アメリカの小説家。ドイツ系移民の孫としてニューヨークに生まれ,高校卒業までブルックリンの貧民街で生活した。父親は酒好きの仕立屋であったが,母親はきびしい清教徒的道徳の持主であった。1907年にニューヨーク市立大学に入ったがまもなく退学し,転々と職を変える。20年にウェスタン・ユニオン電報会社の雇用主任となり,さまざまな背景をもった12人の電報配達員たちをモデルにした処女作を書くが,これは未発表のままに終わった。そのころすでに結婚して一女を得ていたが,23年にブロードウェーでホール専属ダンサーであったジューン・イディス・スミスと出会い,熱烈な恋愛に陥り,翌年妻と別れてジューンと結婚し,彼女ともぐり酒場を経営しながら創作修業に打ち込んだ。28年に夫婦でヨーロッパを旅行し,人々の自由な生活様式に強くひかれ,2年後には単身フランスに渡って,貧困と闘いながら自己のパリ生活を主題にした《北回帰線》(1934)を執筆。ジューンと離婚のあと,《南回帰線》(1939)を書く。これはジューンとの愛とその破綻を外面的な主題にし,この女性との〈純粋な交合〉を通じて〈生のリズム〉を発見し,超現実主義的な象徴言語の駆使によって自己の精神史を神話化するに至った過程を内面的な主題にした自伝小説である。40年にアメリカに帰り,カリフォルニアに定住して《マルーシの巨像》(1941)をはじめ,文明批評の色彩の濃いエッセーを続々と発表する一方,《ばら色の十字架刑The Rosy Crucifixion》三部作,すなわち《セクサス》(1949),《プレクサス》(1953),《ネクサス》(1960)で再び自己の過去をドラマ化した。大胆な性描写を含む《北回帰線》以下の小説がアメリカで出版を許されたのは61年である。水彩画家としても知られ,《描くことは再び愛すること》(1968)など画集も出版されている。67年にはホキ・徳田と結婚して日本でも話題を呼んだ。
執筆者:飛田 茂雄
アメリカの劇作家。ニューヨークに生まれ,苦学したのちミシガン大学に入り,在学中から戯曲で賞を得ていた。ブロードウェーでの処女作は失敗したが,次の《みんなわが子》(1947初演。以下初演年)で成功した。第2次大戦中,欠陥軍用機を納入して事故を起こした実業家が,責任を感じて自殺するまでの過程で,個人と社会の連帯の問題を追求している。ついで《セールスマンの死》(1949)では,老セールスマンが仕事でも家庭でも失敗して自殺するまでを斬新な手法で描き,アメリカ演劇に一時期を画する名作とされた。《るつぼ》(1953)は,17世紀末のセーレムの魔女裁判に材をとり,狂信が良識をふみにじる恐怖を効果的に劇化した作品で,そのころマッカーシー旋風にまきこまれていた作者の状況を反映している。《橋からの眺め》(1955)は,身内の密入国者をかくまう沖仲仕の家庭での,愛欲と社会的連帯との葛藤がテーマである。長いブランクののち発表された《転落のあと》(1964)は,意識の流れをそのまま舞台に展開した実験的な作品で,ミラーのマリリン・モンローとの結婚生活(1956-61)の影響がうかがえる。64年の《ビシーでのできごと》と《代価》(1968)は,ともに〈罪のつぐない〉をテーマとしている。《天地創造その他》(1972)は聖書の現代的解釈で,のちミュージカルに改作された。《大主教の天井》(1977),《アメリカの時計》(1979),囚人たちのオーケストラをとりあげたテレビドラマ《しばしの演奏》(1984)などではさらに新しい題材と形式にとりくんだ。《北京での“セールスマン”》(1984)は,中国で《セールスマンの死》を演出した経験について書かれた作品である。ほかに小説《焦点》(1945刊),短編小説集,ルポルタージュ,ラジオドラマおよび評論集がある。
執筆者:西田 実
アメリカの白人バンド・リーダー,トロンボーン奏者。アイオワ州に生まれ,コロラド大学卒業後,1926-28年ベニー・グッドマンとともにベン・ポラック楽団で演奏,29-30年にはレッド・ニコルズとファイブ・ペニーズのレコーディングに,トロンボーン・プレーばかりでなくアレンジも提供する。34年ドーシー・ブラザーズ,35年レイ・ノーブルのアメリカン・オールスターズにアレンジャー兼プレーヤーとして参加,数々の名アレンジを提供して有名となった。37年自らの楽団を結成したが成功せず,翌年春バンドを再編成し,〈ミラー・サウンド〉として知られるバンド・スタイルで成功を収めた。しかし42年,人気の絶頂でバンドを解散,単身応召して空軍に入り,空軍バンドを率いてヨーロッパ戦線を慰問中,イギリスからパリへ向かう飛行機で行方不明となり,戦死と認定された。53年に伝記映画《グレン・ミラー物語》(アンソニー・マン監督,ジェームズ・スチュアート,ジューン・アリソン主演)が製作されている。代表作に,自ら作曲した《ムーンライト・セレナーデ》のほか,《真珠の首飾》《茶色の小瓶》などがある。
執筆者:油井 正一
