ルリスタン青銅器(読み)るりすたんせいどうき(英語表記)Luristan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルリスタン青銅器」の意味・わかりやすい解説

ルリスタン青銅器
るりすたんせいどうき
Luristan

1920年代末から、イラン南西部のルリスタン地方で出土した特殊な青銅器をいう。住民の盗掘によって市場に出現したものがほとんどで、学術的な調査を経たものはない。出土品の大部分は石造の竪穴(たてあな)墳墓からのもので、大石の蓋(ふた)があり、墳丘の周りはストーン・サークルがあったと伝えられる。出土品は動物の飾りをつけた斧(おの)や、剣、鏃(やじり)、馬具、車飾りなどで、その種類は非常に多い。またピンや化粧道具も多い。この青銅器は、北西のカフカス方面の文化と密接な関係をもっているように思われ、その動物意匠から騎馬民族のものであると考えられる。出土品が盗掘品であるために、編年、絶対年代の決定はむずかしいが、青銅器の大部分は紀元前8~前7世紀にかけてのものと推定される。

[糸賀昌昭]

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百科事典マイペディア 「ルリスタン青銅器」の意味・わかりやすい解説

ルリスタン青銅器【ルリスタンせいどうき】

イラン南西部のルリスタンLuristan地方から出土する青銅器。1929年ころから盗掘品がヨーロッパに出回り注目を浴びた。青銅器時代末から鉄器時代初め(前1500年―前500年)の騎馬民族の所産で,闘斧(とうふ),剣,杏葉(ぎょうよう),飾ピンなど,種々の器形があり,すぐれた動物意匠で装飾されている。

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世界大百科事典 第2版 「ルリスタン青銅器」の意味・わかりやすい解説

ルリスタンせいどうき【ルリスタン青銅器 Luristan Bronzes】

イラン北西部のザーグロス山脈北麓からカスピ海西南岸にかけての,主として古墓神祠から発見される青銅器の総称。1928年ころから大量に盗掘され,骨董市場を経由して海外に流出し,世界各地の博物館や収集家の収蔵するところとなった。発見当初,ルリスタン北部のケルマンシャー付近出土と伝えられたため,ルリスタン青銅器と呼ばれたが,類品はイランのクルディスターンアゼルバイジャンマーザンダラーンギーラーンおよび旧ソ連領を一部含めた地域からも発見されている。

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世界大百科事典内のルリスタン青銅器の言及

【キンメリア人】より

…また一部はアッシリア帝国の東縁ぞいに南下して,ザーグロス山脈にも達した。ザーグロス山中から出土する,いわゆるルリスタン青銅器は,このキンメリア人の残したものであるとする説がある。【小谷 仲男】。…

【銅剣】より

… エジプト,メソポタミアでは,茎つき銅剣が主流を占めるが,青銅器時代後半になって柄身をともに青銅で鋳造した有柄式銅剣があらわれる。ルリスタン青銅器として知られるものの大半がこの形式で,柄の両縁を肥厚させ,把り(にぎり)の部分に木や象牙などを嵌めこんで持ちやすくし,関(まち)に半月形,柄頭に扇形の飾りを施したものもある。中国内モンゴルのオルドス(綏遠(すいえん))青銅器や,雲南・四川を中心とした巴蜀(はしよく)文化の銅剣も有柄式である。…

※「ルリスタン青銅器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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