プロテスタンティズム(読み)ぷろてすたんてぃずむ(英語表記)Protestantism

精選版 日本国語大辞典 「プロテスタンティズム」の意味・読み・例文・類語

プロテスタンティズム

〘名〙 (Protestantism) (一五二九年の第二回シュパイエル国会に提出した「抗議書」(プロテスタティオ)に由来) 一六世紀の宗教改革以後ルターカルバンらの教説を奉じてカトリック教会から分離したキリスト教の諸教義・諸派総称聖書信仰唯一規範とし、福音への信仰だけを救いとする傾向が強い。福音主義新教。〔現代日用新語辞典(1920)〕

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デジタル大辞泉 「プロテスタンティズム」の意味・読み・例文・類語

プロテスタンティズム(Protestantism)

16世紀の宗教改革に発した、キリスト教プロテスタント各派の思想神学。その思想的中心は、人は信仰によって救われるとする信仰による義認ぎにんと、聖書を信仰の唯一の根拠とする聖書主義の二点である。新教。

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百科事典マイペディア 「プロテスタンティズム」の意味・わかりやすい解説

プロテスタンティズム

ローマ・カトリック教会,東方正教会とならぶキリスト教の三大勢力の一つ。宗教改革の結果キリスト教世界に成立したルターカルバンの福音主義的信仰,ないしはその伝統を受けついだ諸教派の総称で,日本では〈新教〉とも呼ばれ,〈旧教〉たるカトリック教会と対比されるが,適当ではない。教会の伝承ではなく聖書を唯一の信仰のよりどころとする聖書原理善行功徳によってでなく信仰によって義とされるとする〈信仰義認説〉,また,信仰者は等しく祭司であるとする〈万人祭司説〉をとる。サクラメントは聖餐(せいさん)と洗礼のみを認める。プロテスタンティズム,特にカルビニズムないしピューリタニズム(ピューリタン)の倫理が近代資本主義の成立に果たした役割を強調するM.ウェーバーの所説は有名。→カトリシズム
→関連項目キリスト教WASP

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロテスタンティズム」の意味・わかりやすい解説

プロテスタンティズム
ぷろてすたんてぃずむ
Protestantism

ルターやカルバンなどによる宗教改革に端を発し、今日では、ローマ・カトリック教会、東方正教会と並ぶキリスト教の一大勢力となった諸教派およびその思想の総称。プロテスタントということばは、神聖ローマ帝国皇帝カール5世の改革否認に対する抗議宣言に由来するが、単なる抗議を超えて、自らの信ずるキリスト教信仰の中核を大胆に告白するという積極的意味をも含んでいる。ルターの提唱になり、その後この教派共通の原理となったのは、(1)人は、善行によってではなく、信仰のみによって神の前に義とされるという信仰義認の原理、(2)伝承などを否定し、聖書のみが信仰の根拠であるとする聖書主義、(3)聖職者と平信徒の区別を排し、神の前での平等を強調する万人祭司の原理、である。これらの原理はすべて、神と人間との間の媒介物を除去し、人間を直接神と直面せしめるものであって、ここにいかなる権威にも屈することのない内面的価値が自覚され、封建的身分秩序からの個人の自立化が可能となった。したがって、政治的には近代民主主義、経済的には資本主義の思想的淵源(えんげん)がここに求められている。他面、信仰が、恩寵(おんちょう)の客観的施設としての教会から解放されることによって、高度に主観的・心情的なものとなり、救いの確かさが見失われていったこと、また正統と異端の分裂を惹起(じゃっき)したことも忘れてはならない。近年、教会再一致への方向が模索されている。

[高野清弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロテスタンティズム」の意味・わかりやすい解説

プロテスタンティズム
Protestantism

16世紀の西方キリスト教における宗教改革の原動力となった根本的な宗教理念とその具体的な帰結,表現などの総称。その的確な概念規定は困難であるが,信仰主義,聖書主義の2点に要約することができる。前者は sola fide (信仰のみ ) の標語に集約されるように,救済における神の恩恵の絶対性と直接性とを主張するもので,中世教会にしばしばみられたような過度の人間行為の重視,呪術に堕しかねない機械的サクラメントなどへの批判の立場。後者は sola scriptura (聖書のみ) で表わされるように神の言葉の絶対権を主張し,伝統,教会,特にその聖職者の人的権威が神の座を占めようとすることへの批判の立場 (→万人祭司 ) である。

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世界大百科事典 第2版 「プロテスタンティズム」の意味・わかりやすい解説

プロテスタンティズム【Protestantism】

16世紀の宗教改革にはじまり,そこから発展・分化したキリスト教の一群を包括する名称。ローマ・カトリック教会,東方正教会とならぶ,キリスト教の三つの大きな流れの一つ。〈プロテスタント主義〉とも訳される。日本で慣用されている訳語〈新教〉は正しくない。プロテスタントの名称は,1529年4月,ドイツのシュパイヤーで開かれた国会(シュパイヤー国会)で,宗教改革の側に立つ少数派の諸侯と都市が,多数派のカトリック側の皇帝に対してみずからの立場を〈公に表明して抗議〉(ラテン語のプロテスタティオprotestatio――元来は法律用語)したことに由来し,のちに自称として用いられるようになった。

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世界大百科事典内のプロテスタンティズムの言及

【宗教改革】より

…宗教改革は,16世紀前半,ヨーロッパのキリスト教,それもローマ・カトリックの教界内部でおこった神学,教義,典礼,教会体制の全般にわたる変革運動である。中世いらい,キリスト教はヨーロッパの社会,政治,文化,思想など,生活の諸分野と密接に結びつき,これを深く規定していたため,この変革と,それを通じて成立したプロテスタンティズムは,ルネサンスと並んで,近代ヨーロッパ世界の形成にとって,重要な意義をもつこととなった(図1,図2)。
[改革の先駆け]
 宗教改革の一般的前提をなしたものは,ローマ教皇権の動揺に象徴せられるごとき,中世カトリック教会体制の内部的な構造変化である。…

※「プロテスタンティズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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