リチウム(読み)りちうむ(英語表記)lithium

精選版 日本国語大辞典 「リチウム」の意味・読み・例文・類語

リチウム

〘名〙 (Lithium) アルカリ金属元素一つ元素記号 Li 原子番号三。原子量六・九四一。銀白色の柔らかい金属。金属中で最も軽い。常温でも水を分解して水素を発生する。炎色反応紅色合金への添加剤花火材料などに利用される。リシウム。〔舎密開宗(1837‐47)〕

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デジタル大辞泉 「リチウム」の意味・読み・例文・類語

リチウム(lithium)

アルカリ金属元素の一。単体は銀白色で軟らかく、金属中最も軽く、比重0.534。水とは反応し水素を発生。炎色反応は紅色。鉱石中から発見され、名は石の意のギリシャ語lithosにちなむ。元素記号Li 原子番号3。原子量6.941。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リチウム」の意味・わかりやすい解説

リチウム
りちうむ
lithium

周期表第1族に属し、アルカリ金属元素の一つ。

歴史

リチウムを含む鉱石、葉長石リチア輝石は、1790年から1800年にかけて、スウェーデンのウテUtö島でアンドラダJose de Andradaによって発見されている。この葉長石の中に新しいアルカリ金属元素が含まれていることをみいだしたのはスウェーデンのアルフェドソンJohan August Arfvedson(1792―1841)で、1817年であった。リチウムの名は、ギリシア語の石lithosにちなんで、アルフェドソンの指導者ベルツェリウスによって提案された。ナトリウムカリウムが植物関連物質からみいだされたのに対し、リチウムが鉱石からみいだされたことに基づいている。1818年W・TブランデBrandéとH・デービーは酸化リチウムを電解して少量のリチウム金属を単離しているが、物性の測定ができるほどの量を初めて得たのは、ドイツのブンゼンとイギリスのマチーセンAugustus Mathiessen(1831―1870)で、塩化リチウムの融解電解によって1855年に成功している。

[鳥居泰男]

存在

岩石や天然水の中に微量ではあるが広く分布している。動植物界たとえば海藻、タバコ、コーヒー、牛乳、血液などにも存在が認められる。工業資源として重要な鉱石はリチア輝石AlLi(SiO3)2、紅雲母(うんも)AlKLi2(FeOH)2(Si4O10)、葉長石AlLi(Si2O5)2、アンブリゴ石AlPO4・LiFなどである。天然塩水で数百ppmを含むものがアメリカのカリフォルニア州、ネバダ州などでみいだされており、資源として注目される。

[鳥居泰男]

製法

原鉱を硫酸、炭酸ナトリウム、塩酸などで処理して塩化リチウムとし、これに塩化カリウムを加えて融解電解することによって製造される。ピリジン、エタノール(エチルアルコール)、アセトンなどの中で塩化リチウムを電解する方法も行われる。

[鳥居泰男]

性質と用途

銀白色の軟らかい金属で、全金属元素中もっとも軽い。アルカリ金属元素の典型的な性質をもっていると同時に、ナトリウム以下とはかなり異なった性格を示し、むしろ、周期表で対角関係にあるマグネシウムに似た点も多い。乾燥空気中では安定でほとんど酸化されないが、熱すれば強い光を放って反応し酸化物Li2Oを与える(一般のアルカリ金属は過酸化物、超酸化物を与える)。

  4Li+O2→2Li2O
 室温でも窒素と反応して窒化物Li3Nを生成する(他のアルカリ金属は直接反応しない)。室温で水を分解して水素を発生するが、カリウムやナトリウムほど激しく作用しない。

  2Li+2H2O→2LiOH+H2
 高温でガラスと反応するので蒸留精製には鉄製容器が必要である。赤色の炎色反応を示す。この炎色反応を初めて観察したのは、ドイツのC・G・グメーリンであった(1818)。

 金属として原子炉材料、有機合成の重合触媒などに用いられるほか、各種合金の添加剤、鋼材、合金の脱酸剤などとして最近その重要性が増している。

[鳥居泰男]


