レオロジー(英語表記)rheology

翻訳|rheology

デジタル大辞泉 「レオロジー」の意味・読み・例文・類語

レオロジー(rheology)

《流れの意のギリシャ語から》物質の流動と変形に関する学問。プラスチック・ゴム・粘土・たんぱく質などの化学的に複雑な物質について、粘性弾性可塑性・接着・摩擦現象などを研究する。流動学

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精選版 日本国語大辞典 「レオロジー」の意味・読み・例文・類語

レオロジー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] rheology ) 物質の変形や流動について研究する学問。油やプラスチック、生物細胞など広範囲の物質の粘性・弾性・構造などを従来の学問分野の枠(わく)を越えて総合的に取扱う。流動学。
    1. [初出の実例]「高分子の構造粘性に関するレオロジー的考察」(出典:氾濫(1956‐58)〈伊藤整〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「レオロジー」の意味・わかりやすい解説

レオロジー
rheology

物質の変形および流動を取り扱う科学の一分科。レオロジーということばとその定義は1929年にアメリカでこの分野の学会が創立された際,アメリカの化学者ビンガムEugene Cook Bingham(1878-1945)が初めて与えたもので,流れを意味するギリシア語のrheosに由来している。物質に力を加えたときに起こる変形および流動を取り扱う科学の分科としては,他に弾性論,塑性学,流体力学などがあるが,レオロジーで取り扱う変形は,上記の各分科で取り扱う比較的単純な変形が組み合わされた形の,より複雑な変形が主体となっている。さらに,物質に加える力と時間,および変形との関係を明確に記述することだけでなく,そうした現象の起こる理由,すなわち物質の分子構造あるいは集合体としての構造と変形との関係を明らかにすることをも目的としている。

物質に力を加えたときに起こる挙動の典型的なものに弾性変形粘性流動および塑性流動がある。弾性変形とは,力を加えるとき瞬間的に起こり,力をとり除くと完全かつ瞬間的に消失するような変形をいう。変形の程度は力を加えている時間とは無関係である。鋼鉄でできたばねをあまり強くない力で引っ張ったとき起こる現象がこれに近い。粘性流動では,物質に少しでも力を加えると連続的に変形し,力を加えることを止めても変形は回復しない。変形の程度は力だけでなく時間にも依存する。水,ベンゼン,水銀などの液体はこの挙動をする。管の中を液体が流れるとき,その速度は管壁でゼロ,管の中心で最大である。理想的な粘性流動(ニュートン流動)では,この速度こう配と力の間に比例関係がある。塑性とは,ある程度以上の力を加えて初めて物質の変形が連続して起こり,力を加えるのを止めても変形が回復しない性質をいう。粘土の挙動がこれに近い。実際の物質では多くの場合上述の弾性変形,粘性流動,塑性流動が理想的な形で起こるのでなく,これらが組み合わされた形でのより複雑な変形,流動が起こる。これがレオロジーのおもな対象となる。
塑性 →弾性 →粘性

粘弾性は弾性変形と流動とが組み合わさって起こる挙動で,種々の物質においてみられるが,高分子物質の場合にもっとも多くの例がある。例えば高分子物質の固体に一定の力を加えて引っ張ると,瞬間的に伸びが起こる。これは弾性変形に相当する。力を加えたままで放置しておくと時間の経過とともに伸びは増大する。すなわち流動が起こる。力を加えるのを止めると瞬間的に伸びが小さくなり,その後も時間の経過とともに伸びの減少が続く。ただし,長時間を経ても一定の伸びは永久変形として残る。図に,一定の力を加えた場合の変形と時間の関係を,弾性変形,塑性流動および粘弾性挙動について示した。逆に,この高分子物質の固体に一定の伸びを与えて放置しておくと,時間の経過とともにその伸びを保つのに必要な力は減少してくる。この現象を応力緩和という。これも流動が起こることと対応している。高分子物質の固体に力を加えると起こる弾性変形は,それを構成している分子の原子間の結合の長さと角度の変化や結合のまわりの回転によるものである。そのほかに分子どうしが互いに動いて相対的に位置を変えるために流動が起こる。高分子物質の溶液も理想的な粘性流動とは異なる挙動(非ニュートン流動)を示す。

