日本大百科全書(ニッポニカ) 「リポタンパク質」の意味・わかりやすい解説
リポタンパク質
りぽたんぱくしつ
lipoprotein
脂質を含む複合タンパク質で、血漿(けっしょう)や卵黄、牛乳などにある水溶性のものと、細胞膜、ミトコンドリア膜、ミエリン構造膜(細菌細胞膜)などの不溶性(構造性)のものとがある。血漿中の脂質は単独では存在せず、すべて特定のタンパク質と非共有結合で会合して存在している。リポタンパク質が水系で存在するためには静電気的結合、疎水結合、ファン・デル・ワールス力(分子間引力)または分散相互作用、分極相互作用、水素結合、二価金属による極性基間結合などに依存している。血漿のリポタンパク質は脂質の運搬を担い、血漿タンパク質の約12%を占める。超遠心分離によって比重の低いものから順に(1)カイロミクロン(乳糜(にゅうび)chylomicron、0.95g/ml)、(2)VLDL(超低密度リポタンパク質very low density lipoprotein、0.95~1.006g/ml)、直径30~75ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、(3)LDL(低密度リポタンパク質low density lipoprotein、1.019~1.063g/ml)、(4)HDL(高密度リポタンパク質high density lipoprotein、1.063~1.210g/ml)、(5)VHDL(超高密度リポタンパク質very high density lipoprotein、1.21~1.25g/ml)に分けられる。脂質の含量は40~90%と多く、代表的なものはグリセリド、コレステロール、リン脂質などである。LDLはいわゆる悪玉コレステロールを運ぶもので、分子量約250万の球状である。外側の殻はリン脂質、遊離コレステロール、大きなタンパク質(コレステロールを付着させる働きをもつアポリポタンパク質B、略称アポB)からなり、内側の核は約5000分子のコレステロールエステルからなる。肝臓などの細胞表面にはアポBを認識する受容体があり、これにLDLが結合して細胞内に取り込まれ、分子量約6~7万の糖タンパク質であるリポタンパク質リパーゼにより代謝される。
[野村晃司]
『日本生化学会編『膜脂質と血漿リポタンパク質』下(1986・東京化学同人)』▽『日本生化学会編『新・生化学実験講座4 脂質(1)中性脂質とリポタンパク質』(1993・東京化学同人)』▽『David J. Williams著、田島陽太郎他訳『イラスト 生化学の要点』(1994・西村書店)』▽『川嵜敏祐・井上圭三・日本生化学会編『糖と脂質の生物学』(2001・共立出版)』