ヤシ酒(読み)やしざけ

改訂新版 世界大百科事典 「ヤシ酒」の意味・わかりやすい解説

ヤシ(椰子)酒 (やしざけ)

ヤシの若い花序(花をつける芽)の柄の切口から出る樹液発酵させた酒。アルコール分は4%(容量百分比)前後である。乾季の少ないアフリカの熱帯雨林地帯に生えるアブラヤシの酒エーム,スリランカマレーシアなどのココヤシの酒トディなどがある。原始の酒としてその歴史は古く,元代に編纂された《宋史》に麴蘖(きくげつ)を用いない酒として花酒,蜜酒とともに椰子酒,檳榔(びんろう)酒の名があげられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤシ酒」の意味・わかりやすい解説

やし酒
やしざけ

ヤシ類の樹液を発酵させてつくる酒。フィリピンではツバtuba、マレーシアではトデイtoddy、インドネシアではトワクtuakという。ココヤシ、ニッパヤシ、ブリチヤシなどの花柄先端を切って出る樹液を竹筒やひょうたんにためる。樹液には15%ぐらいの糖分を含むから、翌日までに発酵が始まり酒になっているが、なお4~5日発酵させて飲む。貯蔵することもある。アルコール分は4~8%くらいである。

[秋山裕一]

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栄養・生化学辞典 「ヤシ酒」の解説

ヤシ酒

 トデー,タオリプオタなどという名称でよばれるヤシを原料とする酒.ヤシの若い花こうを切って得られる甘みのある汁を自然発酵させて作る.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヤシ酒の言及

【ココ椰子】より

…花房を切り,切口からしみ出る甘い樹液は飲用とされる。またそれを発酵させたものはヤシ酒や酢となる。ヤシ酒はとくにミクロネシアで重要な嗜好品である。…

【嗜好品】より

… 未開社会では〈酔い〉は何か神聖なものと考えられ,超自然的な存在に結びつく仲介物とみなされている。アフリカとインドにおけるヒエ酒やヤシ酒,地中海諸国のブドウ酒,東アジア諸民族の米酒はアルコール性飲料の代表的なものであるが,中央アジアのトルコ系,モンゴル系の諸民族は,古代のスキタイ族やサルマート族のように,ウマの乳を発酵させたクミズを飲む。南アメリカでは酒類をつくるとき,発酵をうながすため原料をあらかじめ嚙んで,つぼの中にはき,それに水をそそいで酒をつくる風習があり,トウモロコシやマンディオカ(キャッサバ)からこのようにして酒をつくる。…

※「ヤシ酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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