精選版 日本国語大辞典 「ペリカン」の意味・読み・例文・類語
ペリカン
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鳥綱ペリカン目ペリカン科に属する水鳥の総称。この科Pelecanidaeの仲間は、ごく大形で、飛翔(ひしょう)と遊泳とに優れた水鳥である。
全長約114~170センチメートル。体は重く、翼は広く長い。頸(くび)は長く、尾は短い。足は短いが大きく、水かきがある。最大の特徴は、長い嘴(くちばし)とその下嘴についている大きな伸縮自由ののど袋である。これを網のように用いて魚をとらえる。おもに熱帯域に分布するが、温帯域にもみられ、海岸や内陸の湖沼・湿地、河口域に生息する。アメリカ大陸の暖帯・熱帯域には全身褐色のものがいるが、多くは白色か灰色の羽色をもつ。捕食者から安全な島、高い岩、マングローブ林の樹上、または沼地の島に発達した葦原(あしはら)などに集団をつくって営巣する。営巣地と餌場(えさば)とが非常に離れていることもあるが、これは優れた飛翔力で埋め合わせる。1腹2~4卵を産み、雌雄が交替で約4週間抱卵し、雛(ひな)をかえす。雛は親鳥の口の中に頭を入れて、半消化の魚をもらい、おおよそ10週間で巣立つ。巣立ち後数年で初めて繁殖するようになる。ペリカンはよくまとまった小集団で生活することが多い。上空を飛ぶときに、編隊を組み、同調して羽ばたくこともある。また大形種では、湖沼の深い所に集まって横に並び、翼をばたつかせながら小魚を追い出し、浅いほうに追い込んでからとらえる。このとき、頭を水の中に入れ下嘴を開いて、広がったのど袋で魚をすくい取り、口を閉じて水から引き抜きながら、魚だけを漉(こ)し残し、最後に飲み込む。小形種ではこうした集団による追い出し採餌(さいじ)法はみられない。単独で浅い水域をゆっくりと泳ぎ、あるいはじっとしていて、魚をみつけるとすばやく頭を水中に突っ込み、のど袋ですくい取る。
[長谷川博]
世界に6~8種が知られている。ハイイロペリカンPelecanus philippensisは東南アジアからインドに分布する種で、日本ではまれに観察されるにすぎない。モモイロペリカンP. onocrotalusはヨーロッパ南部、西アジア、アフリカ、インドなどの内陸湖沼地域に分布し、冬季は南に移動する。コシベニペリカンP. rufescensはサハラ砂漠以南の熱帯アフリカに分布する。オーストラリア沿岸にはオーストラリアペリカンP. conspicillatusが分布する。北アメリカの内陸湖沼にはシロペリカンP. erythrorhynchosが生息し、冬季には暖海沿岸に移動する。南北アメリカの暖帯・熱帯沿岸には、ペリカン類でもっとも小形な種カッショクペリカンP. occidentalisが生息する。この種は、空中から海に突入して餌をとらえる特異な採餌を行う。水に入った瞬間に下嘴の袋を広げ、上嘴でそこに魚を追い込んでとらえる。ペルー南部とチリ沿岸にはチリペリカンP. thagusが分布する。カッショクペリカンと近縁で、やや大形である。2種は同種とされる場合もある。
なお、ペリカンは日本列島にはまれに出現するにすぎないが、下嘴に大きな袋をもつことなど形態が奇異であることから、古来、ガランチョウあるいはコンガラチョウなどの名でよばれてきた。
[長谷川博]
ヨーロッパでは中世以来、ペリカンは自分の血で雛を養い、死んだ雛に血を与えてよみがえらせる鳥として知られた。ペリカンの給餌の習性の観察から転化した伝えといわれるが、血を尊重する宗教観念によってまとめられているところに特色がある。古くからキリスト教思想と結び付き、自己犠牲の精神を表す鳥として、一般にはキリストの象徴として広まった。キリストの十字架像には、しばしば上部に、胸を広げ、死んだ雛に血を注ぎかけているペリカンが描かれる。それはまたピエタの像の聖母マリアをも想起させる姿で、民衆の間では母性愛の象徴にもなっている。日本でも琵琶湖(びわこ)などに飛来し、住民の関心をひいた。その生態から、ペリカンを描いて屋上にかけると火災を防ぐという俗信も生まれ、また脂(あぶら)が聴覚障害の治療に役だつといって薬屋に売る者もあったという。ヨーロッパでもペリカンを医療に用いる風習があり、ドイツなどでは脂は足痛風、そこひ、聴覚障害に効くといわれた。
[小島瓔]
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