マグリブ

百科事典マイペディア 「マグリブ」の意味・わかりやすい解説

マグリブ

マグレブ〉とも。アラビア語で〈日の没する地〉(西)を意味し,マシュリク(日が昇る地,東アラブ)の対語チュニジア以西のアルジェリアモロッコにいたる北アフリカ地域・諸国をさす。リビアモーリタニア西サハラを含めることもある。北の地中海,西の大西洋は温暖な気候と雨をもたらし,南のサハラ砂漠熱風を運ぶ。地中海岸には東西にアトラス山脈が走り,その北側沿岸の平野は夏は高温・乾燥し冬は多雨で,穀物や果樹の栽培に適している。住民は,先住のベルベル系が7世紀以降にイスラム化・アラブ化した者が多い。ベルベル諸語を母語とする人々も居住する。サハラ以南のブラック・アフリカとのキャラバン交易の歴史もあり,南部では黒人系の住民が多い。マグリブは古来,地中海,ヨーロッパ世界とも深い関係をもつ。古代フェニキア,ギリシア,ローマ時代にはマグリブの住民はバルバロイ(野蛮人),この地はバルバリアと呼ばれ,これがベルベルの語源となった。7世紀以降のイスラム諸王朝の時代には,マグリブの王朝が11―13世紀にイベリア半島南部を支配したほか,レコンキスタでは大量のユダヤ教徒がマグリブに移住するなどした。1995年にはバルセロナで〈ヨーロッパ地中海諸国国際会議〉が開催され,2010年目標にマグリブ地域を含めた自由貿易地域創設について話し合われた。
→関連項目中東

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版 「マグリブ」の意味・わかりやすい解説

マグリブ【Maghrib】

マグリブとは,アラビア語で〈日が没する地〉あるいは〈西方〉を意味し,今日では,東方のアラブ諸国,つまりマシュリクに対して西方のアラブ諸国の呼び名である。マグレブとも呼ばれる。狭義には,かつてフランス領北アフリカとも呼ばれたチュニジア,アルジェリア,モロッコを含む北西アフリカを指すが,広義には,これにリビアを含める。場合によっては,さらに西アフリカのモーリタニアと旧スペイン領サハラ(西サハラ)まで含めることもあるが,それは,この地域の住民の多くが,アラブ系のイスラム教徒で,歴史的にも狭義のマグリブと共有する部分が少なくないからである。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「マグリブ」の解説

マグリブ
Maghrib

「日の没する土地」すなわち「西」を意味するアラビア語。具体的には今日のチュニジアアルジェリアモロッコの西方アラブ地域をさすが,リビアモーリタニアを含める場合もある。先住民ベルベル人。7世紀半ばアラブが侵入してイスラーム化した。フランスの植民地支配を受けたため,その影響も残している。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「マグリブ」の解説

マグリブ
Maghrib

アフリカ北西部のチュニジア・アルジェリア・モロッコ付近の地域
マグリブは「西」を意味するアラビア語。リビア以東とは異なった西アラブ圏を形成し,現在は3国が独立

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マグリブ」の意味・わかりやすい解説

マグリブ

マグレブ」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典内のマグリブの言及

【アラブ音楽】より

…かつてのイスラム帝国の範囲のうち,イランとトルコ,スペインを除き,アラブを主とする地域の音楽。この地域には,マシュリクと呼ばれる地域(おもにイラク,シリア,レバノン,ヨルダン,エジプト)と,マグリブと呼ばれる地域(モロッコ,アルジェリア,チュニジア,リビア)の二つの伝統がある。これらの国々には,イラクのクルド族やエジプトのヌビア人のような非アラブの人々,またキリスト教徒やユダヤ教徒などイスラム以外の伝統をもつ少数派の人々も住み,それぞれの民俗文化は多様である。…

【住居】より

…ヨーロッパ風の新市街の発展した今日でも,中庭型住居は中東地域に広く見られる。とくに北アフリカのマグリブ地方では,中庭型住居の密集する旧市街は〈メディナmadīna〉(アラビア語で〈都市〉の意味)と呼ばれ,伝統的な中東の集落形態をよく示している。このほか,乾燥地域を主とする中東においても,山岳地帯や大河の湿地帯といった自然条件の下にある地域があり,そこでも特異な自然条件に対応した居住形態が見られる。…

※「マグリブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

暖冬

冬期3カ月の平均気温が平年と比べて高い時が暖冬、低い時が寒冬。暖冬時には、日本付近は南海上の亜熱帯高気圧に覆われて、シベリア高気圧の張り出しが弱い。上層では偏西風が東西流型となり、寒気の南下が阻止され...

暖冬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android