法然の作。念仏の要義を1枚の紙に平易な文章で書き,釈迦・弥陀に偽りのないことを誓った文。〈一枚消息〉ともいう。1212年(建暦2)1月23日,つねに法然のもとで仕えてきた源智が,師の命終が近いことを知り,没後に門人たちの間で異義の生じることを恐れ,浄土宗の安心起行(あんじんきぎよう)の肝要を懇望したので,法然がこれに応じてみずからしたため源智に授与した。浄土宗では法然の遺訓として最も尊重する。京都の金戒光明寺に真筆と伝えるものを襲蔵する。なお,念仏の極意をわずかな言辞にまとめた名文として一休ら他宗派の僧も称賛し,巷間ではこの文体をまねた茶道,飲酒,商売,俳諧の〈一枚起請文〉が作られている。
執筆者:中井 真孝
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