一杯(読み)イッパイ

デジタル大辞泉 「一杯」の意味・読み・例文・類語

いっ‐ぱい【一杯】

[名]
一つの杯・茶碗などに入る分量。「コップ一杯の水」
ちょっと酒を飲むこと。「帰りに一杯やりませんか」
イカ・タコや船一つ。→はい
金1両。
祝儀女郎へ、壱分を二三十粒、宿へ三歩あるいは金―」〈浮・元禄大平記・五〉
名詞の下に付き、接尾語的に用いて、限度ぎりぎりまで、の意を表す。「精一杯働く」「時間一杯考える」「腹一杯食べる」
[副]
一定の容器や場所などに物があふれんばかりに満ちているさま。「日が一杯さし込む」「部屋は来客一杯になる」
できる限り。ありったけ。「弓を一杯に引き絞る」
アクセントッパイ、はイッパイ
[類語]2一献1満満となみなみぎっしりびっしり満杯たくさんたっぷり十二分にふんだんにどっさりたんまり豊富に潤沢じゅんたく多い夥しいたんとごまんとわんさとうんと十分しっかりがっつり思い切り思う存分充満充溢充実満員充足満席満車満室満タン飽和数数かずかず多数数多すうた無数多量大量大勢おおぜい大挙多勢多人数大人数衆人莫大膨大巨万豊か潤沢無尽蔵山ほど盛り沢山がっぽりがっぽがっぽ多め幾多過多最多多作あまた多多いくらもいくらでもざらにごろごろ多め数知れない数知れぬ数え切れない十指に余る枚挙にいとまがない掃いて捨てるほど

ひと‐はた【一杯】

あふれるくらいいっぱいなこと。
「御目に涙を―浮けて」〈愚管抄・五〉

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精選版 日本国語大辞典 「一杯」の意味・読み・例文・類語

いっ‐ぱい【一杯・一盃】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 杯、茶碗、コップなど、一つの容器に入れた酒、茶、飯など。また、一つの容器にはいる分量。
      1. [初出の実例]「日食粥一杯なるゆゑに」(出典:正法眼蔵(1231‐53)行持下)
      2. [その他の文献]〔荘子‐至楽〕
    2. ちょっと酒を飲むこと。また、形式ばらないで、気軽に酒を飲むこと。
      1. [初出の実例]「酒興のうかみたる時は、故人が来れかし。一盃のまんと思ふ也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)中)
      2. [その他の文献]〔庾信‐燕歌行〕
    3. 思う存分のこと。言いたい、また、したい限りのこと。
      1. [初出の実例]「宮中を一はいにしたほどに近臣が讒じたぞ」(出典:玉塵抄(1563)一六)
      2. 「灰(へへ)ふきから大蛇(てへじゃ)の出るやうな一ぱいをならべぬひて来たよ」(出典洒落本・駅舎三友(1779頃)出立)
    4. 金一両。また、明治以後は一円。
      1. [初出の実例]「祝儀は〈略〉宿へ三歩あるひは一ぱい」(出典:浮世草子・元祿大平記(1702)五)
    5. 二合五勺はいる枡(ます)一ぱいの分量。
      1. [初出の実例]「小なから 二合五勺 一盃(いっぱい)」(出典:御国通辞(1790))
    6. ( 「いっぱい食う」また、「いっぱい食わせる」の意 ) だまされること。また、だますこと。
      1. [初出の実例]「腹の立つ。むまむまと一ぱい」(出典:浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)七)
    7. 性交、入浴などの一回。
      1. [初出の実例]「それでもいっぱいしに来たのじゃあろがな」(出典:洒落本・当世嘘之川(1804)五)
      2. 「あっしは湯へいっぱいはいって来ます」(出典:東京方言集(1935)旧市域の語彙〈永田吉太郎・<著者>斎藤秀一〉)
    8. イカ、タコ、カニなどの一匹。
    9. 船一そう。
      1. [初出の実例]「大船一艘(パイ)海産物積んで」(出典:日本橋(1914)〈泉鏡花〉五九)
    10. 商売を一時やめること。特に、近世の米市場で正米、帳合米とも商いを一時やめること。
      1. [初出の実例]「むちゃくちゃしたる館のすすはらひの為に、いっぱいとかいふ心もありて」(出典:洒落本・箱まくら(1822)上)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙
    1. 一定の容器や場所などに物が十分に満ちているさま。たくさん。
      1. [初出の実例]「啼悲みける涙、大なる手洗に一ぱい有けると聞しに」(出典:康頼宝物集(1179頃)下)
      2. 「知と思ふ気が胸中に一杯ををうぞ」(出典:足利本論語抄(16C)子罕第九)
    2. ( 「に」「の」を伴うこともある ) ある限りを尽くすさま。できる限り。ありったけ。じゅうぶん。
      1. [初出の実例]「いっぱい弓を引きふくらめたぞ」(出典:史記抄(1477)一五)
    3. 時間や空間、数量などに関して、限度すれすれになっているさま。ぎりぎり。
      1. [初出の実例]「『皆さん。おしまい』『モウうちました』『一ぱいじゃといな』」(出典:洒落本・箱まくら(1822)上)
      2. 「向うの壁に充満(イッパイ)の、偉(おほい)なる全世界の地図」(出典:婦系図(1907)〈泉鏡花〉前)
  3. [ 3 ] 〘 接尾語 〙 ( 名詞に付いて ) そのものの限度まで全部、または、限度ぎりぎりの意を表わす。
    1. (イ) ある物、場所などが、すっかり何かに満たされる意を表わす。
      1. [初出の実例]「糸桜腹いっぱひに咲にけり〈去来〉」(出典:俳諧・猿蓑(1691)五)
    2. (ロ) ある時間、期間の限度、または、その限度までずっと、の意を表わす。「時間いっぱい」
      1. [初出の実例]「七日といふもいまいまし。来月一ぱい借(かす)ぞや」(出典:浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)中)
    3. (ハ) ある事柄状態の限度ぎりぎりまで出す意を表わす。「精いっぱい」
      1. [初出の実例]「心はりちぎ一ぱいに、せんじつめたる水間のさと」(出典:浄瑠璃・五十年忌歌念仏(1707)上)

ひと‐はた【一杯】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「はた」は接尾語 ) 器などにあふれるくらいいっぱい。いっぱいなこと。
    1. [初出の実例]「文(もん)のきれちひさき唐櫃にひとはたにぞなりたりける」(出典:発心集(1216頃か)八)

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普及版 字通 「一杯」の読み・字形・画数・意味

【一杯】いつぱい

一杯の酒。唐・李白山中幽人対酌す〕詩 兩人、對すれば、山開く 一杯一杯、復(ま)た一杯

字通「一」の項目を見る

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