サトイモ科ホウライショウ属Monsteraの常緑多年草で,観葉植物として栽培される。この属は熱帯アメリカに25種以上あり,その多くはつる性となる。日本でモンステラの名で呼ばれているものは,ホウライショウ(蓬萊蕉)M.deliciosa Liebm.(英名ceriman)であることが多く,デンシンラン(電信蘭)とも呼ばれる。革質で光沢のある楕円形の葉は長さ40~90cmになり,深く切れ込み,中肋近くに1~4列の楕円形の穴があく。仏焰苞(ぶつえんほう)は乳白色の多肉質で,長さ20~30cmになる。肉穂花序は長さ20~25cmで,約1年で熟し,強い芳香と甘い風味があり,食用となる。しかし,未熟果はシュウ酸カルシウムの結晶があって,のどを刺激する。明治時代に導入され,モンステラの代表種であった。最近はヒメモンステラM.adansonii Schottが多く栽培されている。これは,ホウライショウに形態が似ているが,葉が左右対称でなく,中肋近くの穴は1列で,仏焰苞は白色などの点で異なる。葉柄も短く,全体に小型で,分枝性もよく,観葉鉢物として優れている。昔の学名M.pertusum De Vrieseから,花市場では,ペッサムと呼ばれることが多い。どちらも黄白色の斑(ふ)が入る園芸品種がある。マドカズラM.friedrichstahlii Schottは小型のつる性種で,葉は長さ20cmほどの長卵形で,先は細くとがり,中肋の両側に長楕円形の穴があく。葉肉は薄い。挿木,茎伏せでふやす。日照不足,乾燥,低温にもよく耐え,5℃くらいで越冬する。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
サトイモ科(APG分類:サトイモ科)のつる植物。熱帯アメリカに30種ほど自生する。代表的な種はメキシコなど中央アメリカ原産のM. deliciosa Liebm.で、和名をホウライショウ(鳳莱蕉)と称する。鳳莱蕉の名はパイナップルの漢字名鳳梨とバナナの漢字名香蕉に由来すると思われるが、不明。観葉植物として温室に植えるが、熱帯では果実を食用にするため栽培する。茎は太く、節間から太く長い気根を下垂し、また、他の樹木などに付着して茎を支え、はい上る。葉は革質で円形、長さ50~80センチメートル、粗く羽裂し、ところどころに穴がある。肉穂花序は黄白色の仏炎包(ぶつえんほう)に包まれ、長さ約25センチメートル、熟すと芳香を放ち、パイナップルやバナナのような風味がある。繁殖は、茎を2~3節に切ってミズゴケに伏せる。5℃で越冬する。
[松岡清久 2022年1月21日]
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