日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ラ・トゥール(Georges de La Tour)
らとぅーる
Georges de La Tour
(1593―1652)
フランスの画家。ロレーヌ地方のビク・シュル・セイユにパン屋の息子として生まれる。1610~1616年ころ、ローマで絵の修業をしたと考えられる。1620年にロレーヌ地方のリュネビルに居を定めて活躍を始め、ロレーヌ公アンリ2世の宮廷画家となるが、フランス国王ルイ13世などからも注文を受けた。初期には風俗画が多く、登場人物の心理的緊張感を主題とした『クラブのエースを持ついかさま師』(フォート・ワース、キンベル美術館)、『女占師(うらないし)』(ニューヨーク、メトロポリタン美術館)などがある。後期にはカラバッジョからの影響を発展させて、独特な宗教画の様式を確立し、ろうそくの光を中心とした強い明暗の対照、深い精神性と臨場感を特色とする。『大工の聖ヨセフ』(1645ころ、ルーブル美術館)、『聖セバスチャン』(1650ころ、ルーブル美術館)など。リュネビルで没。死後その名は忘れ去られ、作品だけが他の画家の名で知られていたが、20世紀前半にようやく復活した。
[宮崎克己]