改訂新版 世界大百科事典 「ボケ」の意味・わかりやすい解説
ボケ (木瓜)
Japanese quince
Chaenomeles speciosa (Sweet) Nakai
高さ2~3mほどになるバラ科の落葉低木。中国原産。春に咲く淡紅色の花を観賞するため庭園に植えられ,また切花や盆栽にも多用される。互生する葉は楕円形から長楕円形で,細かい鋸歯があり,枝にはとげがある。花は径2~3cm,ときには5cmを超え,花弁は長楕円形から円形,おしべは多数,めしべの花柱は5本で,園芸品種には下部に毛を密生するものから無毛のものまである。楕円形で,長さ8cmほどの果実は,黄緑色から黄色に熟し,芳香があり〈木瓜(もつか)〉の名で消化器系の病気に使われ,また酒石酸やリンゴ酸を含み,香りもよいので砂糖煮や果実酒にも使われる。栽培品は花色に変異があり,展葉前に咲く花を観賞するが,花柱の毛の形質がさまざまで,果実のできにくいものが多く雑種起源とも考えられる。
ボケ属Chaenomeles(英名flowering quince)は,東アジアに数種分布しており,いずれも低木で,観賞用に栽植される。クサボケC.japonica (Thunb.) Lindl.(=C.maulei(T.Moore)Schneid.)(英名dwarf Japanese quince)は日本に分布する落葉小低木で,地下茎状にのびた茎から分枝萌芽し,株立ちになって広がる。朱赤色の花を春につけるが,晩秋から開花を始める性質がある。栽培品種にシロバナクサボケや八重咲きのものがある。栽培されるボケ類は,これらの種のほかに,中国大陸産の他の種間の雑種起源の品種も多く,日本でヨドボケ,カラボケ,ヒボケなどと呼ばれている品種群の多くも雑種起源と推定される。しかし栽培ボケ類の種と品種群については,さらに遺伝学的な研究が必要で,くわしいことはわかっていない。繁殖は挿木,株分けや接木によるが,種子によっても行える。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報