複数の神々を崇拝する多神教と異なり、一つの神のみを信ずる信仰を説く宗教のこと。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、初期のゾロアスター教などに代表される。一神のみを崇拝するといっても、その崇拝の仕方や神観念の相違によって、一神教はさらに唯一神教monotheism、拝一神教monolatry、単一神教henotheism、交替一神教kathenotheismなどに分類される。狭義の一神教とは唯一神教のことである。
唯一神教においては、崇拝される神が万物を支配する唯一の神であり、他の神々はそのままでは容認されない。宗教史的にみれば、他の神々は神ではなく諸霊として格下げされたり、その実体を失って唯一神の属性的存在となる場合が多い。このような唯一神教には、他の教えを邪教とする排他的な面と、すべての人々に唯一神の恩恵が及ぶという包容ある側面とがある。そこで唯一神教は外に向かって教えを広めようとする宣教の傾向をもつ。始めにあげた各宗教がこれにあたる。拝一神教とは、特定の社会集団(部族、民族、都市など)が、他集団の崇拝する他の神は容認しつつ、自らは特定の一神のみを崇拝する宗教形態である。古代イスラエルの初期ヤーウェ崇拝はこれであった。単一神教は、多神教の世界において、特定の一神を主要神として集中的に崇拝するもので、あたかもその神が唯一至上神であるかのようにみえる宗教現象である。この場合とくに、単一の主要神を次々と交替させて崇拝するものを交替一神教とよぶ。
一神教、とくに唯一神教の成立についてはいくつかの説明がある。多神教から発展したとする説、宗教の原初形態としてすでに一神教があり、多神教はその退化した形態とみる説(原始一神教説)、一神教は創唱者によって始まるとする説などである。このうち始めの2説は今日あまり支持されていない。
[月本昭男]
『岸本英夫編『世界の宗教』(1965・大明堂)』▽『J・M・キタガワ編、堀一郎監訳『現代の宗教学』(1970・東京大学出版会)』
原始宗教と高等宗教の別なく,一神をたてて崇拝する宗教をいう。一神教の神は太陽のような自然神の場合もあるが,一般的には抽象的で男性原理を有する神とされ,全知全能にして万物の創造主と考えられた。たとえばユダヤ教がヤハウェ神を,キリスト教が〈父なる神〉を,イスラム教がアッラー神をたてて崇拝しているのがそれである。一神教は一般に神と人間のあいだの断絶を強調するが,それは一神教の起源が砂漠に関係があることによるとされている。自然的景観の荒涼たる砂漠では,地上から超絶する天上の神が祈願の対象とされたからである。この砂漠の一神教は農耕社会に基盤を有する多神教と対比されるが,しかし歴史的には農耕文化との接触によって偶像崇拝や多神教的な要素をとり入れていった。たとえばカトリック教会やギリシア正教会がそうである。なお日本では,近世以降流入したキリスト教の信徒(キリシタン)は,多神教的風土の厚い壁にはばまれて,人口の1%を超えることがなかった。
執筆者:山折 哲雄
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崇拝する神の数による宗教分類上の名称。複数の神を信じる多神教に対し,唯一神のみの信仰を認める宗教をいう。ヤハウェを崇めるユダヤ教,アッラーに帰依するイスラーム,父なる神とその子イエス・キリストおよび聖霊を三位一体的に信仰するキリスト教などが,その代表。歴史的には,エジプトのアメンヘテプ4世(イクナートン)のアテン神崇拝が,一神教の最も早い例として知られている。
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… その第1は,世界の諸宗教を多神か一神かによって整理しようとする考え方である。すなわち,主として古代国家の宗教にみられる多神教polytheism(ギリシア,ローマ,エジプト,日本),多神のうち時に応じて特定の一神を重要視する単一神教henotheismや交替神教kathenotheism(古代インドのベーダ宗教),ただ一柱の神のみを絶対視する一神教monotheism(ユダヤ教,キリスト教,イスラム教),そしていっさいの存在物に神的なものの内在を想定する汎神教(論)pantheism(仏教)という分類がそれである。その第2は,神を人格的(形態的)存在と非人格的(非形態的)存在との2種に分ける考え方である。…
…また神話学者はそれを自然神とか擬人神といった枠組で分類し,宗教人類学者は死霊や精霊や祖霊,あるいはマナのような呪力と神々との相互連関の問題をとりあげた。そのほか一神教と多神教の両極をたてて,その中間領域にさまざまな神観念の変化型を指摘する宗教学者もいれば,神観念の発達にも進化と退化があったとする社会学者もいた。また農耕社会や狩猟社会と神観念との対応というテーマを追求したり,聖性と神性という枠組によって神の輪郭を明らかにしようとするなどの立場があった。…
※「一神教」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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