マリナー計画(読み)マリナーケイカク

デジタル大辞泉 「マリナー計画」の意味・読み・例文・類語

マリナー‐けいかく〔‐ケイクワク〕【マリナー計画】

MarinerNASA(米国航空宇宙局)の無人惑星探査機による金星火星水星探査計画。1962年から1973年にかけ、1号機から10号機まで計10機が打ち上げられた。
[補説]1・2・5・10号は金星探査を目的とし、10号は水星も探査した。ほかの3・4・6・7・8・9号は火星探査を目的とした。このうち、3号はロケットとの切り離し、8号は打ち上げに失敗した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリナー計画」の意味・わかりやすい解説

マリナー計画
まりなーけいかく

1960年代から1970年代初頭にかけて、アメリカが行った金星と火星の探査計画。打ち上げられたマリナーMariner探査機は1号から10号まで10機ある。このうち1号、2号、5号、および10号は金星探査を目的とし、10号は水星の探査をも行った。他の3号、4号、6号、7号、8号、9号はいずれも火星探査を目的とした。なお、同時代に、ソ連はアメリカの倍以上の数の金星探査機および火星探査機を打ち上げ、金星ではベネラ7~14号の着陸など多くが成功したが、火星ではほとんど失敗した。

 1号は1962年7月に打ち上げられたが、コースを外れ、指令により破壊された。2号は1か月後に打ち上げられ、金星から3万4800キロメートルの近傍通過に成功し、その大気圧、地表温度を測定し、磁場や放射線帯のないことを初めて明らかにした。1967年6月に打ち上げられた5号は、さらに近傍の4000キロメートルのところを通過し、大気がほとんど炭酸ガスからなることなどを明らかにした。1973年11月に打ち上げられた10号は金星のテレビ観測を初めて行い、金星上層大気の流れや擾乱(じょうらん)の動画を送信してきた。このあと10号は、金星の重力場を利用して軌道太陽の方向に曲げ、1974年3月29日、水星から690キロメートルのところを通過した。こののち、さらに6か月置きに2回、水星の近傍通過を行い、表面クレーター、大気、表面温度の観測などに初めて成功した。

 火星探査のマリナー3号は1964年11月に打ち上げられたが失敗し、同じ月に4号が打ち上げられ、火星から9600キロメートルの近傍通過に成功し、表面のクレーター、大気の成分と圧力などを観測し、磁場も放射能帯もないことを明らかにした。6号、7号は1969年2月と3月に打ち上げられ、いずれも火星から3千数百キロメートルの近傍通過に成功、多くの画像データを送ってきた。8号は失敗したが、9号は1971年5月に打ち上げられ、火星を回る探査機となり、火星とその衛星の7000枚にのぼる写真を送ってきた。これは地球以外の惑星の周りを回る軌道に入った最初の探査機である。

[輿石 肇・岩田 勉]


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百科事典マイペディア 「マリナー計画」の意味・わかりやすい解説

マリナー計画【マリナーけいかく】

米国のNASA(ナサ)が実施した一連の惑星探査計画。無人の探査機(名称マリナー)を火星,金星,水星に送り,写真撮影や大気,表面の調査を目的とした。1号(1962年7月打ち上げ,失敗),2号(1962年8月)と5号(1967年6月)は金星探査機で,2号は金星から3万5000km,5号は4000kmの所を通過し,観測資料を送信。3号(1964年11月,失敗),4号(同月),6号(1969年2月),7号(1969年3月),8号(1971年5月,失敗),9号(1971年5月)は火星探査機で,4号は1965年7月火星から約9600kmの所を通過,約20枚の写真の撮影と遠距離電送に成功し,火星表面にクレーターが存在することを発見。9号は1971年11月史上初の火星を回る人工衛星となり,火星の衛星フォボスとデイモスの写真も送信。1973年11月3日打上げの10号は1974年2月金星に最接近しテレビ面像を地球に送った後,同年3月には水星に690kmまで接近,約2000枚の写真を地球に送信した。→惑星探査機金星探査機火星探査機水星

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世界大百科事典 第2版 「マリナー計画」の意味・わかりやすい解説

マリナーけいかく【マリナー計画】

火星,金星,水星に無人探査機(名称マリナーMariner)を送り,これら惑星の写真撮影や大気および表面の調査を行うNASA(ナサ)の惑星探査計画。打上げロケットは1号から5号までがアトラス・アジェナ型,6号から10号まではアトラス・セントール型。1962年7月金星を目ざした1号の失敗の後,62年8月打ち上げられた2号は,同年12月,金星の近傍約3万5000kmを通過,金星が厚い雲に覆われ,磁場の兆候のないこと,金星表面温度が昼側と夜側でほとんど変化なく約430℃であるとのデータを送信した。

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