一手（読み）ヒトテ

デジタル大辞泉

ひと‐て【一手】

１ 他人に分担させずにひとりですること。独占すること。いって。「仕事を一手に引き受ける」
２ 碁・将棋などでの一勝負。いって。「一手お手合わせを願います」
３ 舞・音曲などの一曲・一番。「舞の一手」「一手御披露する」
４ 一隊。一組。「一手は東から攻める」
５ 弓道で、内向うちむきの矢と外向とむきの矢との2本。矢の一対。一手矢。

いっ‐て【一手】

１ 碁で石を一つ打つこと。将棋で駒を一つ動かすこと。「次の一手」
２ その方法だけで押し通すこと。一つだけの方法・手段。「押しの一手」「泣きの一手」
３ 自分一人だけで扱うこと。独占すること。「苦情を一手にさばく」「仕入れを一手に引き受ける」

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

ひと‐て【一手】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 一方の手。片手。隻手。
3. ② 片手で握れるほどの分量。
   1. [初出の実例]「うしろからねぎ一手(ヒトて)ながれて行き」(出典：咄本・座笑産（1773）鴨)
4. ③ 一人の人間に、手段、権利などを集中すること。独力。独占。
   1. [初出の実例]「今では当家の台所の方を一手(ヒトテ)で引受ける御膳炊、コックさん、庖事(ばうじ)さんで勉強するので」(出典：落語・王子の幇間（1889）〈三代目三遊亭円遊〉)
5. ④ ひとつにまとめること。一括すること。ひとまとめ。
   1. [初出の実例]「むかしいまの人を、ひとてにぐして、申たる也」(出典：古本説話集（1130頃か）八)
6. ⑤ 一組。一隊。また、片方。一方。
   1. [初出の実例]「世にあひたる人にて、通季、信通とて、ひとてにておはせしに」(出典：今鏡（1170）六)
7. ⑥ 一回のわざ。一度の手並。
   1. (イ) 舞や音曲などの一曲・一番。
      1. [初出の実例]「一手舞ふて東の方の賤しき奴原に見せん」(出典：義経記（室町中か）八)
   2. (ロ) 碁・将棋・双六などで、石や駒を一回動かすこと。〔日葡辞書（1603‐04）〕
8. ⑦ ひとつの手口。ひとつのやり方。
   1. [初出の実例]「これめづらしき文のかきやうなり一手かはり面白と云ぞ」(出典：古文真宝笑雲抄（1525）二)
9. ⑧ 同一の種類。一種類。ひといろ。
10. ⑨ 他にまさるわざ、技量。また、それから生ずる効果。
    1. [初出の実例]「此の風体にて一手取らんずる事をたしなむを、老後に習う風体とは申也」(出典：花鏡（1424）奥段)
11. ⑩ 矢数の数え方。内向きの矢と外(と)向きの矢との二本一組の称。
    1. [初出の実例]「此の弓に箭一手を取具し」(出典：今昔物語集（1120頃か）三)

いっ‐て【一手】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 碁や将棋や双六などで、石や駒を一回動かすこと。ひとて。〔運歩色葉（1548）〕
3. ② 一つの技。すぐれた技術。
   1. [初出の実例]「安道は一手(テ)ある物かな。〈略〉天性上手であったぞ」(出典：花上集鈔（１６Ｃ頃）下)
4. ③ 弓術で、甲矢(はや)、乙矢(おとや)おのおの一本を合わせたもの。
   1. [初出の実例]「弟矢(をとや)と一手(テ)にまがひなき証拠に立帰りて」(出典：浮世草子・武道伝来記（1687）六)
5. ④ ある方法、手段のみに徹すること。
   1. [初出の実例]「首を振って口を閉ぢる一手に出た」(出典：煙管（1933）〈新田潤〉)
6. ⑤ 軍勢などで、あるまとまりを持った一団。
   1. [初出の実例]「三十六人一手につくりて魚鱗にならび」(出典：室町殿日記（1602頃）一〇)
7. ⑥ 自分一人に手段・権利などを集中すること。独占。
   1. [初出の実例]「全国の政権を一手に握り」(出典：文明論之概略（1875）〈福沢諭吉〉二)
8. ⑦ 櫓(ろ)二挺をいう。〔和漢船用集（1766）〕

出典　精選版 日本国語大辞典

世界大百科事典（旧版）内の一手の言及

【弓道】より

…鏃は古くは石，骨，銅製のものもあったが，多くは鉄製であり，その形状は使用目的によって多様である。なお，矢は2本(甲矢（はや），乙矢（おとや）)を一手（ひとて）と呼び，4本を単位として使用することが一般的である。弽（ゆがけ）は弓を射る場合に右手にはめる手袋様のもので，鹿革で作られ，射の目的によって形や構造が相違する。…

※「一手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」