静置状態では流動性をもたないゼリー状の物質に外力を加えると流動性を示し,さらに静置すれば元に戻ることがある。これは何回でも繰り返せる。この現象をチキソトロピーthixotropy(チクソトロピーともいう),または揺変性という。このような現象を示す物質は無機物あるいは有機物の濃厚なコロイド溶液や高分子の溶液である。静置時には分散している粒子あるいは溶解している分子は相互作用をしてかさ高い網目構造を作り弾性挙動を示すが,これに外力を加えるとこの相互作用は弱いため簡単にこわれ,粒子あるいは分子はばらばらになり流動性を示すのである。この現象が実用上重要である例に塗装がある。塗料は一般に高分子物質の溶液に顔料を分散させたものであるが,これをブラシで塗る(外力を加える)ときは流動するが,塗り終わると固化して流れ落ちないのでつごうがよい。

 ダイラタンシーdilatancyはチキソトロピーと逆の現象である。海辺の湿った砂地を足で踏みつけると,砂地は水分が少なくなってかたくなり,足を離すと砂地はもとのやわらかく湿った状態に戻る。これと似て外力によって見かけの粘さが増加する現象は高分子物質の溶液についても観察されることがある。これは分散している粒子が,最初,外力の加わらないときはよくつまった状態にあるが,外力を加えると粒子間が疎なかさ高い状態になり,その間の隙間に液体(上の砂地の例では水)が吸い込まれて見かけ上乾いた状態になり,流動性を失って固化するのである。

高分子物質の変形,流動に関するレオロジー的性質は,プラスチックの成形加工の過程で高分子物質の溶融物を冷却しながら固体にしたり,繊維を製造する紡糸の過程で溶液から蒸発や沈殿によって繊維状の固体にしたりする場合に,きわめて重要である。また製品であるプラスチックや繊維そのものの性質,用途を決めるもっとも重要な要因の一つである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レオロジー」の意味・わかりやすい解説

レオロジー
れおろじー
rheology

物質の流動と変形に関する科学。フックの法則に従う理想弾性、あるいはニュートンの粘性法則に従う純粘性を示さない物質の変形・流動を扱う。

 レオロジーの語源は、ギリシア語のρεω (rheo-)すなわち流れである。命名者はアメリカのビンガムEugene Cook Bingham(1878―1945)である。彼は、粘土と水などの懸濁液の流動を研究していた。この種の物質は、圧力がある降伏点に至るまでは流動が認められないが、降伏値以上では圧力に比例して流速の増加がおこる(このような性質をもつ流体は塑性流体、あるいはビンガム流体という)。これらの性質は古典物理学では扱いがたいので、それまでの物理や化学を総合した新しい学問分野として「レオロジー」を提案した(1922)のである。世界的に広がったのは1940年以後のことである。これは、一つには重要な研究対象である合成繊維や合成ゴム、プラスチックなどの高分子物質などの生産が始まり、それまでのコロイド溶液などの研究の盛んであったドイツやオランダなどのヨーロッパ諸国の研究を基礎として大きく発展したことでもある。

[山崎 昶]

レオロジーの研究対象

研究対象はゴム、繊維、紙、プラスチック、ペイント印刷インキ、写真フィルム、その他工業製品はもとより、豆腐、寒天、バター、プリンなどの食品、糊(のり)などの接着剤やワニス、化粧クリームなどの日常品などが古くからのものであるけれども、血液や生体組織、粘土、砂、岩石、さては地殻やマントルなどにまで近年はレオロジーの対象は広くなり、したがって関連する分野も増加した。そのために研究方法も多種多様であり、物理学、化学、生物学、地質学、土木工学、医学、金属工学などの関連した分野からの研究法をすべて包含しているといっても過言ではない。衣服の風合いとかチーズの風味などの研究においてはさらに心理学的手法も導入され、そのためにサイコレオロジーという方法論まで存在する。

