ボーヤイ(その他表記)Bolyai János

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボーヤイ」の意味・わかりやすい解説

ボーヤイ
Bolyai János

[生]1802.12.15. コロジュバル
[没]1860.1.27. モロシュバシャルヘイ
ハンガリー数学者。父ファルカスも数学者で,C.ガウス親交があった。 10歳から父の指導で微分積分学解析力学を勉強し,13歳までにマスターした。ウィーンの王立技術学校で勉強 (1818~22) し,その後技術将校として軍隊勤務 (22~33) 。彼は父の警告にもかかわらず,その影響を受け,ユークリッド幾何学の平行線公理の証明に関心をもち続けた。父はこの研究に失敗していた。彼は 1820年に証明は不可能との結論に達し,それ以後この公理とは独立幾何学 (非ユークリッド幾何学) の建設に没頭し,23年にほぼ完成させた。発表前にガウスがすでにかなりの部分を完成させていたことを知り,衝撃を受けたが,ガウスが公表しなかったので,父の著書とともに自分の論文を発表した (32) 。 48年には N.ロバチェフスキーが本質的に同じ幾何学の研究を 29年に発表していたことを知った。その後も数学の研究を続けたが,生存中彼の研究の重要性は認識されなかった。幼少よりバイオリンに習熱し,またフェンシング達人であった。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボーヤイ」の意味・わかりやすい解説

ボーヤイ
Bolyai János
生没年:1802-60

ハンガリーの数学者。ドイツ流にヨハン・ボリヤイJohann Bolyaiとも呼ばれる。現在はルーマニアに属するクルジュに生まれ,ティルグレレシュで育った。C.F.ガウスの友人で平行線論の研究者であった父ファルカシュFarkasより英才教育を受け,彼自身も平行線論に関心をもった。早熟の天才であり,1823年には非ユークリッド幾何学の成立を確信するに至り,それの本質的な部分を構成した。その後,青年士官として軍務に精励しながら25年に原稿を完成した。この原稿を32年に父の著書《勉学する青年を数学の初歩に導き入れる試み》の第1巻の付録として公刊した。これによって非ユークリッド幾何学の発見者の一人と目されている。
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百科事典マイペディア 「ボーヤイ」の意味・わかりやすい解説

ボーヤイ

ハンガリーの数学者,技術将校。幾何学者の父Bolyai Farkas〔1775-1856〕の平行線問題の研究を受け継ぎ,1825年ごろロバチェフスキーと独立に非ユークリッド幾何学の樹立に成功。26ページの小論文にまとめて,1832年刊行された父の著書の付録として発表。

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世界大百科事典(旧版)内のボーヤイの言及

【幾何学】より

…しかしユークリッド幾何学の先験性を信ずるあまり,彼らは第5公準を否定しうる命題とは考えることができなかった。第5公準を大胆にも否定して,それを〈直線外の1点を通りその直線に平行な直線は少なくとも2本ある〉という公準におきかえた幾何学を構成したのはN.I.ロバチェフスキーとボーヤイ J.で,それは1830年ころのことであった。当時の数学界の帝王C.F.ガウスもこのような幾何学の存在を信じ,それを非ユークリッド幾何学と呼んだが,騒々しい非難を恐れて未発表にしたことが後年になってわかった。…

【数学】より

…批判精神の盛んな時代となり,曲面の幾何学を考えているうちにガウスは,あるいは現象空間において,1直線外の1点を通りそれに平行な直線がただ一つではないこともありうるのではないかと思い,その仮定の上に成り立つ幾何学の研究を始めた。彼は世人の無理解をおそれてそれを発表しなかったが,同時代のボーヤイJ.やN.I.ロバチェフスキーはその研究を公表した。上の仮定のもとでは三角形の内角の和は2直角より小さくなるが,球面幾何学と多くの類似点をもつ幾何学が構成されることが示されたのである。…

【非ユークリッド幾何学】より

…この時代の最大の数学者C.F.ガウスもこのような考えをもち,かなりの成果を得ていたが,当時一世をふうびしたカント哲学の影響もあって,その研究を発表しなかった。第5公準以外の公準および公理はそのまま残し,第5公準に代わって〈平面上で,直線外の1点を通って,この直線と交わらない直線は少なくとも二つ存在する〉という公準を採用して,一つの幾何学を作り,勇敢にもそれを発表して,非ユークリッド幾何学発見の栄誉を得たのはN.I.ロバチェフスキーとボーヤイ J.で,それは1830年ころのことであった。この幾何学では,ユークリッド幾何学とはまったく趣を異にする次の定理が成り立つ。…

※「ボーヤイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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