ヘミングウェー(英語表記)Hemingway, Ernest

精選版 日本国語大辞典 「ヘミングウェー」の意味・読み・例文・類語

ヘミングウェー

(Ernest Miller Hemingway アーネスト=ミラー━) アメリカ小説家第一次世界大戦従軍し、負傷。その経験をもとに「日はまた昇る」「武器よさらば」を発表。死と隣り合わせの現実に敢然と立ち向かい敗北する人間の姿を、簡潔な力強い文体で描いた。他に「誰がために鐘は鳴る」「老人と海」など。一九五四年ノーベル文学賞受賞。(一八九九‐一九六一

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百科事典マイペディア 「ヘミングウェー」の意味・わかりやすい解説

ヘミングウェー

米国の作家。第1次大戦で負傷後,パリでスタインパウンド感化を受け,短編集《われらの時代》(1925年),中編《春の奔流》に続く長編《日はまた昇る》(1926年)で〈ロスト・ジェネレーション〉の荒廃した生活を描き,評判になった。さらに《武器よさらば》(1929年)で,独特の乾いた文体を完成。日常生活でも絶えず冒険を求め,アフリカを舞台とする短編《キリマンジャロの雪》や闘牛を扱ったノンフィクション《午後の死》(1932年)を発表,またスペイン内乱では反ファシスト義勇軍に参加,その体験をもとに戯曲《第五列》(1935年)や《誰(た)がために鐘は鳴る》(1940年)を執筆した。10年の空白を経て,《老人と海》(1952年)を発表,1954年ノーベル文学賞受賞。アフリカでの2度の飛行機事故から生還して健在ぶりを示したが,猟銃でなぞの自死を遂げた。小説《海流の中の島々》(1970年),《エデンの園》(1987年)が死後出版された。
→関連項目カーバーキー・ウェストシーゲルダイキリハードボイルド

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘミングウェー」の意味・わかりやすい解説

ヘミングウェー
Hemingway, Ernest

[生]1899.7.21. イリノイ,シセロ
[没]1961.7.2. アイダホ,ケッチャム
アメリカ合衆国の小説家。フルネーム Ernest Miller Hemingway。高等学校卒業後,しばらく新聞記者をしたのち,第1次世界大戦に従軍,イタリア戦線の野戦衛生隊に所属して重傷を負った。戦後『トロント・スター』紙の記者をするかたわら創作を始め,1921年パリにおもむき,F.スコット・フィッツジェラルド,ガートルード・スタイン,エズラ・パウンドらの知遇を得た。戦後の享楽的な青春群像を描いた『日はまた昇る』The Sun Also Rises(1926)により,「失われた世代」の代表的作家と目された。スペイン内乱が勃発すると特派員として赴いたほか,共和派への支援も行なった。『武器よさらば』A Farewell to Arms(1929),『誰がために鐘は鳴る』For Whom the Bell Tolls(1940),『老人と海』The Old Man and the Sea(1952,ピュリッツァー賞)などの小説のほか,ハードボイルドな文体を駆使した短編の名手としても知られる。1954年ノーベル文学賞受賞。狩猟,釣り,闘牛を愛し,終始行動的な生活を送ったが,愛用の猟銃で自殺,鬱病のためといわれる。死後,『移動祝祭日』A Moveable Feast(1964),『海流のなかの島々』Islands in the Stream(1970)が出版された。

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世界大百科事典 第2版 「ヘミングウェー」の意味・わかりやすい解説

ヘミングウェー【Ernest Hemingway】

1899‐1961
アメリカの小説家。イリノイ州オーク・パーク生れ。ハイ・スクール卒業後,短い記者修業を経て第1次大戦末期の1918年,志願して傷病兵の輸送に当たり,イタリアで負傷。帰国後シカゴの作家S.アンダーソンの手引きもあって創作に志し,カナダの週刊紙の特派員を務めるかたわら,G.スタインやE.パウンドの助言のもとにパリで執筆に励む。《三つの短編と10編の詩》(1923)および短編集《われらの時代に》(1925)は,医師である父親の手ほどきを受けて北部ミシガンの自然のなかで釣りや猟銃の腕を磨いた少年時代から,戦地で死の重傷を負うまでの作者自身の体験を,つとめて抽象化をさけた独特の即物的な文体で描く,切れ味のよい秀作を多数収めている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヘミングウェー」の解説

