プロゲステロン(その他表記)progesterone

翻訳|progesterone

デジタル大辞泉 「プロゲステロン」の意味・読み・例文・類語

プロゲステロン(progesterone)

黄体ホルモンの主要なもの。黄体および胎盤から分泌され、妊娠を維持する作用をもつ。

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改訂新版 世界大百科事典 「プロゲステロン」の意味・わかりやすい解説

プロゲステロン
progesterone

女性ホルモンの一つで,黄体ホルモンのこと。化学式C21H30O2,分子量314.47,化学名⊿4-プレグネン-3,20-ジオン。融点127~131℃(α体),121℃(β体)。無臭の白色結晶で,水に溶けず,アルコール,アセトンに溶ける。卵巣黄体が内分泌機能を行うことは19世紀から予測されていたが,黄体ホルモンの本体といえるプロゲステロンがブタなどの黄体から結晶として抽出されたのは1934年のことで,それはブテナントA.F.J.Butenandt,スロッタK.H.Slotta,アレンW.M.Allen,ハルトマンM.Hartmannらによってそれぞれ独立に行われ,ほぼ同じ時期に合成にも成功した。

 プロゲステロンは,後述のように黄体,胎盤から分泌されるが,このホルモンは他のステロイドホルモンの中間産物で,副腎皮質睾丸でも生合成される。プロゲステロンの作用機序は,血液中から標的細胞内に移行して,細胞質のプロゲステロン受容体(レセプター)と結合する。プロゲステロンと結合した受容体は核に移行してDNAに結合し,mRNA合成を介して特異的タンパク質の合成が起こる。プロゲステロンは,おもに肝臓でプレグナンジオール,プレグナノロンに転換され,さらにグルクロン酸抱合型となって尿中に排出される。

 プロゲステロンは,月経周期の中間で排卵が起こって黄体が形成されると分泌が始まり,妊娠が成立しないときには黄体が萎縮して分泌が止まり,次の月経が起こる。受精が成立して約7日後に受精卵着床が起こると,子宮内膜で栄養芽層から黄体形成を促進する胎盤性性腺刺激ホルモンの分泌が始まり,黄体からのプロゲステロン分泌が続くが,妊娠3ヵ月ころからは胎盤が黄体に代わってホルモン分泌の主役を演じるようになる。プロゲステロンによって子宮粘膜は分泌像を呈し,内膜の変化は妊娠初期像に類似し,外部からプロゲステロンを投与しつづけると,次の月経が起こらなくなることが,経口避妊薬にこのホルモンが用いられるようになった理由である。プロゲステロンの欠乏や分泌不全により早・流産が起こる。エストロゲンとの協力作用で乳腺の腺管増殖作用もある。

 プロゲステロンは機能性子宮出血,月経困難症,月経前緊張症子宮内膜症,流産などに注射で用いられたが,近年,より強力な合成誘導体製剤が代わって利用されるようになった。
月経
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化学辞典 第2版 「プロゲステロン」の解説

プロゲステロン
プロゲステロン
progesterone

pregn-4-ene-3,20-dione.C21H30O2(314.46).黄体ホルモンの一つ.生体が内分泌する黄体ホルモンはプロゲステロンのみである.1934年,A. Butenandt(ブテナント),K.H. Slotta,W.M. Allen,M. Hartmannらの四つの研究グループにより,それぞれ独立にブタの卵巣から単離された.スチグマステロールジオスゲニンエルゴステロールなどの原料から多量に合成されており,副じん皮質ホルモンの合成原料として重要である.白色の結晶または結晶性の粉末.融点128~133 ℃,または120~122 ℃ の結晶多形であり,低融点のほうが不安定で高融点のほうにかわりやすい.+174~+182°(ジオキサン).λmax 240 nm.水に難溶,エタノール,アセトン,クロロホルム,ベンゼン,ジオキサンに可溶.副じん皮質ホルモン,男性ホルモン発情ホルモンはすべてプロゲステロンを出発点として生合成されている.切迫流産,習慣性流産,着床不全による不妊,不正子宮出血,無月経,月経痛などの治療に用いられている.[CAS 57-83-0]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロゲステロン」の意味・わかりやすい解説

