1932年のアメリカ大統領選挙において,民主党候補F.D.ローズベルトがコロンビア大学教授のモーリーRaymond Moley,タグウェルRexford G.Tugwellなどの学者を政策面でのアドバイザーとして用いたことを,当時の新聞が評して使用した表現。ローズベルトの大統領就任後も,このブレーン・トラストはニューディール政策の立案・実施を援助した。その後〈私的な幕僚群〉を指す言葉として一般的に使用されるようになった。元来,大統領は一身に元首,行政首長,三軍の最高司令官の職を帯び,多能多才でなければならないが,ことに1930年代から内に外に国家機能が著しく拡大し,大統領は多忙を極め,多くの分身を必要とするにいたった。かくして39年大統領府Executive Office of the Presidentが設置され,私的なブレーン・トラストは公的な制度となり,その中にホワイト・ハウス・スタッフが正式に置かれるようになった。ただ,このスタッフの権限があまりに強大化すると,帝王的大統領制の原因ともなり,大統領直属のスタッフとラインとしての行政各省との調整は微妙である。なお日本でも,近衛文麿の国策研究集団〈昭和研究会〉は,ブレーン・トラストの一例といえよう。
執筆者:斎藤 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし,20世紀に入り,国家機能の拡大に伴い行政業務も増大し,ことにF.D.ローズベルト大統領時代に,内にニューディール,外に第2次大戦と,政府の機能は飛躍的に拡大し,大統領の強い政治指導が要請されるにいたった。ここに多忙な,強力であるべき大統領にとってその分身ともいうべき側近が必要とされ,ローズベルトの時代にはブレーン・トラストとしてスタッフが強化されたが,1939年には大統領府Executive Office of the Presidentが設置され,今日ではホワイト・ハウス事務局,管理予算局,国家安全保障会議,中央情報局(CIA)など強力な機関が各省と別に大統領に直属している。ことに,ホワイト・ハウス事務局の補佐官は,大統領の政策決定に大きな影響力をもち,大統領とこれらのスタッフに広範な権限が集中され,ついにはニクソン大統領時代の〈帝王的大統領〉制との批判をうけるまでにいたる。…
※「ブレーントラスト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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