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化学辞典 第2版 「リチウム」の解説

リチウム
リチウム
lithium

Li.原子番号3の元素.電子配置1s22s1の周期表1族元素.原子量6.94.安定同位体 6Li,7Li,ほかに3種類の放射性同位体がある.1817年J. Berzelius(ベルセリウス)の弟子J.A. Arfwedsonがペタル石(petalite,LiAlSi4O10)中に発見し,Berzeliusがギリシア語の岩石λιθο(lithos)から命名した.宇田川榕菴は天保8年(1837年)出版の「舎密開宗」で,利知烏母(リチウム)と記載している.
1855年R.W.E. Bunsen(ブンゼン)とA. Mathiessenが塩化物の融解電解によりはじめて金属を遊離した.天然には,リチア雲母,ペダル石,リチア石などの鉱石や岩石中に広く分布する.地殻中の存在度13 ppm.最大資源国はボリビアで推定埋蔵量540万t.次いでチリ300万t.おもに炭酸リチウムとして輸入され,2006年度の輸入量は14000 t で,約1万t がチリから.塩化リチウムの融解電解で得られる.真空蒸留により精製する.銀白色の軟らかい金属.体心立方格子構造.格子定数a = 0.350 nm(20 ℃).融点180.5 ℃,沸点1350 ℃.密度0.534 g cm-3(20 ℃).第一イオン化エネルギー5.390 eV.炎色反応は深紅色.常温,乾いた空気中では酸化されない.高温では酸素,窒素,水素,ハロゲン,硫黄,炭素,ケイ素などと直接化合する.常温の水や酸と反応して水素を発生し,水酸化物や塩を生じる.化合物においてはつねに酸化数1をとる.リチウムやリチウム化合物の化学的性質は,マグネシウムに似ている点が多い.これは Li が Mg2+ とほぼ同じ大きさをもつためである.
重合触媒(アルミニウム-リチウム合金),合金添加物,リチウムイオン電池用電極材,半導体材料,脱酸剤として用いられる.リチウムイオン電池用が最大・最重要用途である.[CAS 7439-93-2]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リチウム」の意味・わかりやすい解説

リチウム
lithium

元素記号 Li ,原子番号3,原子量 6.941。周期表1族,アルカリ金属の1つ。主要鉱石にはリシア輝石,リシア雲母,ペタル石などがある。地殻に広く分布し,地殻平均含有量 20ppm,海水中の存在量 0.17 mg/l 。 1817年スウェーデンの化学者 J.アルフベッドソンにより葉長石中に発見された。単体は銀白色の軟質金属で,融点 179℃。比重 0.534で固体の単体中いちばん軽い。水と反応し水素を発生する。室温で表面が酸化され,特に湿った空気中では激しく酸化される。 200℃に加熱すると強い白色の炎をあげて燃える。適当な条件下に直接反応して水素化物,窒化物,硫化物をつくる。炎色反応は深紅色。原子炉の制御棒,触媒,合金,還元剤などとして広く利用されているほか,電極にリチウムを使用したリチウム電池は寿命が長く小型ですぐれている。

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百科事典マイペディア 「リチウム」の意味・わかりやすい解説

リチウム

元素記号はLi。原子番号3,原子量6.938〜6.997。融点180.54℃,沸点1347℃。アルカリ金属元素の一つ。1817年スウェーデンのアルフェドソンが発見。銀白色の柔らかい金属,固体の単体中最も軽く,乾燥した空気中では安定。200℃以上では燃えて酸化物となる。水と反応して水素を発生,希酸によく溶ける。アルカリ金属ではあるが反応性はナトリウム,カリウムほど激しくない。炎色反応は深紅色。金属としてはリチウム電池,重合触媒などとして用いられ,各種合金の添加物,脱酸剤ともされる。岩石中には微量であるが広く分布。主要鉱石はリチア雲母,リチア輝石など。
→関連項目原子爆弾

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世界大百科事典 第2版 「リチウム」の意味・わかりやすい解説

リチウム【lithium】

周期表元素記号=Li 原子番号=3原子量=6.941±2地殻中の存在度=20ppm(31位)安定核種存在比 6Li=7.42%,7Li=92.58%融点=179℃ 沸点=1317℃比重=0.534電子配置=[He]2s1 おもな酸化数=I周期表第IA族に属するアルカリ金属元素の一つ。1817年スウェーデンのアルフェドソンJohan August Arfwedson(1792‐1841)が葉長石petaliteから発見した。

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栄養・生化学辞典 「リチウム」の解説

リチウム

 原子番号3,原子量6.941,元素記号Li,1族(旧Ia族)の元素で,アルカリ金属に属する.必須元素ではない.

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世界大百科事典内のリチウムの言及

【軽金属工業】より

…金属工業のうち,比重の比較的小さい金属,すなわち軽金属を扱う工業。軽金属には,アルミニウム,マグネシウム,チタン,ベリリウム,リチウムなどがあるが,とくにアルミニウムは鉄に次いで生産量が多く,軽金属の代表であるので,ここではアルミニウム工業を中心に述べる。
[アルミニウム]
 原鉱石(ボーキサイトなど)からアルミナAl2O3を製造する化学的工程と,その電解工程(アルミ1t当り約1万5000kWhを要する)の2過程を要する高度な電気化学工業で,その発達には苛性ソーダ,フッ化物,電力など関連工業の発達,高品位の原鉱石ボーキサイト(Al2O350%以上含有)と,豊富で安価な発電地帯を有することが条件となる。…

※「リチウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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