日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポンスレ」の意味・わかりやすい解説
ポンスレ
ぽんすれ
Jean Victor Poncelet
(1788―1867)
フランスの数学者、機械工学者。メスに生まれ、1808年から理工科大学校(エコール・ポリテクニク)に学んだ。1812年、ナポレオンのロシア遠征に、工兵少尉として参加したが、ロシア軍の捕虜となり、2年間を収容所で過ごした。この間、収容所でなんらの参考書も用いずに、当時、おこりつつあった図形の射影的性質についての研究に没頭した。この思索の結果は、帰国後、『図形の射影的性質についての論述』Traité des propriétés projectives des figures(1822)として発表された。射影的性質というのは、いくつかの点が一直線上にあるとか、いくつかの直線が同一点を通るとかの性質を意味し、長さや角は問題にしないが、ポンスレは長さや角を用いずに射影的性質のみを研究して、射影幾何学の基礎を築いたのであった。
機械学の分野では、現代的な「仕事」の概念を提出したことで知られる。それ以前「機械的動力」「作用の量」などとよばれていた量を「機械的仕事」とよび、その定義にあたってキログラム・メートルkg・mの単位を用いた。パリ大学教授(1838~1848)、理工科大学校の校長(1848~1850)を務めた。
[矢野健太郎]