プロゲステロン
ぷろげすてろん
progesterone

黄体ホルモン作用をもつ物質(ゲスタゲン)のうち、天然型の黄体ホルモンで、ステロイドの一つ。1934年、ブーテナントらによって黄体から抽出され、化学構造が明らかにされるとともに、合成にも成功した。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロゲステロン」の意味・わかりやすい解説

プロゲステロン
progesterone

C21H30O2 。プロジェステロンともいう。黄体ホルモン。女性ホルモンの一種。 1934年ブタの卵巣から単離された。黄体,胎盤や副腎皮質に含まれ,合成も可能である。無色の結晶。融点 128.5℃ (α形) ,121℃ (β形) 。水には溶けないが,有機溶媒には可溶。受精卵の着床に寄与し,下垂体の性腺刺激ホルモンの分泌を抑制し,2次的に排卵を抑制する。また,胎児の成育維持などの生理作用がある。月経異常に用いられる。

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栄養・生化学辞典 「プロゲステロン」の解説

プロゲステロン

 C21H30O2 (mw314.47).

 プロジェステロン,プロゲスチンともいう.エストロゲンで,黄体,副腎皮質,胎盤で作られる.子宮内膜分泌期変化,妊娠維持,体温の上昇,排卵抑制,乳腺発育などの作用があり,避妊,習慣性流産,月経周期の異常の治療などに用いられる.

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百科事典マイペディア 「プロゲステロン」の意味・わかりやすい解説

プロゲステロン

黄体ホルモン

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世界大百科事典(旧版)内のプロゲステロンの言及

【月経】より

…このLHの多量放出が卵巣に作用して排卵が起こる。ついで黄体が形成されると,黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる。子宮体腔の内面をおおっている子宮内膜ことに機能層(表層部)は,これらの卵巣ホルモンに鋭敏に反応する標的組織で,エストロゲンは子宮内膜の厚くなる増殖期(月経終了直後から排卵直前まで)変化を起こさせ,プロゲステロンは子宮内膜の分泌活動が盛んになる分泌期(排卵直後から月経開始直前まで)をもたらす。…

【女性ホルモン】より

…女性における性ホルモンで,広く動物をも含めて一般的にいう場合には雌性ホルモンという。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類がある。女性特有のものである精子の受入れ,着床,妊娠の維持や分娩,授乳などを支配しているのは女性ホルモンであるが,また,このホルモンは女性の二次性徴の発達や維持のために重要な役割をはたしている。…

【性ホルモン】より

… 女性ホルモンは主として卵巣の卵胞,黄体で合成,分泌される。大別してエストロゲンプロゲステロンとがある。成熟婦人の卵巣は特有な周期変化をしている。…

【妊娠】より

…また卵管内における初期妊卵の発育には卵管分泌物が重要な役割を演じていることがわかってきている。卵管での輸送や卵管の分泌はエストロゲンやプロゲステロンによって影響される。こうして,受精卵はほぼ3~4日で,64~128細胞からなる初期胚胞または32~64細胞からなる後期桑実胚期に子宮腔に達する。…

【排卵】より

…排卵された卵は,卵巣の近くに接近してきている卵管の采部(さいぶ)の卵管口から卵管内に吸引され,卵管内を運ばれて卵管膨大部で精子と合体して受精が起こる。排卵した卵胞は直ちに黄体となり,黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌するが,黄体の寿命は14±2日と一定していて,排卵後14±2日で黄体ホルモンの分泌は停止し,ホルモンの血中濃度が低下する。するとその刺激で,子宮体内膜は崩壊剝離して月経出血が始まる。…

【ピル】より

…経口避妊薬oral contraceptiveともいう。女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン),黄体ホルモン(プロゲステロン)と同じ薬理作用を有する2種類の合成ステロイドホルモンを含んだ錠剤。これを飲んで避妊に用いる。…

※「プロゲステロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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