一道(読み)ヒトミチ

デジタル大辞泉 「一道」の意味・読み・例文・類語

ひと‐みち【一道】

[名・形動ナリ]
ただ1本の道。転じて、死出の道。
「汝は―に向かひ給へ」〈・中〉
ある一つの事に心を向けること。また、そのさま。ひとすじ。いちず。
「かにかくに物は思はじ飛騨人ひだひとの打つ墨縄のただ―に」〈・二六四八〉
[副]道中ずっと。
「―下り乗りする程に」〈今昔一九・三〉

いち‐どう〔‐ダウ〕【一道】

1本の道。
一つの芸道。一つの専門。一芸。「一道に長じる」
細長いものの、ひとすじ。「一道光明
仏語。悟りへの唯一の道。一乗。
ひとしく―に入らむ」〈性霊集・七〉

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精選版 日本国語大辞典 「一道」の意味・読み・例文・類語

いち‐どう‥ダウ【一道】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一本の道。一筋の道路。
    1. [初出の実例]「東南角の一道は、舟檝津、商賈のあき人は百族羸(みち)にぎはひ」(出典海道記(1223頃)鎌倉遊覧)
    2. [その他の文献]〔儲光羲‐終南幽居献蘇味道詩〕
  3. 一つの分野。特定の方面。
    1. (イ) 学問・芸術・武術・技術などの一つの分野。
      1. [初出の実例]「一道に長ぜる人は、昔も今もかやうのふしぎ多く侍り」(出典:古今著聞集(1254)四)
      2. 「柳生流一道の印可は残らず伝へてをります」(出典:浮世草子・諸道聴耳世間猿(1766)三)
    2. (ロ) 特に好色の世界。色の道。
      1. [初出の実例]「右はまづ、一道(ダウ)の知音のきりゃう也」(出典:評判記・難波物語(1655))
  4. 水、光、煙、音などの細く長い一筋。一条。
    1. [初出の実例]「一道長江通千里、漫漫流水漾行船」(出典:文華秀麗集(818)下・江上船〈嵯峨天皇〉)
    2. 「震動起りて一道の光閃き渡り」(出典:珊瑚集(1913)〈永井荷風訳〉池)
    3. [その他の文献]〔劉禹錫‐酬楊八副使詩〕
  5. 一つの道理一理。条理。
    1. [初出の実例]「二文三文の露を打は、是がおとこの一道(タウ)と」(出典:浮世草子・好色訓蒙図彙(1686)上)
    2. [その他の文献]〔孟子‐公孫丑下〕
  6. 五畿七道の一つ。
    1. [初出の実例]「引一道国郡司、進屯屏下」(出典:延喜式(927)一九)
  7. 仏語。一つの言い方。一つの表現。
    1. [初出の実例]「すでに声色のほかの一道の威儀なり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)無情説法)
  8. 仏語。悟りに至るための、清浄なただ一つの道。また、大乗、一乗の意。
    1. [初出の実例]「並是明法身真如一道無為之真理」(出典:秘蔵宝鑰(830頃)下)
    2. [その他の文献]〔北本涅槃経‐二五〕

ひと‐みち【一道】

  1. 〘 名詞 〙
  2. わき道のないただ一本の道。転じて、死者の国への道。
    1. [初出の実例]「汝は一道(ひとみち)に向ひたまへ」(出典:古事記(712)中)
  3. ( 形動 ) ただ一つのことに心を集中すること。いちずに邁進すること。また、そのさま。ひたみち
    1. [初出の実例]「かにかくに物はおもはじ飛騨人の打つ墨縄のただ一道(ひとみち)に」(出典:万葉集(8C後)一一・二六四八)
  4. ( 副詞的に ) 道中全部。その道をゆく間じゅう。
    1. [初出の実例]「一道下り乗り為る程に」(出典:今昔物語集(1120頃か)一九)

ひとつ‐みち【一道】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 同じひとつの道。また、一緒に一つの道を行くこと。
    1. [初出の実例]「かならずひとつ道へとおぼしめすとも」(出典:高野本平家(13C前)九)
  3. ただ一本の道。
    1. [初出の実例]「有夕暮に野沢のひとつ道ゆくに」(出典:浮世草子・新可笑記(1688))

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普及版 字通 「一道」の読み・字形・画数・意味

【一道】いちどう

一筋。

字通「一」の項目を見る

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