日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムカシゴカイ」の意味・わかりやすい解説
ムカシゴカイ
むかしごかい / 昔沙蚕
[学] Saccocirus uchidai
環形動物門原始環虫綱ムカシゴカイ科に属する海産動物。北海道と岡山県以北の本州の海岸から知られ、干潮線の砂礫(されき)の間にすむ。体は糸状で細長く、体長は15~27ミリメートル、体幅0.3~0.4ミリメートルほどになる。環節は65~145節で、体色は黄褐色。頭部の前縁に2本の細長い感触手があり、それを盛んに動かす。2個の眼点がある。各体節の両側に小さいいぼ足があり、各剛毛束には4種類の剛毛がある。雌雄異体で、生殖腺(せん)は雌雄とも腸の左側に発達している。肛環節(こうかんせつ)は二またに分かれ、その内側に粘着性の葉状体があり、移動するときに役だてる。受精卵からトロコフォラ幼生になり、のちに変態して底生生活に入る。日本にはこの種のほかにイイジマムカシゴカイPolygordius ijimai、ユリネムカシゴカイP. pacificusなどがあり、潮間帯で普通にみられる。
[今島 実]