マリア(英語表記)Maria; Mary

精選版 日本国語大辞典 「マリア」の意味・読み・例文・類語

マリア

(Maria)
[一] イエスキリストの母。ダビデ家系に属する女性ヨセフと婚約したが、聖霊によって身籠(みごも)り、イエスを生んだという。イエスの昇天後は、弟子たちの一団に加わった。
[二] マグダラ出身の女性。イエス‐キリストの弟子となる。復活のイエスに初めて出会った者として有名。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「マリア」の意味・読み・例文・類語

マリア(Maria)

イエスの母。新約聖書によれば、夫ヨセフと婚約中、天使ガブリエル告知を受け、聖霊により処女懐胎し、イエスを産んだ。カトリック教会および東方正教会において聖母として崇拝される。聖母マリア。サンタ=マリア。

マリア(Malia/Μαλιά)

ギリシャ南部、クレタ島港町。同島北岸、イラクリオン東方約30キロメートルに位置する。海岸保養地。郊外クレタ文明時代の宮殿遺跡があることで知られる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「マリア」の意味・わかりやすい解説

マリア

新約聖書中の女性。イエス・キリストの母。テオトコス(〈神の母〉),聖母,聖処女マドンナなどと尊称される。ヨアキムアンナの娘。ヨセフと婚約したが,聖霊によってイエスを懐胎,ベツレヘムの厩(うまや)でイエスを産んだ。イエスの死後は弟子ヨハネとともに生活,エルサレムまたはエペソで没,天に挙げられたという。諸聖人の筆頭たるマリアに関係するカトリック教会の祝日は数多いが,主要なものにはお告げの祝日(3月25日),聖母マリア被昇天の祝日(8月15日),聖母マリア無原罪の御みごもり(12月8日)がある。キリスト教美術では,重要な画題の一つとして多くの作品に登場,初期には神と人間の仲介者としての面が強調され,ルネサンス以降は人間的情愛に満ちた母としての面が強調された。代表的図像は,聖母子ピエタ聖家族聖告(受胎告知),聖母被昇天など。
→関連項目アベ・マリアオランス聖母被昇天の祝日マドンナマリア観音ルルド

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マリア」の意味・わかりやすい解説

マリア
Maria; Mary

イエス・キリストの母。普通「聖母マリア」と呼ばれる。夫ヨセフとともにダビデの家系とされる。マリアはヨセフと婚約していたが,結婚前に聖霊によって懐胎した。ヨセフは離縁を決意したが,主の使いが夢に現れ,懐胎は聖霊によるものであること,その子は救い主となるべきことを告げたので,眠りからさめるとマリアを妻とし,生れた子をイエスと名づけた (マタイ福音書1・18~25) 。マリアに対してはヨセフに先立ってすでに主の使い天使ガブリエルによる処女懐胎の告知がなされ,イエスと名づけられるべき子が「いと高き者の子」と称せられ,とこしえにヤコブ家を支配するといわれている (ルカ福音書1・26~33) 。聖書の記事からマリアの生涯について詳しく知ることはできないが,神学上は古来マリア論の名称のもとにキリスト論と密接な関係に立ちつつ救済論の主要な契機をなし,マリアの無原罪の御やどり,終生処女性,マリア崇敬,テオトコス (神の母) という称号,被昇天などについて論議がなされている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典 第2版 「マリア」の意味・わかりやすい解説

マリア【Mary】

語源はヘブライ語miryāmまたはアラム語のmaryāmで,〈ふとった女〉(すなわち〈美女〉)の意とされる。旧約聖書にはモーセとアロンの姉妹の名として出てくるし(《出エジプト記》15:20),新約聖書でもマリアの名をもつ人物はマグダラのマリア以下何人もいるが,一般にマリアといえばイエス・キリストの母,いわゆる聖母を指す。東方では4世紀以降,とくに431年のエフェソス公会議以降テオトコス(〈神を生んだ者〉の意)と呼ばれることが多く,他にパナギアPanagia(〈至聖なる女〉の意),メテル・テウMētēr Theou(〈神の母〉の意。

マリア【Mállia】

ミノス文明時代の宮殿址。クレタ島北岸の中部にあり,ミノス文明の他の諸宮殿と同じように,新宮殿が旧宮殿の上に重なり,中央中庭をかこむ諸室からなる一大集合体である。ただしここは海岸に近く,宮殿の主入口は海の方にあったらしく,この方向から舗装路が作られ,それに沿って高官の家々があった。宮殿の規模は約9000m2。中央中庭の北側と東側に柱廊があり敷石されていたが,今はただ土の広場である。この一隅に置かれている大きな円形の石盤は供物盤。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「マリア」の解説

マリア
Maria

イエスの母。ダヴィデ王の家系に属し,ヨセフと婚約したが,聖霊によって身重となり,イエスを生んだ。イエスの死後弟子たちの一団に加わった。キリスト教の発展とともに童貞無垢(むく)の聖母として崇敬された。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「マリア」の解説

