翻訳|proline
第一級アミノ基-NH2のかわりに第二級アミノ基(イミノ基)Hをもつ環状のアミノ酸(イミノ酸)の一つで分子量115.13。ピロリジン-2-カルボン酸構造をもつ。1901年にドイツの有機化学者フィッシャー(1902年ノーベル化学賞受賞)がカゼインの加水分解物から初めて分離し、プロリンと命名したが、DL-プロリンはその前年にドイツの有機化学者ウィルシュテッターによって合成されていた。L-プロリンはほとんどのタンパク質に含まれるが、とくにコラーゲンとその変性物であるゼラチンに多く、構成アミノ酸(タンパク質をつくっているアミノ酸のこと)の20%前後を占める。エタノール(エチルアルコール)に溶ける唯一のアミノ酸で、水に対する溶解度はタンパク質をつくるアミノ酸のうち最大である。弱い甘味があり、ニンヒドリンで黄色に、イサチンで青色に呈色する。亜硝酸と反応してニトロソ化合物をつくり、窒素を発生しない。非必須(ひひっす)アミノ酸で、生体内ではグルタミン酸からつくられる。植物中ではピロリンを経てアルカロイドのアトロピンやニコチンになる。なお、コラーゲン中には3位または4位の水素がヒドロキシ基に置換されたヒドロキシプロリンが10%程度含まれている。4-ヒドロキシプロリンも1902年フィッシャーがゼラチンの加水分解物からプロリンとともに単離した。水酸化はプロコラーゲン‐プロリン‐ジオキシゲナーゼによる。この反応には鉄イオンFe(2+)とアスコルビン酸(ビタミンC)が必要である。壊血病はコラーゲン生合成においてプロリンとリジンの水酸化(ヒドロキシ化)ができなくなり、正常なコラーゲンができなくなることに起因する。
[野村晃司]
プロリンはそれ自体に味があり、L型は弱い甘味、D型はわずかであるが苦味がある。L-プロリンは天然系の食品添加物の一種で、調味料や強化剤として用いられている。たとえば、プロリンと糖を加熱するとアミノカルボニル反応をおこし、よい香気がでるとともに褐色に着色する。この反応を利用してパン製造時にプロリンを加え、風味をよくすることが行われている。
[河野友美・山口米子]
『船山信次著『アルカロイド――毒と薬の宝庫』(1998・共立出版)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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