日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラ・ブリュイエール」の意味・わかりやすい解説
ラ・ブリュイエール
らぶりゅいえーる
Jean de La Bruyère
(1645―1696)
フランスのモラリスト(人間探究家)。パリに生まれる。弁護士の資格を得たが、おそらく一度も法廷に立たなかった。叔父の遺産でカーン市の税務局収税官の職を買ったが、その職務につくこともなく、パリで気ままな独身生活を送るうち、司教ボシュエの紹介で、当時ブルボン王家傍系中最大の権勢を誇るコンデ大公Le Grand Condé(1621―1686)の孫の家庭教師に任ぜられた。内気で引っ込み思案なこの市井の読書人は、一転して大貴族の生活場裏に身を置くこととなり、観察と思索の好個の環境にあって書きつづったのが彼の主著『人さまざま』(1688)であり、以後1696年の第9版まで増補が重ねられた。「女性について」「宮廷について」などの16章に分かれているが、その構成はかなり自由で、短く辛辣(しんらつ)な警句もあれば、色彩豊かな肖像(典型的人物の描写)もあって、変化に富む。また「新旧論争」の渦中にあり、自らは旧派(古代人派)にくみしながらも、『人さまざま』のうちに散見する政治的風刺はきたるべき18世紀の文学を予告する。
[山田 2015年6月17日]