ミューズ(読み)みゅーず(英語表記)Muse

精選版 日本国語大辞典 「ミューズ」の意味・読み・例文・類語

ミューズ

〘名〙 (Muse) ギリシア神話アポロンの神に仕える学芸の神ムーサ英語名。現在は詩や音楽の神とされるが、古くは歴史天文学などを含む学芸一般の神とされていた。主神ゼウスムネモシュネの間に生まれた複数の神で、その数は一定しなかったが、ローマ時代にはそれぞれ分担を持った九女神と考えられ、それらを総称していう。英語で音楽をいう music美術館をいう museum などはこの語に由来する。
※修辞及華文(1879)〈菊池大麓訳〉詩文の術「ミウス即ち戯曲の女神」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「ミューズ」の意味・読み・例文・類語

ミューズ(Muse)

ギリシャ神話で、文芸学術・音楽・舞踏などをつかさどる女神ムーサの英語名。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミューズ」の意味・わかりやすい解説

ミューズ
みゅーず
Muse

ギリシア神話の詩と音楽の女神。ギリシア語でムーサMusa。その系譜と数については異伝が多い。一般的にはヘシオドスに従って、ゼウスとムネモシネ(記憶の女神)の娘で9人姉妹とされる。古くはテッサリアピエリア地方、そしてボイオティアヘリコン山崇拝中心地をもっていた。彼女たちは詩人や楽人に霊感を与えた反面、おごれる歌人を罰することも多かった。トラキアの楽人タミリスがミューズたちにも負けないと高言したとき、彼女たちは怒ってタミリスの視力を奪い、さらに歌と竪琴(たてごと)の技をも失わせた。また、マケドニアのペッラの王ピエロスの娘で歌自慢の九姉妹が彼女たちに挑戦したとき、女神たちは九姉妹を負かしたうえ、罰として彼女らをおしゃべりなカササギに変身させた。

 やがてミューズたちは音楽のみにとどまらず、広く文芸と学問全般の神とされるようになり、プラトンやアリストテレスの学校にはムーセイオン(ムーサの聖所)が設けられていた。今日のミュージアムmuseumという語は、アレクサンドリアの研究・教育機関であったムーセイオンに由来する。ローマ時代には、9人にそれぞれ機能分担させる試みもなされ、カッリオペは叙事詩の、メルポメネは悲劇の、クレイオは歴史の、テルプシコレは合唱や舞踊の、ウラニアは天文学の女神というように、その領域が定められた。

[中務哲郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミューズ」の意味・わかりやすい解説

ミューズ
Muse

ギリシア神話の女神たち。一般に詩神とされているが,実際は学芸全般を司った。ギリシア語名はムーサイ (単数形はムーサ) で,ミューズはその英語形。ゼウスが,ティタンの一人で記憶の女神ムネモシュネと交わってもうけた9姉妹で,クリオは歴史,エウテルペは抒情詩,タリアは喜劇,メルポメネは悲劇,テルプシコレは舞踊,エラトは恋愛詩,ポリュムニアは賛歌,ウラニアは天文学,カリオペは叙事詩の守護者とされるが,この分担については諸説があり,一定していない。オリュンポスでは,アポロンを指揮者とし,彼の竪琴に合せて歌舞を演じて神々を楽しませ,また地上の詩人たちは,ミューズの霊感を受け,その代弁者となって詩作すると信じられた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ミューズ」の解説

ミューズ
Mousai[ギリシア],Muses[英]

ギリシア神話の学芸の女神たち。ゼウスとムネモシュネ(記憶)の間の9人の娘。崇拝の中心地はピエリアとアスクラ。ミューズにささげられた研究と教育の機関がムーセイオンであった。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ミューズ」の解説

ミューズ

薬用石鹸のブランド名。1953年、ミツワ石鹸から固形石鹸が発売。殺菌・消毒効果がありおもに手洗い用に使用される。固形タイプのほかに液体タイプや泡タイプなどがある。現在の製造販売元はレキットベンキーザー・ジャパン。医薬部外品。

ミューズ

金魚の一種。埼玉県坂戸市の養魚家、川原やどるが東錦(あずまにしき)と土佐錦魚(とさきん)を交配した際に発生した黄色い突然変異種を固定化したもの。透明鱗で、体形は土佐錦魚に似る。

ミューズ

《MUSE》アメリカのジャズ・レーベル。1970年代前半にジョー・フィールズによって設立。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ミューズ」の解説

ミューズ
Muses

ギリシア神話で音楽・詩・劇・美術などをつかさどる9人の女神
ギリシア語のムーサイ(Mousai)の英語名。最高神ゼウスとムネモシュネ(ハルモニア)の娘。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

百科事典マイペディア 「ミューズ」の意味・わかりやすい解説

ミューズ

ギリシア神話の詩女神ムーサMousaの英語表記。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

とっさの日本語便利帳 「ミューズ」の解説

ミューズ

ゼウスの娘である九人の姉妹神。詩歌、音楽、哲学、天文、数学、舞踊など、人間のあらゆる知的活動を司る。ギリシャ語ではムーサ。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典内のミューズの言及

【音楽】より

…しかし,西欧の〈音楽〉に関する概念にもそれなりの変遷があった。英語のミュージックmusic,ドイツ語のムジークMusik,フランス語のミュジックmusique,イタリア語のムージカmusicaなどの語の共通の語源とされるのは,ギリシア語の〈ムシケmousikē〉であるが,それはそもそも〈ムーサMousa〉(英語でミューズMuse)として知られる女神たちのつかさどる技芸を意味し,その中には狭義の音芸術のほか,朗誦されるものとしての詩の芸術,舞踊など,リズムによって統合される各種の時間芸術が包含されていた。このように包括的な〈音楽〉の概念は,ヨーロッパ中世においては崩壊し,それに代わって思弁的な学として〈自由七科septem artes liberales〉の中に位置づけられる〈音楽〉と演奏行為を前提として実際に鳴り響く実践的な〈音楽〉の概念が生まれたが,後者は中世からルネサンスにかけてのポリフォニー音楽の発展につれて,しだいにリズム理論,音程理論などを内部に含む精緻な音の構築物へと進化した。…

【ムーサ】より

…複数形はムーサイMousai。英語ではミューズMuseといい,music(〈音楽〉),museum(〈博物館,美術館〉)の語源。その人数についてはさまざまの伝承があるが,一般にはヘシオドスの《神統記》に従い,ゼウスとムネモシュネ(〈記憶〉)を両親としてオリュンポス山麓のピエリアPieriaで生まれた9人の女神とされる。…

※「ミューズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

道頓堀川

大阪府中部,大阪市の中央部にある運河。東横堀川から中央区の南部を東西に流れて木津川にいたる。全長約 2.5km。慶長17(1612)年河内国久宝寺村の安井道頓が着工,道頓の死後は従弟の安井道卜(どうぼ...

道頓堀川の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android