 物質のレオロジー的挙動を測定する計器をレオメーターと総称するが、回転粘度計や回転振動粘弾性計などがこの名称でよばれることが多く市販もされている。

[山崎 昶]

『岡小天著『レオロジー入門』(1977・工業調査会)』『中川鶴太郎著『レオロジー』第二版(1978・岩波全書)』

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化学辞典 第2版 「レオロジー」の解説

レオロジー
レオロジー
rheology

物質の変形と流動に関する研究分野で,1922年,アメリカの化学者G. Binghamが提案した名称である.フックの法則が適用できる理想的な固体のバネ変形と,ニュートン粘性法則に従う理想的な液体の流動がある.一般に多くの物質は変形する場合,固体のバネ的性質と液体の粘性が混在した性質を示し,粘弾性とよばれる.おもにレオロジーはこの粘弾性の研究である.たとえば,レオロジーで扱われる対象は,油,粘土,プラスチック,ゴム,ガラス,アスファルト,セルロース,デンプン,タンパク質など,化学的に複雑な組成または構造をもつ物質で粘弾性的性質を示す.これらの物質の示すレオロジーの性質として,異常粘性,塑性,チキソトロピーダイラタンシーワイセンベルク効果法線応力効果などの粘弾性挙動などがある.また,化学反応を伴う場合を化学レオロジーといい,生体における細胞液,血液などの力学的挙動もレオロジーの研究対象であり,生物(バイオ)レオロジーという.

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百科事典マイペディア 「レオロジー」の意味・わかりやすい解説

レオロジー

流動学とも。〈物質の変形と流動を扱う科学〉として,米国の化学者E.C.ビンガム〔1878-1945〕が1929年に命名したもの。歴史的にはまず弾性力学と粘性流体力学が体系化され,金属加工に関連して塑性力学の方法が発達,さらにコロイド化学・高分子化学の進歩に伴いそれらの法則では律しきれない粘弾性,応力緩和,クリープ,弾性余効,塑性流動,チキソトロピー等の現象が発見されて,それらを総合的に扱うレオロジーrheologyが形成された。以後分子・原子の相互作用に基づいて諸現象を説明する物性論的方法もとり入れられている。レオロジーは力学と物性論を結びつける研究分野として興味があるばかりでなく,繊維・プラスチック・ゴム・塗料・食品など諸工業に深い関連をもち実用的価値も大きい。
→関連項目水力学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レオロジー」の意味・わかりやすい解説

レオロジー
rheology

物質の変形と流動を研究する物理学の分野。研究対象とする物質は,通常の弾性学や流体力学で扱う固体,液体,気体のように単純な力学的性質をもつ物質ではなく,油,ゴム,プラスチック,ガラス,粘土,アスファルト,デンプン,蛋白質のように固体と液体の中間の性質をもつ複雑な物質である。レオロジーはこれらの物質における粘弾性塑性チキソトロピーなどの現象を物質の構造と関連して論じるもので,コロイド学,高分子学,物性論などの境界にある総合科学である。研究対象の実例としては,生体内での細胞液や血液の流動,粉体の輸送,洪水の際の土石流,地震の際の砂質土壌の流動化など,日常的に興味あるものが多い。レオロジーという名称は 1922年 G.ビンガムが提唱したものであるが,発展したのは 1940年代以降である。

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栄養・生化学辞典 「レオロジー」の解説

レオロジー

 流動学ともいう.物質の物理的,力学的挙動を解析し,物質を構成する要素との関連を明らかにする学問分野.

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岩石学辞典 「レオロジー」の解説

レオロジー

流動学

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世界大百科事典(旧版)内のレオロジーの言及

【水力学】より

…流体や気体のように自由に変形する物質を固体と対比して流体というが,流体が流れるときの圧力変化や周囲の物体に及ぼす力を調べる学問は,水力学,流体力学,空気力学,レオロジーなど,さまざまな名まえで呼ばれる。このうち,空気力学aerodynamicsは高速の気体の流れを,レオロジーはコロイドや高分子のように複雑な構造をもつ液体の流れを主として取り扱い,独立した分野を形づくっている。…

※「レオロジー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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