ムシゴケ(読み)むしごけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムシゴケ」の意味・わかりやすい解説

ムシゴケ
むしごけ
[学] Thamnolia vermicularis Ach.

地衣類の1種。不完全地衣類に分類される場合と、サルオガセ科の1種とされる場合がある。地衣体は白色または灰白色で、長さ3~7センチメートルぐらい。先端は多少細くなって、とがる。枝分れはなく、2~4ミリメートルの直径をもった中空円筒形をしている。高山地上に散在して生える。化学成分にタムノール酸を含む。ムシゴケによく似た種類にトキワムシゴケT. subuliformisがある。この種は、ムシゴケと同じような場所に生え、形態的にもほとんど区別がつかないが、乾燥させて長く保存しても、ムシゴケのようには変色しない。これは、地衣体にタムノール酸が含まれないためである。両種とも南北両半球に比較的広く分布するが、ムシゴケは南半球に多く、トキワムシゴケは北半球に多い。また、北半球温帯では両種がほぼ同じ割合で分布することが知られている。

[井上 浩]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「ムシゴケ」の意味・わかりやすい解説

ムシゴケ【Thamnolia vermicularis Ach.】

ハイマツ帯より上の高山の地上に生じる不完全地衣(イラスト)。南北両半球の高山帯に広く分布する。地衣体は白色,管状で多少屈曲してカイチュウ状となり,先端はとがり根はない。共生藻緑藻。子器はまだ発見されていない。近縁のトキワムシゴケT.subuliformis (Ehrh.) W.Culb.とは主として含有成分の差によって区別されるが,ムシゴケは北半球に,トキワムシゴケは南半球に多い。【柏谷 博之】

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