改訂新版 世界大百科事典 「ヤマ」の意味・わかりやすい解説
ヤマ
Yama
インドの神格。その起源は古く,インド・イラン未分離の時代にまでさかのぼる。《リグ・ベーダ》においてヤマはビバスバットの子と呼ばれ,ゾロアスター教の聖典アベスターにおけるビーバフバントの子イマに相当する。《リグ・ベーダ》におけるヤマは死の道を最初に発見した者で,祖霊の世界の王であり,その世界は楽園であるとされる。またその楽園に通じる死者の道には2匹の犬がいて番をするといわれる。《リグ・ベーダ》においては,死者の罪の判定がヤマの職能の一つとされたとはいいがたいが,時を経るにつれその傾向を示すようになる。ヤマにはヤミーという双生児の妹があり,《リグ・ベーダ》には両者の近親相姦を暗に示す賛歌が載せられている。ヤマの兄弟には人間の祖とされるマヌがある。後世ビバスバットは太陽神と同一視され,ヒンドゥー教の聖典の一つであるプラーナにはヤマなどの誕生をめぐる興味深い神話が語られている。ヤマは仏教とともに中国に伝えられ,夜摩,閻魔(えんま)などと音写された。
→閻魔
執筆者:松濤 誠達
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報