マリア
Maria

イエスの母
『新約聖書』によれば,ヨセフと婚約中,聖霊により処女の身で懐胎 (かいたい) し,そののちヨセフと結婚してイエスを生んだ。イエスが十字架で処刑されたときはそれを見守り,イエスの昇天後は弟子たちの中に加わったという。古くから文学や絵画の題材にされた。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

デジタル大辞泉プラス 「マリア」の解説

マリア

日本のテレビドラマ。放映はTBS系列(2001年7月~9月)。全10回。脚本:橋本裕志ほか。音楽:S.E.N.S.。出演:浅野温子、岡江久美子、菊川怜ほか。全員が医療に携わる四人姉妹を主人公とするヒューマンドラマ。

マリア

2000年に台風委員会により制定された台風の国際名のひとつ。台風番号、第13号。米国による命名。女性の名前。

マリア

日本のポピュラー音楽。歌は日本のバンド、T-BOLAN。1994年発売。作詞・作曲:森友嵐士。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典内のマリアの言及

【アンナ】より

…マリアの母。その名は聖書には記されていないが,外典(ヤコブの原福音書)に,老夫ヨアキムJoachimとの間に神から一人娘マリアを授けられる物語が語られている。…

【色】より

…特に宗教や呪術は,しばしば特定の儀式や教義と結びついて,複雑な色彩の象徴体系を発達させた。例えば,ラファエロの数多くの聖母子像において,聖母マリアはほとんどつねに赤い上衣に青いマントをはおっているが,これは,赤は天の愛情を表し,青は天の真実を表すという考え方に基づく。ラファエロにかぎらず,チマブエ,ジョットからルネサンス期にかけてのイタリアの聖母表現は,特別の例外を別として,ほぼこの原則にのっとっている。…

【昇天】より

…また昇天日前の3日間を昇天前祈禱日Rogation Daysという。聖母マリアの昇天は〈聖母被昇天Assumption of the Virgin〉と呼び,その祝日は8月15日。イスラムの預言者ムハンマドの昇天については〈ミーラージュ〉の項目を参照されたい。…

【処女降誕】より

使徒信条のイエスに対する告白の中に述べられている句,〈主は聖霊によりてやどり,処女マリアより生まれ〉の内容を通常〈処女降誕〉と称し,キリスト者の信仰を表すものとされている。しかしこれについて聖書はマタイとルカ両福音書の,いわゆる降誕物語において語っているのみであって,マルコ,ヨハネ,パウロはまったくこれにふれていない。…

【女帝】より

…しかし〈帝国〉という正式のタイトルはなくても,イギリス・チューダー朝の名声を担ったエリザベス1世(在位1558‐1603)はイメージからすればまさに〈女帝〉に近い存在であった。ヨーロッパ史で〈女帝〉というタイトルをもち,またそれにふさわしい政治的手腕を発揮するのは,神聖ローマ帝国のマリア・テレジア(在位1740‐80)である。男子がなかった皇帝カール6世は長女マリア・テレジアにハプスブルク家の全領土を継承させるために〈国事詔書Pragmatische Sanktion〉を発し,列強の一応の承認をえた。…

【聖遺物】より

…例えば南イタリアのモンテガルガノには,大天使ミカエルが巌頭に残したという真紅のマントがあった。イエス・キリストやマリアについても同様だが,キリストのへその緒だけは地上に残されたはずと信じられた。十字軍が始まると東方から大量の聖遺物が流入する。…

【聖家族】より

…幼子イエスに最も近い親族。ヨセフ,マリアとイエスの3人(父,母,子)で構成される。《マタイによる福音書》2章13~23節では聖家族の〈エジプト逃避〉について,《ルカによる福音書》2章41~52節ではエジプトからの帰還後,ガリラヤ地方のナザレで,イエスが成人に達するまでを暮らした聖家族の様子について短く述べられている。…

【聖告】より

…大天使ガブリエルが神からつかわされて,ナザレの一処女マリアのもとに現れ,彼女が救世主(メシア)を産むこと(処女降誕)を告げる場面。〈受胎告知〉〈お告げ〉ともいう。…

【聖母子】より

…キリスト教美術の主題の一つで,幼児イエスを伴う聖母マリアの表現。崇拝や祈願の対象として,説話的場面から独立した表現がとられる。…

【ゾウ(象)】より

…象はまた帝王とその英知のシンボルとされ,知恵の女神ミネルウァ(ギリシアのアテナ)とも同一視され,象が引く車に乗るミネルウァが美術の主題となった。キリスト教世界では〈力〉と〈勝利〉の象徴とされ,またユニコーンや雄ジカとともに処女にだけ従順であるところからマリアの隠喩(いんゆ)に用いられ,塔または城を背負う象が〈マリアに庇護(ひご)される教会〉の寓意図となった。また象はつがいになるとき東方のエデンへいき,雌がマンドラゴラをとって雄に食べさせるといわれ,アダムとイブの隠喩あるいは人間の堕落の象徴ともされる。…