アメリカの思想家,文学研究家。1930年代から初期ニューイングランド思想に関する業績を発表,第2次大戦後は人文科学の代表的学者としてアメリカ文化研究に多大の影響を与えた。ピューリタニズム研究では時代を画する貢献をなし,ロマン主義文学についても示唆的解釈を提示した。アメリカ文明の知的源流の探求を志し,好古趣味の対象とされていたピューリタニズムを課題にして1931年シカゴ大学で学位を得る。同年からハーバード大学で教鞭をとり,〈ピューリタン・ルネサンス〉と呼ばれるニューイングランド研究の高揚に寄与する。自由の発達を尺度とした進歩史観にとらわれず,人間の思想的営み自体を描くことにより,アメリカ文明の特質を明らかにした。代表作《ニューイングランド・マインド》2巻(1939,53)は〈インテレクチュアル・ヒストリー(思想文化史)〉叙述の模範とされる。
執筆者:大下 尚一
アメリカの作家。ペンシルベニア州に生まれ,アイオワ大学を卒業後,第2次大戦に参加,以後ニューヨークに定住して作家活動をつづけた。アマンダ・ベールAmanda Veilという筆名を用いたり,児童文学にも手を染めたりしたが,ハーレムに住む黒人少年の非行を克明に描いた《クール・ワールド》(1959)で一躍有名になった。風刺を秘めた冷酷な筆致で現代社会の退廃をあばくことを得意とし,つづいて《フラッシュ・タイムズ》(1962),《ハーレムの包囲》(1965)などを発表したが,夭逝した。
執筆者:大橋 吉之輔
アメリカの詩人。インディアナ州に生まれ,1856年,カリフォルニアの金鉱地帯に赴き,オレゴン州で雑多な職業につく。その後イギリスに渡り,《太平洋詩集》(1870),《シエラ・ネバダの歌》(1871)を発表するとともに,西部男の服装をした自己演技や,奇行によって〈フロンティアの詩人〉〈オレゴン州のバイロン〉と称された。カリフォルニア滞在中の野口米次郎は彼の知遇を得,その作品を日本に紹介した。
執筆者:渡辺 利雄
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…今日のミュージカルの芸術的価値については疑問があるが,大衆的ジャンルとしてとりわけ商業演劇においては大きな位置を占めている。 文学的戯曲の系譜では,第2次大戦後間もなく地位を確立させたT.ウィリアムズとA.ミラーが重要である。2人の作風は対照的で,前者がおおむねアメリカ南部を舞台にして個人の病的心理を描くのに対して,後者は個人を社会構造の中でとらえようとする。…
…アメリカの劇作家A.ミラーの代表作。1949年初演。…
…死後さまざまに〈伝説化〉されているモンローは,いわゆる〈大女優〉ではなかったが,《アスファルト・ジャングル》から《荒馬と女》にいたる11年間に,ハリウッドに2億ドルの収益をもたらした〈大スター〉であった。その実像は,劇作家アーサー・ミラー(モンローのために《荒馬と女》の脚本を書いた)に対する〈尊敬を恋愛と誤認〉し,ユダヤ教に改宗までして結婚したほど〈芸術と知性に対する英雄崇拝〉を抱いている純情な女であったともいわれる。また,〈マリリン・モンロー・プロ〉の《王子と踊る》(1957)の監督と共演を引き受けたローレンス・オリビエは,〈モンローこそは誇大宣伝とセンセーショナリズムの完全な犠牲者である〉と語っている。…
…ノリス的自然主義者スタインベックは《怒りの葡萄》(1939)で農民の窮境を叙事詩的に語り,コールドウェルは南部の貧しい白人を,J.T.ファレルは都会の不良少年を,黒人作家R.ライトは抑圧された黒人の姿を,それぞれなまなましく描いた。またT.ウルフやH.ミラーは自伝的作品によって原始的生命をもった個性への復帰を示した。 詩の分野では1912年に創刊された《ポエトリー》誌を中心に,E.L.マスターズやサンドバーグらのシカゴ・グループと呼ばれる詩人たちが中西部の民衆の心を口語的リズムで歌い出した。…
…糞便を嫌忌すべきものとして隠ぺいするのでなく,自然な排泄行為の結果として肯定し,それをおおらかに笑うのである。スカトロジックな傾向をもつH.ミラーは,《暗い春》(1936)のなかで次のように書く。性とともに排泄あるいは肛門など人間の〈動物的起源〉を隠ぺいしようとする偽善的良識を笑うために,スカトロジックなイメージを利用するのだ,と。…
…再臨派ともいう。キリスト教史のはじめからいつの時代にもみられる運動であるが,教派としては1831年,アメリカでミラーWilliam Miller(1782‐1849)というバプティストの農民説教者によって始められた運動にさかのぼる。ミラーは,聖書にもとづく計算によるとキリストの再臨は1843年と44年のあいだにおこると予言して多くの人々を恐怖におとしいれ,財産を売るものもでてきた。…
※「ミラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
群馬県のマスコットキャラクター。人間だと7歳ぐらいのポニーとの設定。1994年の第3回全国知的障害者スポーツ大会(ゆうあいピック群馬大会)で「ゆうまちゃん」として誕生。2008年にぐんまちゃんに改名...
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