リモートセンシング(読み)りもーとせんしんぐ

デジタル大辞泉 「リモートセンシング」の意味・読み・例文・類語

リモート‐センシング(remote sensing)

人工衛星飛行機などにより、遠く離れた対象観測を行うこと。主に地上から反射・放射される種々の波長電磁波を測定し、コンピューターで処理して地表状態映像としてとらえることを指す。遠隔測定遠隔計測遠隔探査

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知恵蔵 「リモートセンシング」の解説

リモートセンシング

航空機や人工衛星などを使って、離れた位置から地表や大気を観測すること、もしくはそれらの遠隔操作による計測の手法や技術気象観測などの公益防災目的、植生分布調査など研究目的のほか、土地利用や穀物生産量予測などの産業・民生分野でも広く利用され、衛星リモートセンシングのサービスを提供する企業も増えてきている。なお、ドローンを使った低高度の航空写真撮影(空撮)や、音波を使ったソナーや魚群探知機、宇宙探査機の運用なども広い意味ではリモートセンシングの一種といえる。
リモートセンシングの利用が進んだのは、1914年に始まる第一次世界大戦のころからである。当時、兵器として航空機が戦線に投入されるとともに、偵察用途で空撮技術が大きく発展した。空撮は軍事目的や地図作成の補助などが主な用途だったが、赤外線やマイクロ波など観測技術の進歩や人工衛星の発展などにより、気象観測や防災、資源調査や海洋調査など利用目的や観測範囲が飛躍的に広がっている。72年には米国で世界初の非軍事衛星(後のランドサット)の運用が始まり、近年では軍事衛星に迫るような解像度を持つ商用衛星や低コストの小型衛星を連携運用する技術も普及してきた。これらの地球観測衛星により、様々な観点で広い範囲を対象に長期間継続して観測することが可能になった。衛星に搭載した測定器(センサー)で、電波・赤外線・可視光などにより地球を調べることをその目的としていることから、リモートセンシング衛星とも呼ばれる。対象物の状態を調べるには、対象物から届く光や電磁波を検出したり、測定器が照射したマイクロ波を対象物が反射する様子を受信したりして、データを収集・解析する。これらによって、オゾン層や火山活動といった地球規模の自然環境の監視や、地表面の詳細な植生を知り土地利用状況や砂漠化、農作物の状態などを調べることができる。また、地表や海面の温度を測ってヒートアイランド現象の調査や、黒潮の蛇行やエルニーニョ現象、漁場の予測などに活用される。あるいは、地形を調べるときに複数の観測位置をとることで立体測定し、精度の高い地形図を作成したり土地の隆起や沈降を計測して変動量を解析したりといったことが可能になる。その他、雲の状態などから天気予報や台風の状況を調べたり、水面の反射から水域の水量や洪水の被害状況などを即時に把握することもできる。内閣府などは、衛星リモートセンシングの市場が急速に拡大中であるとし、衛星打ち上げ手段をもたない新興国で大きな伸びがあることなどから、ビジネス創出や海外展開促進を目指すとしている。

(金谷俊秀 ライター/2020年)

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百科事典マイペディア 「リモートセンシング」の意味・わかりやすい解説

リモートセンシング

物体から反射または放射される電磁波を利用し,遠隔位置からそれらの物体の種類や状態などを識別する技術。すべての物体は,その物体特有の反射特性をもち,環境や条件が違えば同じ物体でも反射特性が違ってくる。したがって,反射特性がわかれば,その物体が何であるか,どのような状態にあるかを知ることができる。具体的には人工衛星や航空機で,種々の電磁波を使って地表のマルチスペクトル写真を撮影し,その写真を解析して物体を識別している。たとえば,健康な植物の緑は赤外域で非常に強い反射を示し,病害虫や公害におかされると赤外域の反射は低下し赤バンドの反射が強くなる。したがって,赤外域の写真と赤バンドの写真を撮影して調べると植物の活力度が判別できる。 リモートセンシングを目的とした人工衛星を地球探査衛星,資源探査衛星などと呼んでおり,米国のNASA(ナサ)が1972年から打上げを行っているランドサット,フランスのSPOTのシリーズが代表的。日本でも1992年に〈ふよう〉の打上げに成功している。またリモートセンシングを利用して遺跡などを発見しようとする宇宙考古学も行われはじめた。
→関連項目画像処理空中写真コンピューターグラフィックス

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化学辞典 第2版 「リモートセンシング」の解説

リモートセンシング
リモートセンシング
remote sensing

離れたところから,直接触れずに,物質の大きさや性質またはそれが置かれた状況を読みとる技術.たとえば,地球観測衛星に搭載されたセンサーを使って,地球の植生分布,火山活動,海面の温度などの情報を得るのに使われる.この場合,地表から反射や散乱された太陽光を見る光学センサー(受動型センサー)や,5.3 GHz のマイクロ波のレーダーを発射し,地表からの反射や散乱をみるマイクロ波センサー(能動型センサー)が使われている.また,火山活動を常時モニターするために,火山ガスの濃度,温度,pHなどのセンサーによるリモートセンシングなどがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典 第2版 「リモートセンシング」の意味・わかりやすい解説

リモートセンシング【remote sensing】

主として電磁波を利用して遠隔点より対象物を非接触で調べる技術。遠隔探査ともいい,地球資源,環境,海洋などの調査に用いられる。一般に対象物を非接触で調べる方法にはいくつかあるが,原理的にはいずれも対象に関係した物理的・化学的現象などを観測して,その性質を間接的に調べるものである。物理現象を利用する物理探査は昔から広く用いられてきたが,地球の重力場,磁力場を観測するもの,弾性波を用いるものなどいろいろな方法がある。

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世界大百科事典内のリモートセンシングの言及

【海洋開発】より

…これらの措置と企業による海底石油・ガス開発技術の進歩とにより,アメリカの科学技術は大きく進み世界のリーダーとしての実力をそなえるようになった。特に注目すべき点は,多くの海洋調査船をもつほか,ダイビングや潜水船,無人機などによる海中活動技術,水中超音波技術とその応用機器,低照度水中写真技術,宇宙技術との組合せによるリモートセンシング技術などの分野である。
[その他の先進国の動き]
 フランスはJ.Y.クストーによる潜水技術,海中居住実験,潜水船などの分野において先駆的開発技術をもっているが,1967年国立海洋開発センター(CNEXO,Centre National pour l’Exploitation des Océans)を設立し,広く海洋科学技術の開発に努め,アメリカとの協同調査を行い,東太平洋において多くの熱水鉱床の発見に大きく寄与した。…

【写真】より

…写真感光材料工業の生産量から見ると,近年の先進国では一般撮影用フィルムよりも業務用およびX線用感光材料が多く製造され,生産金額では一般撮影用と業務用とが1:1に近くなっている。写真の用途の中で一般撮影に近いものとして航空写真,写真測量あるいは宇宙写真があるが,高度の宇宙空間から地表の写真を撮影する技術はリモートセンシングと呼ばれ,地球資源探査,気象観測,海洋や地表の汚染調査等に利用され,国際間の協力の下に業務が進められている。宇宙空間からの観測の場合,写真撮影とテレビジョン技術ならびに通信技術が総合されて画像が得られるので,電気信号を地上で受信して最終的に写真像を作る場合もある。…

※「リモートセンシング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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