ムシトリスミレ
むしとりすみれ / 虫取菫
common butterwort
[学] Pinguicula vulgaris L.
タヌキモ科(APG分類:タヌキモ科)の多年草。葉は根生し、長さ3~5センチメートル、卵状長楕円(ちょうだえん)形で縁(へり)は内側に巻き、表面に粘液を分泌する短い腺毛(せんもう)を密布する。7~8月、高さ5~15センチメートルの花茎の先に、紫色の唇形花を1個横向きに開く。食虫植物として知られ、葉の表面に小動物が触れると閉じて小動物を巻き込み、粘液で溶かし、消化する。山地から高山の湿った岩壁や草原に生え、四国、中部地方以北の本州、北海道から周北極地方に広く分布する。名は、花がスミレに似ており、食虫植物であることによる。
ムシトリスミレ属は葉は全縁でロゼット状に根生する。世界に約80種、日本には本種とコウシンソウが分布する。
[高橋秀男 2021年10月20日]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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「ムシトリスミレ」の意味・わかりやすい解説
ムシトリスミレ
北海道,本州,四国の高山〜亜高山の岩地や草地にはえるタヌキモ科の多年生食虫植物。葉は根生し,数枚集まってロゼットをつくり,狭卵形で柔らかく,上面には短い腺毛があって虫などを粘着する。夏,葉間から10cm内外の花茎を立て,頂にスミレに似た唇形(しんけい)淡紫色の花をつける。花は横向きに咲き,径約1.5cm。近縁のコウシンソウは関東地方北部の深山の岩壁にはえ,全体に小さく,花茎はときに2本に分かれる。花は小さく,果実時には花柄が曲がって岩壁に接し,種子を散らす。最初,栃木県庚申山(こうしんざん)でみつかったのでこの名がある。
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ムシトリスミレ【butterwort】
日本~北アメリカ北部の高山から寒帯で湿った崖地または湿地に自生し,スミレに似た花をつけるタヌキモ科の多年生食虫植物(イラスト)。葉は長楕円形で,縁がそり上がり,長さ2~5.5cm,幅7~18mm,根もとで数枚が展開してロゼットをつくる。葉の表面と花茎に多数の腺毛と腺組織があり,粘液を出してとりもち式に小動物を捕らえる。消化酵素はアミラーゼ,プロテアーゼなどであり,獲物を消化吸収する。夏,長さ2~20cmの花茎を3~8本出し,頂部に紫色~白色の1花をつける。
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