ムジナモ(英語表記)waterwheel plant
Aldrovanda vesiculosa L.

改訂新版 世界大百科事典 「ムジナモ」の意味・わかりやすい解説

ムジナモ
waterwheel plant
Aldrovanda vesiculosa L.

池や沼に浮遊し,二枚貝状に開いた葉身を閉じて水生小動物を捕食する,モウセンゴケ科の1属1種の多年生食虫植物。根はなく,茎は春から秋に伸び続け,所々で分枝するが,冬季,先端のみが鱗片葉でおおわれて,球状となって越冬する。夏季の栄養組織形態が〈貉(むじな)の尾〉に似ているところから,和名がついた。葉は直径1.5~2cmに輪生し,長さ5~7mm,幅8~10mm。捕虫葉内側には,感覚組織を基部にもつ感覚毛が約40本あり,獲物が触れると1/50秒ほどの速さで閉合運動を完了し,続いて狭窄(きようさく)運動をして獲物に腺細胞が密着し,消化活動をしやすいようにする。分泌する消化酵素は,プロテアーゼなどである。夏,葉腋(ようえき)部から花茎を出し,頂部,水上に白色花を1個つける。萼片花弁,おしべ,花柱はそれぞれ5個ある。受粉後,花茎は水中にもぐる。ヨーロッパから東南アジア,オーストラリア,日本に広く分布するが,日本では稀産種である。
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百科事典マイペディア 「ムジナモ」の意味・わかりやすい解説

ムジナモ

モウセンゴケ科の食虫植物。多年草で,ユーラシアアフリカに広く分布するが,日本ではきわめてまれ。沼や小川の水中に浮かんで生活する。茎は長さ6〜20cm,少数の枝を出し,1節に6〜8枚の葉を輪生,葉柄はくさび形で上方に数本の毛があり,葉身は袋状で二枚貝のように開閉し,水中のミジンコなどの小動物をとらえ消化する。7〜8月,葉腋から水面花柄を出し,頂に1個の淡緑色の5弁花を開き,1日でしぼむ。花後花柄が曲がり,果実は水中で熟す。

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