【手】より

…新約聖書の神も手を使ってみずからの神性を証明しようとする。処女マリアによるイエスの出産を疑ったサロメが,マリアの性器に指を入れて処女性を確かめたとたん,その手はやけただれ,イエスを抱いて神への信仰を誓ったら直ちに治癒したし(外典《ヤコブ原福音書》),幼児イエスは斧で切られ失血死した青年や,病死した赤ん坊に手を触れて生き返らせている(外典《トマスによるイエスの幼時物語》)。成人した後もイエスの手の奇跡は続き,死んだ少女の手をとって生き返らせたり(《マルコによる福音書》5:41~42),癩病患者を手で触れるだけで治したり(同1:41~42),棺にさわるだけでその中の死人をよみがえらせたりしている(《ルカによる福音書》7:14~15)。…

【テオトコス】より

…〈神を生んだ者〉〈神の母〉を意味する聖母マリアの尊称。日本の正教会では〈生神女(しようしんじよ)〉と訳す。…

【バラ(薔薇)】より

…例えばそれは美の化身であるから,そこから正・負の意味合いが,こもごも生じてくる。赤いバラは勝ち誇る美と愛欲の女神ビーナス(ギリシア神話のアフロディテ,ローマ神話のウェヌス)と容易に結びつくし,白いバラは聖母マリアの純潔と霊的な愛を表しえた。しかし,美しい花はうつろいやすく,人の世の愛もまたうつろいやすい。…

【ピエタ】より

…死せるイエス・キリストを膝に抱いて嘆き悲しむ聖母マリア像。14世紀初頭にドイツで創出された新しい図像で,埋葬する前にわが子を抱きしめて最後の別れを告げる聖母を,説話の時間的・空間的関係から切り離して独立像に仕立てたもの。…

【ベツレヘム】より

…【池田 裕】 イスラム時代にも,ベツレヘムの聖地としての性格は失われなかった。ムスリムの地理書や旅行書では,イエス生誕の地として,また比類なき降誕教会の美しさが称賛されるとともに,この地が,コーランにいう(19章23~26節)身ごもったマリアにナツメヤシの実が授けられた地であり,2代カリフ,ウマル1世がパレスティナ平定後に教会をモスクに改造して礼拝を行った地であることが述べられている。ベツレヘムを訪れる巡礼者は,ムスリムばかりでなく,西方のキリスト教徒の往来も盛んでにぎわった。…

【マドンナ】より

…聖母マリアの絵画または彫刻による像のこと。元来イタリア語で〈わが貴婦人〉の意。…

【マリア論】より

…カトリック神学の一部門。イエス・キリストの母マリアの役割を,キリストの受肉(神であるキリストが人間になること)と人類の罪の贖いと救済のなかで神学的に規定し,その意義をきわめようとするもの。この部門はいくつかの教会によって決定・定義された教義を出発点にして,マリアの役割をさらにくわしく解明し,その教義を展開する。…

【マリゴールド】より

… 近縁のヒメコウオウソウT.tenuifolia Cav.はとくに矮性で葉が小さく,小鉢植えとして利用できるが,栽培は比較的少ない。【浅山 英一】
[民俗]
 マリゴールドは聖母マリアの持物とされている。荒天や嵐に耐え,夏の太陽の下で花を開き,闇に対してはそれを閉じる姿が,聖母を彷彿(ほうふつ)させるためだという。…

【ユリ(百合)】より

…しかし栽培がやや難しいことなどから,観賞の歴史に比べて栽培・品種改良の歴史は短く,園芸花卉(かき)として広く扱われるようになったのは江戸時代後期になってからである。ヨーロッパでも古く紀元前より人とのかかわりが深く,とくに純白のマドンナ・リリーL.candidum L.(英名Madonna lily,Annunciation lily,Lent lily)はキリスト教が広がるにつれ,これと深く結びつき,処女マリアの貞節,純潔の象徴となり,キリスト教の儀式,祭日の聖花として使われてきた。観賞用としての用途のほか,東アジア地域では球根に苦みのない種類が食用として利用されてきた。…

【ヨセフ】より

…新約聖書中の人物で,マリアの夫,イエスの父。《マルコによる福音書》6章3節によるとイエス以外の息子ヤコブ,ヨセ,ユダ,シモンおよび何人かの娘があり,職業はおそらく木工専門の大工であった。…

※「マリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

インボイス

送り状。船荷証券,海上保険証券などとともに重要な船積み書類の一つで,売買契約の条件を履行したことを売主が買主に証明した書類。取引貨物の明細書ならびに計算書で,手形金額,保険価額算定の基礎となり,輸入貨...

インボイスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android