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(1)ローマ・カトリック教会で行われる死者のためのミサ典礼をいう。その名はこのミサの入式文の冒頭句,〈彼らに永遠の安息を与え給え〉の最初の語requiem(〈安息を〉の意)による。ミサではあるが,〈グロリア〉と〈クレド〉は用いられず,福音書朗読の前に,〈怒りの日dies irae〉で始まる長大な続唱がある。教会暦中では11月2日の〈諸死者の日〉(万霊節)に行われるが,随意ミサとして個人の葬儀や命日にも行われる。14世紀に基本的形態が確立され,トリエント公会議以後,続唱が加えられるなどの変化を経て現在に至っている。
(2)〈死者のためのミサ〉の式文に作曲した音楽。〈鎮魂ミサ曲〉などと訳される。グレゴリオ聖歌に始まり,15世紀後半から合唱曲の形でも作曲されるようになった。オケヘム,ラッソ,パレストリーナ,T.L.deビクトリアなどの作品がある。1600年以後は独唱,合唱,管弦楽からなる大規模な作品が作られるが,しだいに演奏会用の性格が強くなる。モーツァルトの《レクイエム》は未完であったが,弟子が完成させたもので,古典主義的であるよりもむしろバロック様式に近い。19世紀ではベルリオーズ,ベルディ,フォーレの作品が有名であるが,リスト,サンサーンス,ブルックナー,A.ドボルジャークも作曲しており,20世紀ではM.デュリュフレ,リゲティがあげられる。上述の諸作品がカトリック教会のラテン語の詩句によるのに対し,各国語の自由な詩句によるレクイエムも存在する。いわゆる〈ドイツ・レクイエム〉がその例で,H.シュッツ,シューベルト,ブラームスらによって作られた。またブリテンの《戦争レクイエム》も,自由な詩句による演奏会用の作品である。
執筆者:坂崎 紀
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キリスト教において、死者のための典礼で歌われるミサ曲。わが国では「鎮魂曲」「鎮魂ミサ」などと訳されることがあるが、死者が天国へ迎え入れられるように神に祈る典礼のためであって、死者の霊を弔うものではないから、適切な呼称ではない。レクイエム(「安息」の意)の名は、このミサ曲の最初に歌われるイントロイトゥスの冒頭のことばに由来する。
楽曲としてのミサ曲は、中世以来20世紀に至るまで、〔1〕イントロイトゥス(入祭唱)、〔2〕キリエ(あわれみの賛歌)、〔3〕グラドゥアーレ(昇階唱)、〔4〕トラクトゥス(詠唱)、〔5〕セクエンツィア(続唱)、〔6〕オッフェルトリウム(奉納唱)、〔7〕サンクトゥス(感謝の賛歌)、〔8〕アニュス・デイ、〔9〕コンムニオ(拝領唱)の9章から構成されてきており、普通のミサで歌われる、グロリア、クレド、アレルヤは省かれている。しかし、1972年の改革の結果、現在ではセクエンツィアは歌われない。中世の間は、単旋律のグレゴリオ聖歌で歌われてきたが、15世紀後半以来、多声によるレクイエムが多数書かれるようになった。現存する最古の多声レクイエムは、15世紀の作曲家オケヘムによって作曲されたものである。以来、16世紀に至るまで多くの作曲家がこれを手がけたが、9章のうち、いずれかの章が多声化されない場合が普通だった。また、フランスやフランドル系の作曲家たちの作品では、グラドゥアーレとトラクトゥスの歌詞が一般のものと異なっている。17世紀以後は、それまでほとんど作曲されなかったセクエンツィアの多声化が目だつようになり、18世紀後半からは、モーツァルトの例にみられるように、充実した管弦楽を伴うものが多くなる。19、20世紀にも、ベルリオーズ、ベルディ、ブルックナー、サン・サーンス、フォーレ、ブリテンらによって、名作が多数書かれた。ブラームスのように、まったく別の歌詞による『ドイツ・レクイエム』の例もある。
[今谷和徳]
… 91年には最後の《ピアノ協奏曲》(第27番K.595)やクラリネット協奏曲(K.622)が書かれたほか,興行師シカネーダーの依頼で,ジングシュピール《魔笛》(K.620)が作曲された。9月末に初演されたこのドイツ語オペラはしだいに成功を収めていくが,それに先立って見知らぬ男から注文を受けたという《レクイエム》(K.626)の作曲やボヘミア王としてのレオポルト2世の戴冠式祝典オペラ《ティート帝の慈悲》(K.621)のプラハ初演などがさしはさまれる。《レクイエム》の作曲は《魔笛》の初演後も続けられるが,健康を害したモーツァルトは11月20日に病床につき,《レクイエム》未完のまま,12月5日世を去った。…
※「レクイエム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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