒸留したものをアップルブランデー、リンゴのジュースを絞った粕に水を加えて薄め、発酵させ、蒸留したブランデーをアップルジャックとして区別している。アメリカではこの区別ははっきりしない。なお、フランスではノルマンディー地方のカルバドス県でつくられたりんご酒を蒸留したブランデーをカルバドスとよび、とくにドージュ村のカルバドスは有名である。
(8)キルシュワッサー サクランボを発酵、蒸留してつくる。
(9)プラムブランデー プラムを発酵、蒸留してつくるブランデー。アルコール分は平均40%前後。ヨーロッパ中部地方(ユーゴスラビア、ルーマニアなど)で産するプラムからつくられるブランデーはスリボービッツ、フランスのアルザス地方、ドイツのバーデン地方でとれる黄色いプラムからつくられるブランデーはミラベルとよばれる。
[原 昌道]
ブランデーは香りを鑑賞し、味わって飲む酒である。大型のチューリップ型をしたブランデーグラスに、少量(約30ミリリットル)注いで、これを両手または片手で支えて温め、ゆっくり回して香りを引き立て、香りをかぎながら飲むのが普通である。コーヒーの中へ入れて飲む場合もある。とくにアルマニャックなどは芳香がたって好まれる。そのほかカクテルベースにも使われる。フルーツブランデーはストレートでも飲まれるが、リキュールの原料として使われる場合が多い。
[原 昌道]
『井上宗和著『世界の酒3』(1989・角川書店)』
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出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
…フランス産ブランデーの一種。ブランデーの同義語として使われることが多いが,本来はフランス南西部のコニャック市を中心とするシャラント県とシャラント・マリティーム県にまたがる地域内で,一定の規格のもとに造られたブランデーのみに与えられる呼称である。…
…穀類や果実などを原料とし,これらを発酵,蒸留してつくった酒。ビールや白ブドウ酒の発酵液(もろみ)を蒸留したものが,それぞれモルトウィスキーやブランデーであるように,伝統的醸造酒には対応する蒸留酒がある。 形状からみて,蒸留に使われたと思われる土器は,紀元前3000年ころのメソポタミア文明の遺跡から出土しているが,ブドウ酒の蒸留を記録したのはアリストテレス(前384‐前322)がはじめである。…
…(7)その他 ここに区分されるものはおもに外国起源の酒で,洋酒としている文献もある。白蘭地(ブランデー),威士忌(ウィスキー),金酒(ジン),俄斯克(ウォッカ),蘭母酒(ラム)などで,これらのうち烟台の金奨白蘭地は歴史も古く,全国名酒に数えられている。【鈴木 明治】。…
※「ブランデー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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