ヘミングウェー
Earnest Miller Hemingway

1899~1961

アメリカの小説家。第一次世界大戦後パリに赴き,戦後の青年たちの虚無とデカダンスに満ちた生活を描き「失われた世代」の代表的作家となる。代表作に『武器よさらば』『誰がために鐘はなる』ほか。1954年ノーベル文学賞受賞。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ヘミングウェー」の解説

ヘミングウェー
Ernest Miller Hemingway

1899〜1961
アメリカの作家
第一次世界大戦の体験から『武器よさらば』で名声を確立した。スペイン内戦で人民戦線派に参加して著した『誰がために鐘は鳴る』は行動主義文学の傑作。『老人と海』によってピュリッツァー賞を受賞。1954年ノーベル文学賞も受賞した。

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世界大百科事典内のヘミングウェーの言及

【アメリカ文学】より

…彼のデビュー作《カラベラス郡の有名な跳び蛙》(1867)は西部開拓民の間に伝わる〈ほら話tall tale〉の語りの伝統を巧みに文学化した短編である。彼の最高傑作《ハックルベリー・フィンの冒険》(1885)は,自由と秩序,自然と文明などのアメリカ的テーマを集約しつつ無垢(むく)な少年の運命を語り,のちにヘミングウェーをして〈すべての現代アメリカ文学は《ハックルベリー・フィン》という1冊の本に由来する〉と言わしめた。 リアリズム全盛時代の文壇の大御所はW.D.ハウエルズである。…

【クーパー】より

…また《戦場よさらば》(1932。原作は《武器よさらば》),《誰が為に鐘は鳴る》によって,〈完ぺきなヘミングウェー・ヒーロー〉とも評される(実際,ヘミングウェーはクーパーを念頭において《誰が為に鐘は鳴る》の主人公ロバート・ジョーダンを書いたともいわれる)。カウボーイ,漫画家を経て,1926年に映画俳優としてデビュー。…

【スタイン】より

…そうした作品を壁一面に掛けた彼女の家は,長い間パリ在住の前衛芸術家や作家のサロンとなり,彼女の新しいものの見方,機知などが,多くの芸術家を引きつけ,育てた。なかでも彼女の散文から最も多くを学んだのは,まだ若い無名作家だったヘミングウェーである。フローベールの《三つの物語》(1877)とセザンヌの婦人像の影響下に書いたという小説《三人の女》(1909)で,彼女は徹底的にアメリカ口語を用い,句読点の破格使用と単純な文章の重複からなる個性的な文体を確立した。…

【スペイン内乱】より

…(3)スペインの進路は,宿命的にヨーロッパの掌中に握られていた。(4)内乱像は,外国の諸新聞や世界的に著名な作家(ヘミングウェー,マルローら)の手によって固定化した。これらは一様にスペイン文化を評価し,さらに共和国陣営からの見聞であった。…

【ハードボイルド】より

…ハードボイルド・ディテクティブといえば,往年の映画俳優ハンフリー・ボガートがよく主演した探偵もの映画の主人公のように,無口で無表情,眉ひとつ動かさず大胆なことをやってのけるような探偵,ということになる。ヘミングウェーの短編《殺し屋たち》(1927)のような作品,D.ハメット,R.チャンドラーなどの探偵小説は,いわゆるハードボイルド・ノベルの典型である。また感情表出を極度に切り詰め,事件や行動だけを簡潔に表現するような文体,芸術一般の表現様式にもこれを使うことが多い。…

【武器よさらば】より

…アメリカの小説家ヘミングウェーの小説。1929年刊。…

【ロスト・ジェネレーション】より

…〈失われた世代〉と訳される。ヘミングウェーの《日はまた昇る》(1926)の題辞に引用されたG.スタインの言葉(You are all a lost generation)に由来するこの呼び名は,直接的にはこの小説で描かれているように,大戦の生々しい傷痕をかかえて1920年代のパリにたむろした虚無的,享楽的なボヘミアンたちを指す。一方,文学史の用語としてはとくにヘミングウェー,F.S.K.フィッツジェラルド(《夜はやさし》でこの世代の精細な心理描写を行った),E.E.カミングズ,J.ドス・パソスら,既存の権威やモラルの徹底した洗い直しと,大胆な手法上の実験とによってアメリカ文学に新時代を開いた作家や詩人の一群をいう。…

※「ヘミングウェー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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